5-14 琥珀王女
「ファナティアを……作った……!?」
頷いたのか、ノームが2度点滅する。
なんてこった。こいつがあのファナティアを作ったってのか。
今は石にしか見えないけど、実はすごい力を持ってたりするって事なのか?
ファナティア…………ファナティアって、何だ……。
『あたしも、ウンディーネも、サラマンダー、シルフも……今は、力が、落ちてる。迷宮を、失ってから、信仰も、なくなった』
「へ、へえ~」
『だから、ファナティア、滅んだ』
「そうなんだ。ファナティアがねえ」
『新しい、ファナティア、作った時、異変、始まった。迷宮、壁を、超える』
「なるほど、ファナティア新しくなったのね」
『…………ピンときて、ないでしょ?』
「えっ!? い、いやあ? そんな事ないけど? 俺もファナティアみたいなとこあるし」
ノームは黙ってしまった。
まずい、怒らせたか。
ふざけたつもりはないんだけど、何が何やらわからず適当な応対してしまった。
とりあえずノームはファナティアとやらを作ったらしい。そしてそれが滅んで、新しくファナティアを作り直して……。うん、全然わからん。
でも、もう一つ気になる事言ってたな。
「なあ、ノーム。迷宮が壁を超えたって言ってたけど、それってどういう意味なんだ? 迷宮って、こういうダンジョンの事だよな。壁を超えたって何だ?」
『……ファナティア、あなた達の言葉で、言うなら……』
どうやら俺に伝わるように言葉を選んでくれていたらしい。なんて優しい石なんだ。
『……世界?』
「世界!? こりゃまた、大きく出たな」
なるほど、世界なら滅んだとかいう言葉の意味も伝わる。
『ファナティアに、あった、迷宮、壁を超えて、ここに来た。あたしは、ファナティアを、作って、作り直した、大地の母精』
「母精……ああ、ウンディーネも、自分の事そう言ってた気がするな。て事は同類なのか」
ノームが再び頷くような点滅をした。
ウンディーネと同類って事は、サラマンダーやシルフとも同じ存在であるはずだ。
だから契約して、俺に力を貸す事ができるんだろう。
でも……。
「お前も俺の命が欲しいのか?」
『?』
「あいにく、契約して寄越せる命はもうないんだ。ウンディーネに、その子供とかいうダンジョン生物3匹もいるし、そいつら全員にプラスでお前にまで命を分けるのはしんどい」
『命……。そう、ウンディーネに、取られてるんだ』
ノームの声が、どこか愉快そうな色を帯びた。
こいつちょっと俺の境遇笑ってないか? やっぱその辺に捨てとくべきかこの石。
『あたしは、そんなの、要らない』
「ほんとかよ?」
『うん。契約も、この迷宮、取り戻す、まで』
「裏があるんじゃないのかそんなうまい話」
『ないよ』
そういう即答なところが怪しいんだよなあ。
サラマンダーもシルフも、暴力ちらつかせて契約の内容変えさせたから陽花達が無事なのであって、本来はウンディーネみたく命を取ろうとしてたんだ。
基本、ダンジョン生命体どもは信用していない。こいつらは命の認識も、俺達とはかけ離れてるしな。
「たとえここでお前と契約したとして、このダンジョンで死ぬか、死ぬのが早まるか、時期の違いかもしれないだろ」
『疑り深い……』
「当たり前だ! だってお前石じゃん、石! ダンジョン生命体ってだけでも危ういのに、そんなゴツゴツした石が喋ってたら信用できるもんもできんわ!」
『石、駄目?』
「駄目! こう、思わず守りたくなる系美少女が上目遣いで頼んでくるならまだしも……」
そう叫んだ瞬間、ノームがカッと光った。
な、何だ!?
戸惑う俺の前で、光が徐々に大きく膨らみ、丸みを帯びていく。
『じゃあ……』
そしてそれは、少しずつ人の形に変わっていき、
「これなら、大丈夫?」
目の前に、金髪の美少女が現れた。
その、あまりにも可憐な姿に俺は思わず、
「……はい……」
頷きを返してしまった。




