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いい加減にしてくれ、ダンジョン!  作者: 景浦良野
2章
20/112

2-2 不平等エレジー

2,000PV、ありがとうございます!

評価&ブクマもありがとうございます、非常に励みになります。

「………………」

「センパイ、ごめんなさいって言ってるじゃないっすか」

「おう……いい画は撮れたかよ……」

「あっはは……」


 そう、こいつはあろう事か、襲われてる俺にカメラを向けてきたのだ。しかも笑いながら。なんなら動画も撮ってた気がする。

 いや、あのね? 確かに痛いだけで致命傷とかではないよ。

 これがシロクマだったら男女平等拳の封印を解いていたかもしれないけれど、ペンギンだしね。

 でもさ、その前に、じゃん? ほら、尻とかつつかれまくって腫れてんのよ。


「やー、すみませんっす。緑のペンギンにシバかれるセンパイって、なんか絵面が面白くて……」

「次お前が同じ状況になったら絶対同じ事してやるからな!」


 と言ってもこいつはペンギンごときに負けるステータスじゃない。突撃してきたペンギンなんて軽くあしらって、逆に遊んでやれるくらいだろう。くそ、不公平極まりない。

 今襲っても返り討ちだからな……。絶対、絶対こいつより強くなって……。いやいや、何考えてるんだ俺は。


「センパイ、めっちゃお尻んとこ穴開いてる!」


 俺を指差して笑う陽花さん。

 絶対強くなったら泣くまでデコピンしくさってやる。

 気を取り直し、氷の回廊を進んで行く。

 時おり迷いながらも順調に攻略は進んでいるかと思われたのだが、


「へくちっ……ずーっ」

「こらこら、鼻は啜らずに、ちゃんとティッシュでかみなさい。さすがに冷えちまったな。一度戻るか?」


 一気に攻略を進めたい気持ちはあるが、ノリで進むにはちょっと厳しくなってきた。

 俺達は6月に適した薄着でダンジョンに突入している。俺は薄いジャージだし、陽花に至ってはショートパンツで思いきり脚も出している。この寒さは堪えるだろう。

 体を動かしているうちはいいものの、のんびり歩いている時間が長いほど体温の下がり方も大きいはずだ。

 なるべくなら早く攻略はしたいが、その後に風邪をひいたらなんの意味もない。貴重な寿命を寝て過ごすのは嫌だ。

 今回はここまでにして、来た道を引き返した。

 そういえばモンスターってどのくらいでリポップするんだろう。

 ゲームならダンジョンを出て入れば湧いたりするもんだけど、さすがにそんな曖昧な基準じゃないはずだ。もしそうなら、どのダンジョンも絶え間なくモンスターが出現しているだろうしな。

 明日入った時にまた最初からだと、微妙にやる気なくなるな……。

 冷蔵庫から出ると、室内のむわっとした空気に晒された。

 気温差から汗が滲んでくる。


「センパイ、アイス食べていいっすか?」

「いいけど、まずは靴脱いでからくつろいでくれよ」

「あはは、親父ギャグだ」


 などとやりとりをしながら陽花が冷凍室を開ける。先輩の家だろうが遠慮なしだ。

 不思議な事に、冷蔵室のダンジョンは庫内の下に続いているのに、その下にある冷凍室は全く影響がない。

 おかげで陽花のアイスも守られた。

 なんという不公平。俺の物で無事だったのは3玉100円のうどんくらいだ。

 今さらそんな事、陽花に言っても仕方ないけど……。


「ウンディーネ、さっきのダンジョンのボスはどのくらい離れてた?」

「そうね」

「がぼぼっ!?」


 口が強制的に開けられ、中から大量の水が出てくる。

 吐き出されたのは俺の胃液じゃなく、俺の体に入っていたウンディーネだ。

 何度やっても慣れない。

 隣を歩いてくれと頼んでも、効率がいいとかなんとかで頑なにこの方法を取るのだ。


「ゲホッ……なんでわざわざ出てくるんだよ……」

「だって、居心地悪いもの、あなたの中」

「なら入るなや。それで?」

「うーん、気配の感じからすると、隠れているようではなかったわね。けれど、まだだいぶ遠かったと思う」


 これまで簡単に攻略できるダンジョンばかりだったけれど、今回は少々長い可能性があるのか。

 普通のエクスプローラーならそれでもいいんだろうけど、俺にとっちゃ厄介だ。

 もう10日くらいしか余命がないってのに、のんびり攻略なんてしていられない。

 それだけ腰を据えて攻略する理由があるとすれば、どれだけの命が得られるのか、という点だ。

 ボスの強さの推測をウンディーネに訊くと、しばし考えた後、


「あの段ボールのよりは弱いでしょうけど、それでもあなた1人では勝てないくらい」


 と、返してきた。

 俺だってレベルアップはしているんだが、未だにミノタウロスに勝てるとは思えない。でも、コカトリスくらいなら案外なんとかなるんじゃ、とは思う。

 とすれば勝手な肌感覚だが、少なくともコカトリス以上、ミノタウロス未満ってところか。

 今考えてもミノタウロスに1人で挑んでしまったのは本当に失策だったと言わざるを得ない。

 いやでも、陽花がいても勝ててたんだろうか、あいつ? 得られる命の長さ=強さ説があるなら、柴ベロスの12倍の強敵だ。

 ネプテューヌくらい反則的な力がなければ、到底勝てそうにもない。


「センパイ?」


 じっと見ていると、陽花が膝を抱えてそっぽを向いた。


「やらしー目で見ないでほしいっす」

「ばっ、み、見てねーし! あ、そうだ陽花、お前どのくらい強くなった? ステータス更新行こう、ステータス更新」

「とか言ってどこに連れ込む気なんすかー?」

「だからしねえって! そのノリどこで覚えてきたんだ」


 警戒心が強いのか薄いのかはっきりしない奴だ。

 そんな奴はまかり間違っても欲情して襲ったりはしないから安心してくれ。


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