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いい加減にしてくれ、ダンジョン!  作者: 景浦良野
3章
41/112

3-7 地下鉄車両ダンジョン

8,000PV乗りました!日々誰かに読んでいただけるのはとても嬉しいですね。

良ければ評価、ブクマもお願いいたします!

 曽良達と別れ、真琴は家路についていた。

 手に持った袋の中には陽花と選んだ服や水着が入っている。

 水着など、これから先着るかはわからない。

 自分はあの、誰ひとり攻略を成し遂げていないダンジョンに挑まなければならないのだ。志半ばで命を落とす可能性だって十二分にある。

 それまでに、陽花と曽良、2人の協力者を『使える』レベルまで引き上げなければならない。

 だが、陽花はともかく曽良はレベルもステータスも未だに低く、攻略という点で見れば足手まといになりかねない。

 ウンディーネの力は魅力的だが、扱うのが曽良では……。

 冷静に、自分が曽良からウンディーネを奪う算段を立て始めている事に気づき、真琴は頭を振って考えを追い出した。

 可能なら、禍根の残る方法は取りたくない。

 単純に、彼らに嫌われるのが怖かった。

 だが、いずれは家族と天秤に掛けて切る事を選ばなければならない可能性もある。

 そうなった時は、仕方がない。

 暗い部屋に帰ってきた真琴はわずかな期待をこめ、トイレを覗いてみた。

 当然のように白い便器とユニットバスがあるだけで真琴は短く溜息を吐くのみであった。


◆◇◆◇


 7月に入り、暑さも本格化してきたある日。俺と陽花、そして真琴はダンジョンにいた。

 始まりは陽花の言葉だった。

 …………。


「動くダンジョンっすよ!」

「……へー」


 うん、これだけだと何のこっちゃだし、俺のこの反応も決して冷たくあしらっただけではないのだと理解してほしい。

 ここで上手く返せるようなら、今ごろ弁舌で食ってるだろうよ。


「だから、ダンジョンが動いてるんすよ!」

「そりゃダンジョンだし、動きもするだろ」

「じゃなくて、えーっと……」

「たぶん、陽花はこのダンジョンの事が言いたいんじゃないかな?」


 そう言って真琴が見せてきたのは、地下鉄の車両がダンジョン化してしまったというネット記事だ。


「それっすー! マコ、ナイス!」

「ふふ。陽花の事ならお任せあれ、だよ」


 子犬のように真琴に抱きつく陽花。顔の良い2人のじゃれ合いは見ていて楽しいが、話が進まないので花園から俺のむさ苦しいアパートへ戻ってきてほしい。

 閑話休題。

 さて、地下鉄車両のダンジョンについてだ。これは運行中、何の前触れもなく車両の1つにダンジョンが現れ、中にいた100人ほどの乗客が消えてしまった事件で有名だったな。

 確か4年前くらいだった。そのニュースは覚えてる。


「で、このダンジョンがどうしたんだ」

「んぇーっと……」

「たぶん、陽花はここに行きたいんじゃないかな。そうだろう?」

「っす!」


 翻訳機かよ。

 真琴訳の陽花語によると、低難易度のダンジョンなのに4年もの間誰も攻略できていない、つまりコンビニの時のような仕掛けを解けさえすれば攻略できるのではないか、との事だった。

 マジでさっきから陽花は「そんな感じの」とか「なんかアレなんすよ」しか言ってないのによく伝わったな。

 俺なら早々に会話を放棄して「陽花、甘いもんでも食いに行くか」とか話題を逸らしてるところだ。だって追求するのがめんどいもん。

 しかしまあ、陽花にしてはなかなか有益な情報には違いない。

 相も変わらず小型犬くらいの戦闘力しかない俺の唯一のアドバンテージといえば、ウンディーネの助けが借りられる事くらいだ。

 その助力がフルに発揮できるのも、低難易度なのに謎が多く進めない特異なダンジョンに限られる。

 中には全然低難易度じゃない冷蔵庫のダンジョンみたいな所もあるが、そういう『低め』をじっくり攻略して強くなっていく余裕が、今の俺には十分すぎるほどにある。

 まあまた余裕ぶっこきすぎて頭に一撃貰わなきゃの話だが。あれは色んな意味で痛かった。


「行きましょうよセンパーイ、センパイ、センパイセンパイセンパイセンパイセンパ」

「ええい、わかったっての! 行くからちょっとその、脇腹突くのやめろ!」


 かくして、俺の怠惰な時間は終わり、ダンジョンへと引っ張られたというわけだ。

 なお、隣で腹出して寝てたウンディーネは渋っていたが、そちらもきっちりと連行してきた。

 …………。

 で、今に至る。

 電車のダンジョンは戦いも探索も興味がなさそうな人達で賑わっていた。雰囲気からしてエクスプローラーだけでなく、一般人も交ざっているらしい。まるで何かの祭りのような騒ぎだ。

 たった1両の車両の中は馬鹿みたいに広い空間になっている。そこら中に線路のような轍があり、コンクリートか何かでできた壁はそこかしこに穴があり、その暗闇の中へ轍が続いていた。

 ていうかすごい場所だ。まさかダンジョンの中で屋台出してる人間がいるとは思わなかった。

 広場までは入場もフリーで、移動するから交通の便も良いので観光地化しているとは聞いていたが、ここまでとは予想外だ。

 危険な場所にはエクスプローラーしか入れないとはいえ、この喧騒の中では俺達が浮いている錯覚すらある。


「陽花、絶対離れ……おおい!?」

「ほふぇ?」

「なんでお前、30秒目を離しただけなのに両手に食べ物抱えて戻ってこれんの?」


 どんなスキルなんだよ。

 たこ焼きやらクレープやら、陽花が食べ終わるのを待ってからエクスプローラー専用のエリアへ向かう。

 カードを見せると、係員が入れてくれた。

 中は暗く、どこまでも闇が続いている。本能的な不安を覚えるが、隣には強力なエクスプローラー2人がいるから、何が出てきてもなんとかなるだろう。


『女子に頼るなんて情けない』

「言うと思った。俺だってなあ、やる時はやるんだよ」

『へーえ。それじゃあ、やってもらおうじゃない。ほら、目の前』

「あん?」


 カチカチと音がする。

 さて、何が出てくるやら。

 俺は駅や電車に関係ありそうなモンスターだと睨んでいるが、果たして。

 アクア・ネビュラを前に構えた瞬間、闇の奥が一瞬、チカッと光った。


「んっ……」


 次の瞬間。


「ぎっ……ああああああああああああああ!!??」


 全身を貫く衝撃に、俺は跳び上がって叫んだ。

 遅れて轟音が鳴る。


「センパイ!?」

「曽良さん! くっ、電撃攻撃……!?」

「あびびびびびびびびび……」


 痺れるぅ……!

 もっとこう、ギャグっぽく痺れるのかと思ったらこれ、全身勝手に動くし、全然コミカルじゃねえぞ!?

 電撃ってこんなにヤバいのか。スタンガンで人が倒れるわけだ。

 もちろんこの冷静な思考は後付で、体は無様に地面をのた打っている。

 陽花が迂闊に触ろうとして、残った電気が流れたのかパチッという音と共に手を離した。


「いちち……センパイ、なんかすっごい、魚っぽくなってるっすよ」

「いいいいいいい……」


 言ってる場合か馬鹿! と叫ぼうとしても声が出ない。


『うう……私まで……。今のあなた、たぶん【麻痺】を受けているわ。しばらく動けないから、守ってもらいなさいよ』

「おおおおおおお……!」


 お前が挑発するから構えたらこのザマだよ!

 いい感じの避雷針になったアクア・ネビュラも、電撃のショックで手から吹っ飛ばされている。

 陽花達に当たらなかったのがせめてもの救いだ。こうして自己犠牲の精神が発揮できるなら案外ヒーローっぽくないか?

 またもカチカチという音が闇の奥から響いている。

 体は思うように動かないのに、思考や感覚がやけにクリアだからめちゃくちゃ怖い。


「陽花、バットを投げて!」

「うぇいっ!」


 陽花の投げたバットが宙を舞い、そこに青白い閃光がぶち当たった。

 どうやらあれが、俺を貫いた攻撃らしい。

 あんなもん食らったら普通に死ぬだろうが!?

 くそ、ここもマジモンなのか? もっとこう、柴ベロスくらいの緩いダンジョンはないのかよ! ていうかどこが低難易度だ!


「ふっ……!」


 大きく振りかぶった真琴が、手持ちの警棒を投擲した。

 弾丸のような速さで闇の奥に消えた警棒。次いで、


『ガァァァァァッ!?』


 何かの悲鳴が上がる。

 すげえ、なんで当てられるんだ。


「私が倒してくるから、曽良さんはここにいてください」

「いいいい……」


 言われなくても動けないよ。

 そう返そうとするも、口からは情けない声が漏れるのみであった。


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