5-6 よそはよそ、うちはうち
真琴が発動させたのはマーメルスという姿だ。
全身が炎そのものになり、俺のネプテューヌと同じく能力を強化できるらしい。
似てはいるけど、俺がアメコミヒーローみたいな外見になるのに対して、マーメルスはやたらワイルドだ。
ワイルドって言えば聞こえは良いけど、全裸で燃えてるようにしか見えなくて、ぶっちゃけ痴女に見えてしまう。無駄にドキドキさせられながら、マーメルスを解除した真琴が長く息を吐いた。
疲労があるのか、膝をついてしまう。
駆け寄った俺達に、真琴は「大丈夫」と手で制して答えてみせた。
「お前、そんなの使ったら死ぬんじゃ……」
「死? どうして、ですか?」
『あァ? 死ぬわけねえだろォボケェ。真琴はてめェと違って真っ当に命を収集してる。一度や二度使った程度で、燃料切れになるかよ』
「……え? だって、これって一度使うと寿命全部使うんじゃ……」
俺のネプテューヌはそうだよ?
胸に視線を落とす。ウンディーネがそっぽを向いたのが見えた気がする。
あれ、こいつなんか、隠そうとしてない?
『あ、あなたは、事情が違うのよ……』
「おい、それ本当だろうな? 実は寿命全部使うのも嘘でした、とか言わないだろうな?」
『う、疑うなら今すぐ使ってみればいいじゃない!? それで死んでみればいいじゃない!』
「できるか馬鹿!」
ぎゃーすか騒ぐ俺達に、サラマンダーが呆れたようなため息を吐いたのが聞こえた。
くそ、こいつに上に立たれると無性に腹立つな……!
回復したらしい真琴が立ち上がる。
俺も、気を取り直して周囲を見回した。謎の声のお導きによればここに『鍵』とやらがあるらしい。
それを2人に伝えると、露骨に訝しんだ表情をした。
うん、違うからね? 君達のセンパイは、またおかしくなったわけじゃないからね? またってなんだよ。
ともあれ2人は鍵探しに協力してくれた。
手分けして、広い回廊を隅々まで捜索する。
あの鎧のリポップまでの時間がどのくらいかわからないけど、強くなるほど時間も長くなるらしいから、もうしばらくは大丈夫のはずだ。
鍵、鍵、鍵……。鍵って言うからには何か、わかりやすく鍵っぽい形をしているんだろうか。
でも、アドベンチャーゲームでは鍵って一口に言っても様々だ。コンビニのダンジョンのように、俺達じゃわからないさり気ない物がそうである可能性も十分にある。
闇雲にあちこちを見ていると、
『あなたの近く』
と、あの声が頭の中に響いた。
「近くったって、何も見つからないよ」
『見えている物を見ないで』
「……その心は?」
『…………』
だんまりかい。
唐突な謎掛けやめてくれよ……。頭使うの、そんなに得意じゃないんだからさ。
ええと、見えてる物を見るな、だっけ?
とりあえず目を閉じて、周囲を探ってみる。
すると、
ゴンッ。
「痛って!?」
思いきり柱に鼻をぶつけた。
陽花が「なにやってんすか!?」とびっくりしている。俺が一番びっくりだよ。何やってんだろうね俺。
ともかくおぼつかない足取りで、慎重に周囲を探る。
壁に手を触れた、その時。
「へっ?」
そこに壁があるのは頭でわかっていた。
なのに、手は何も触れず、そのまま体が倒れ込む。
「でええええっ!?」
「センパイ! センパ――――――――イ!!!!」
倒れた体を、腕を張って突っ張ろうとしても叶わず、傾斜になっている床を俺は滑り落ちていった……。




