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いい加減にしてくれ、ダンジョン!  作者: 景浦良野
2章
33/112

2-15 パーティ結成

5,000PV越えました、ありがとうございます!評価&ブクマをしてくださっている方も少しずつ増えていて、励みになります。次で2章はラストになります。

 目を開けるとそこは、見慣れたキッチンだった。

 陽花も真琴も突然の事に驚いているようで、辺りを見回していた。


「ここは……」

「センパイんちっす。あれ、センパイ、勝ったんすか?」

「おう」


 随分と意外そうな顔をするじゃないか。


「こーんなでっけえ鳥がボスだったぞ」

「ええ~? 嘘だあ。海の中に鳥はいないっすよ」

「いやいや、これがマジなんだって。頭がワシで、体がライオンでな」

「ほうほう」

「爪とかもうこんくらいでっかいんだよ。しかも喋る」

「ふむう……」


 目を瞑った陽花が少しばかり考える。

 姿を想像しようとしているのだろうか。


「……センパイ、それ、もしかしてクジラじゃないっすか……?」

「なんでだよ! 俺の情報をどう統合したらそんな結論になるんだ」


 ダンジョンにはそういうクジラもいそうだけど、たとえ正式名称がクジラだったとしても、頭が鳥な時点でクジラだとは思えねえよ。

 デカいって情報だけ強く拾いすぎだろ。


「お疲れ様です、曽良さん。怪我はしていませんか?」

「あー、まあ。全身がギシギシ言ってる」

「それは大変です。少し横になった方が。さあ、脱いで、傷を見せてください」

「い、いや、そこまでじゃ……。実際、その鳥自体は倒してないっていうか」

「?」


 不思議そうな顔の真琴と、明らかに話を頭から理解できていなさそうな陽花に、事の顛末を説明してやる。

 ここにいるウンディーネとは別のウンディーネに出会った事は上手く説明できないので伏せておいた。


「そうですか、倒す事なくボスが消滅……ダンジョンのモンスターは何かしらの繋がりを持っている……? それともウンディーネの特異性……? 対話によって力を得る事ができるモンスターもいる……?」

「真琴?」

「……あっ、は、はい。なんでしょう?」

「いや……」


 ちょいちょい自分の世界にのめり込むな、真琴は。

 別に不愉快ってわけでもないが、会話中に急にブツブツ呟きながら考え込まれると心配になる。

 見た目も仕草も完璧なのに、どうも変な所があるようだ。


「センパイ、ボス倒せてないなら寿命延びてないんじゃないんすか」

「いや、なんかこう、契約? して寿命を分け与えられたというか」

「確認したんすか?」

「う……。ウンディーネ!」


 ごぼっと俺の口から水の塊が出てくる。

 真琴が少しビクッとなった。うん、何回見ても慣れるもんじゃないよねこれは。俺はもう腹の奥からこれが出てくるのに慣れてしまった。

 たぶん、人間ポンプとか極めるとこうなるんだと思うよ。


「今のあなたの寿命よね? ええと……嘘……」

「どうした!? ま、まさか、また1か月だけとかいうオチか……?」

「いえ……。1か月どころか、1年も延びてる!」

「1年!? う、うおおおおっ!!」


 思わずウンディーネを抱きしめて飛び跳ねてしまった。


「ち、ちょっと!」

「だって1年だぜ!? 普通に生きてても俺みたいな奴は1年なんて生きられるかわからないんだから、これはもう一生分の寿命って考えても間違いじゃないだろ!」

「は、離しなさいよ……。さすがに一生分には替えられないでしょう? あなたがどれだけ寿命をすり減らす怠惰な生き方してたとしても、1年はむしろ短いって憤るのが普通の人間なんじゃないの?」

「俺はそういうの深く考えない方なんだよ。とりあえず明日も明後日も平穏だってんなら、それが一番だ」

「センパイは目の前の今日だけを生きてるっすからねー」

「こらこら、人聞きが悪いぞー。むしろ俺のように図太く生きてこその人生ってもんなのよ」


 いやー、今日はほんといい日だな。

 頭を悩ませるダンジョンも攻略できて、寿命もがっつり延びたし、さっきまで死にかけてたとは思えないくらい気分も晴れやかだ。なんなら歌いだしそうだよ。


「そうだ、曽良さん、陽花。これはどう分配しよう?」

「ん? ああ、ドロップ品な。まあ、真琴さん達で分けてくれればいいんじゃないか?」

「そうは行きません。このダンジョンは曽良さんの所有物でしたし、権利は基本的に曽良さんにあります」


 真琴は強硬に、ベヒモスの目玉の入った袋を俺に押し付けてきた。

 うーん、苦手なんだよなこういうの。そりゃ、金はいくらでも欲しいとはいえ……。

 ほとんど何もできてない俺が貰ってしまうのはどうにもなあ。

 徒党を組んでいるエクスプローラーも、利益分配で揉めてトラブルになる事が多いと講習でも聞いたし、なんにせよ、禍根の残るような結果にはしたくない。

 でも、全部譲るなんて言っても納得しなさそうだしなあ。


「んじゃあ、こんだけ……」


 袋に両手を突っ込み、9割ほどの石を取り出した。まるで宝石のように輝いているが、価値のある物なのかはわからない。

 袋に残った数個の石を見て、真琴は納得したように微笑んだ。


「ええ、妥当です」

「を、真琴さんと陽花に」

「えっ……」

「これが、俺の考える『妥当』なんで」


 有無を言わせず、真琴のウェストポーチに俺のすくった石の半分を流し込む。

 もう半分は陽花に持たせてやった。


「うおー、キラキラっす」

「だろ。しまっときな」

「こ、こんな、貰えませんよ!」

「まあまあ、いいじゃんか。まだ価値のある物だと決まったわけじゃないんだし、大変な思いしたのは真琴さん達なんだから」

「ボスを倒したのはあなたです!」

「すげーグイグイ来る……。んじゃあ、あれだ。ダンジョンの所有者の権限行使。冷蔵庫の持ち主の俺が言うんだから、この利益分配に文句は言わせねえ」

「うっ……。わ、わかりました……」


 俺だってただ格好つけたいわけじゃない。

 真琴にはこれからも、是非ダンジョン攻略を手伝ってほしいし、今こうして恩を着せているって意味もある。マジだよ。今考えたわけじゃない。


「よし、打ち上げ行こうぜ! こいつら売っ払った金で、パーッとやろうや!」

「パーティ結成記念っすね!」

「お、それいいな」

「パーティ……私達が……?」

「不満かい?」


 俺の問いに、真琴は首を横に振った。

 かくして、俺達3人はパーティ結成と相成ったのだ。


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