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いい加減にしてくれ、ダンジョン!  作者: 景浦良野
2章
25/112

2-7 考えてみよう「迷宮」の意味

 ……ってえな!

 頭を殴られた衝撃に、思わず心中で悪態をついた。

 感触としてはデカくて硬い雪玉を投げつけられた感じだ。

 分かるだろ。雪の降った帰り道に、泥も砂利も混ざってるそれをぎゅうぎゅうに固めてくる馬鹿たれの投げるアレだよ。

 そんなもんがモロに頭に当たったもんだから、本気でムカついてしまった。


「この……ゾウ野郎!!」


 叫びながらアクア・ネビュラを突き出す。

 ヒレの付け根に当たったそれは、肩口からベヒモスの腕を砕いた。


「さっきカバって言ってたじゃないっすか!」

「うるせえ!」


 陽花のアホな発言を封殺する。

 大体、なんで俺がこんな馬鹿みたいなモンスターとタイマン張ってんだ。どうせボスじゃないのに、戦って意味なんてあるのか?

 などと考える間もなく、ベヒモスが残った腕というかヒレを大振りしてきた。

 大丈夫。今の俺にはそんなものは効かない。

 さっき殴られても平気だったのは、きっと俺の中に眠る隠されたパワーとかそういうものが、


『だから避けろって言ってるのよ馬鹿!』


 胃が下に引っ張られる感覚と共に腰が落ち、強かに尻を打ちつけた。

 顔面のあった場所を氷のヒレが通過していく。


「いっだあ!?」

『何を勘違いしているのあなた!? あなた自身が強くなったわけ、ないじゃない! レベル8の雑魚なのに!』

「え、ええ~……? なにそれ……」


 マジで?

 だって俺、さっきこいつの攻撃食らっても平気だったよ?

 あれ、完全に首の骨がイッちゃう衝撃だったからね。

 なんなら頭が転がって、受け取った陽花が「これ、センパイっす」ってやっててもおかしくないやつだったよ。


『くっ……今ので、あなた寿命減ったわよ』

「……は!?」

『説明は後。早く、後ろに逃げなさい』


 シャカシャカと氷の上を無様に這って、陽花達の後ろに隠れる。

 ちょっと待て、寿命が減ったってなんだ。


『私が咄嗟に中に入って防御したのよ。超簡易版ネプテューヌといった所だけれど、当然、大幅に寿命を消費するわ』

「ど、どのくらい?」

『およそ1週間分かしらね』


 なんてこったよ。

 この一撃を防御するので、俺、余命3日くらいなの!?

 そんなインフレしまくった支払いがあるか! ナニワの金貸しでもねえよそんな返済は!

 泡を食う俺の肩に、ポンポンと置かれる手があった。陽花だ。


「大丈夫っすよ、センパイ。センパイはボクが守るっす。ていうか、ボクに守られてればいいんすよ、センパイは」

「お前ちょっとキャラ変わってないか」

「そんな事ないっすよ? じゃあ、あいつぶっ飛ばしてくるんで、センパイはちゃんと、ボクにごめんなさいする準備しといてくださいっす」


 俺はとんでもないモンスターを生み出してしまったのだろうか。

 その言葉通り、陽花はいとも簡単にベヒモスを氷の塵に変えてしまった。

 もちろん謝った。心の底から。何にって? それは俺にも分からない。

 謝れって言われたんだから、これまで悪いと思った事全部謝ったに決まってるじゃないか。

 言ったはずだぜ、俺にプライドはないって。


◆◇◆◇


 ようやく機嫌を直してくれたのか、陽花はちゃんと俺にも話しかけるようになってくれた。

 なんかもう、俺泣きそうだよ、色んな意味で。

 なんで俺、こんな所で陽花に土下座したり真琴に土下座したり、ついでに余命が3日になったりしてるんだろうな。

 今日攻略できなかったらマジで死ぬんじゃねえ?


「うおおおおお!! 死ぬのは! 死ぬのは嫌だ!!」

「だ、大丈夫ですか?」


 真琴が心配してくれるが、結論から言うと全っ然大丈夫じゃねえ。

 こないだまで「いやー寿命が2か月あんならバイトに費やしてもいいだろ」って思ってた俺を殴りたい。

 良くねえよ。ダンジョン攻略に精を出せ。


「ううううウンディーネ!! ボスはまだなのかよ!?」

「え、ええと……。悪いお知らせと……かろうじて良く思えるお知らせと、どっちから聞きたい?」

「後者!」

「まだ72時間は生きられるわよ」

「前者!!」

「ボス、見つかりません……」


 詰んどるやんけ!!

 マジで申し訳無さそうなウンディーネの声色に、本気の焦りを覚える。

 人間ってどうしてギリギリまで動けない生き物なんでしょうね。それとも世のまともな人々は、ちゃんと生をやっているんでしょうか。

 死は間近ですか?


「あと何匹あのカバ倒したらいいんすかー」

「曽良さんが死んでしまうのだけは避けたいですね。もっと攻略速度を上げたいところなですが……」

「それが、本当に変な気配なのよ。さっきからずっと、同じ気配に出会ってる気がするの」


 んなわけない、と言おうとして、はたと思いとどまる。

 そもそも俺達は前に進んでいるんだろうか。

 確信はできないが、どうも同じ道を進んでいるような気がする。

 モヤモヤしたものを抱えながら道を進んで行くと、またも部屋に当たった。

 これで3度目。何か変わるだろうか。


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