2-15 パーティ結成
5,000PV越えました、ありがとうございます!評価&ブクマをしてくださっている方も少しずつ増えていて、励みになります。次で2章はラストになります。
目を開けるとそこは、見慣れたキッチンだった。
陽花も真琴も突然の事に驚いているようで、辺りを見回していた。
「ここは……」
「センパイんちっす。あれ、センパイ、勝ったんすか?」
「おう」
随分と意外そうな顔をするじゃないか。
「こーんなでっけえ鳥がボスだったぞ」
「ええ~? 嘘だあ。海の中に鳥はいないっすよ」
「いやいや、これがマジなんだって。頭がワシで、体がライオンでな」
「ほうほう」
「爪とかもうこんくらいでっかいんだよ。しかも喋る」
「ふむう……」
目を瞑った陽花が少しばかり考える。
姿を想像しようとしているのだろうか。
「……センパイ、それ、もしかしてクジラじゃないっすか……?」
「なんでだよ! 俺の情報をどう統合したらそんな結論になるんだ」
ダンジョンにはそういうクジラもいそうだけど、たとえ正式名称がクジラだったとしても、頭が鳥な時点でクジラだとは思えねえよ。
デカいって情報だけ強く拾いすぎだろ。
「お疲れ様です、曽良さん。怪我はしていませんか?」
「あー、まあ。全身がギシギシ言ってる」
「それは大変です。少し横になった方が。さあ、脱いで、傷を見せてください」
「い、いや、そこまでじゃ……。実際、その鳥自体は倒してないっていうか」
「?」
不思議そうな顔の真琴と、明らかに話を頭から理解できていなさそうな陽花に、事の顛末を説明してやる。
ここにいるウンディーネとは別のウンディーネに出会った事は上手く説明できないので伏せておいた。
「そうですか、倒す事なくボスが消滅……ダンジョンのモンスターは何かしらの繋がりを持っている……? それともウンディーネの特異性……? 対話によって力を得る事ができるモンスターもいる……?」
「真琴?」
「……あっ、は、はい。なんでしょう?」
「いや……」
ちょいちょい自分の世界にのめり込むな、真琴は。
別に不愉快ってわけでもないが、会話中に急にブツブツ呟きながら考え込まれると心配になる。
見た目も仕草も完璧なのに、どうも変な所があるようだ。
「センパイ、ボス倒せてないなら寿命延びてないんじゃないんすか」
「いや、なんかこう、契約? して寿命を分け与えられたというか」
「確認したんすか?」
「う……。ウンディーネ!」
ごぼっと俺の口から水の塊が出てくる。
真琴が少しビクッとなった。うん、何回見ても慣れるもんじゃないよねこれは。俺はもう腹の奥からこれが出てくるのに慣れてしまった。
たぶん、人間ポンプとか極めるとこうなるんだと思うよ。
「今のあなたの寿命よね? ええと……嘘……」
「どうした!? ま、まさか、また1か月だけとかいうオチか……?」
「いえ……。1か月どころか、1年も延びてる!」
「1年!? う、うおおおおっ!!」
思わずウンディーネを抱きしめて飛び跳ねてしまった。
「ち、ちょっと!」
「だって1年だぜ!? 普通に生きてても俺みたいな奴は1年なんて生きられるかわからないんだから、これはもう一生分の寿命って考えても間違いじゃないだろ!」
「は、離しなさいよ……。さすがに一生分には替えられないでしょう? あなたがどれだけ寿命をすり減らす怠惰な生き方してたとしても、1年はむしろ短いって憤るのが普通の人間なんじゃないの?」
「俺はそういうの深く考えない方なんだよ。とりあえず明日も明後日も平穏だってんなら、それが一番だ」
「センパイは目の前の今日だけを生きてるっすからねー」
「こらこら、人聞きが悪いぞー。むしろ俺のように図太く生きてこその人生ってもんなのよ」
いやー、今日はほんといい日だな。
頭を悩ませるダンジョンも攻略できて、寿命もがっつり延びたし、さっきまで死にかけてたとは思えないくらい気分も晴れやかだ。なんなら歌いだしそうだよ。
「そうだ、曽良さん、陽花。これはどう分配しよう?」
「ん? ああ、ドロップ品な。まあ、真琴さん達で分けてくれればいいんじゃないか?」
「そうは行きません。このダンジョンは曽良さんの所有物でしたし、権利は基本的に曽良さんにあります」
真琴は強硬に、ベヒモスの目玉の入った袋を俺に押し付けてきた。
うーん、苦手なんだよなこういうの。そりゃ、金はいくらでも欲しいとはいえ……。
ほとんど何もできてない俺が貰ってしまうのはどうにもなあ。
徒党を組んでいるエクスプローラーも、利益分配で揉めてトラブルになる事が多いと講習でも聞いたし、なんにせよ、禍根の残るような結果にはしたくない。
でも、全部譲るなんて言っても納得しなさそうだしなあ。
「んじゃあ、こんだけ……」
袋に両手を突っ込み、9割ほどの石を取り出した。まるで宝石のように輝いているが、価値のある物なのかはわからない。
袋に残った数個の石を見て、真琴は納得したように微笑んだ。
「ええ、妥当です」
「を、真琴さんと陽花に」
「えっ……」
「これが、俺の考える『妥当』なんで」
有無を言わせず、真琴のウェストポーチに俺のすくった石の半分を流し込む。
もう半分は陽花に持たせてやった。
「うおー、キラキラっす」
「だろ。しまっときな」
「こ、こんな、貰えませんよ!」
「まあまあ、いいじゃんか。まだ価値のある物だと決まったわけじゃないんだし、大変な思いしたのは真琴さん達なんだから」
「ボスを倒したのはあなたです!」
「すげーグイグイ来る……。んじゃあ、あれだ。ダンジョンの所有者の権限行使。冷蔵庫の持ち主の俺が言うんだから、この利益分配に文句は言わせねえ」
「うっ……。わ、わかりました……」
俺だってただ格好つけたいわけじゃない。
真琴にはこれからも、是非ダンジョン攻略を手伝ってほしいし、今こうして恩を着せているって意味もある。マジだよ。今考えたわけじゃない。
「よし、打ち上げ行こうぜ! こいつら売っ払った金で、パーッとやろうや!」
「パーティ結成記念っすね!」
「お、それいいな」
「パーティ……私達が……?」
「不満かい?」
俺の問いに、真琴は首を横に振った。
かくして、俺達3人はパーティ結成と相成ったのだ。




