1-18 いい加減にしてくれ、ダンジョン
お読みいただき、ありがとうございます。次回からストーリーが進みます。
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あらすじ。死ぬ気でボスを倒したら寿命がガツッと減った。
何を言ってるのかわからねーと思うんだが、俺だって何が起こったのかわからない。
ウンディーネの話によると、あのミノタウロスは本当に強大な力を持っていて、普通に倒せば1年以上の延命が見込めるレベルだったのだという。
が、『ネプテューヌ』なる姿になるための代価はそれを超えていた。
プラマイ2週間。
無情にも、それが俺の死闘の戦果である。
それを聞かされた俺はただ真っ白に燃え尽きるのみだ。
うん、いや、苦戦とかなかったよ? ほんと、自分のものじゃないくらい体が軽かったし、一発も痛い思いしてないし。
まあ強いて言うなら本当に死ぬかと思ったくらい。たったそれだけではあるんだ。
でもさ、もうちょいこう、死の恐怖に見合う何かがあっていいんじゃないかな?
神がいるとするなら、俺を苦笑いさせるために存在してるとしか思えない。
「そ、そう気を落とさないで? ほら、この箱の中身も、あなたがもらっていいんでしょう?」
「ああ。何が入ってるんだろうな、はは、楽しみ」
「声に全く生気がない……」
ほんとにたのしみだよ。
今度は俺がのそのそした動きで箱を開ける。
つるりとした光沢のある物が中に見える。
「なにこれ」
「……人形? いえ、像、かしら」
入っていたのは、牛の形をした石像だった。
そうか、これが元で、あのミノタウロスは現れたんだな。体もところどころが石だったのはこの石像に影響されていたのかもしれない。
ダンジョンは、現れた場所の影響を受ける。ウンディーネの言葉は正しかった。
で、なんだこれ。重いしデカいし、何かに使えるとも思えない。
……あー、これあれね! お庭のインテリア的な!
ガーデニングとかするならね、こういうの置くのもいいんだろうな。
俺も始めちゃおうかな、ガーデニング。庭どころかベランダもない1Kの部屋だけど。
それに、重さや石の手触りから考えて、それなりに高級そうだぞう。石像だけに。
ふふふ、儲けたなこれは。ふふふふ。
ふふ……、
「ふ………っざけんなよオイイイイイイ!!!???」
「び、びっくりするから急に大声やめてよ」
「やかましか! なんっでこうなるんじゃ―――い!!」
怖い思いはする、何も手に入らない、寿命は半分以下に減る、おまけになんか変な置物は増える!
徹頭徹尾、踏んだり蹴ったりじゃねーか!
ていうかこんな重くてデカいもん、このぼろアパートのどこに置けばいいんだよ!?
処分すんのも金が掛かるわ!
「お、落ち着きなさいよ。ほら、よく見れば可愛いでしょう? おーい、そらくーん、遊んで〜」
裏声で石牛のセリフを代弁するウンディーネに、辛抱たまらずチョップを喰らわせてやった。
「いったあ!?」
怯むウンディーネの額にチョップを連打。頭を砕く勢いでチョップ、チョップ、チョップ。
たまらず両手でチョップを受け止めたウンディーネと睨み合う。
「い、いい加減にしなさいよ……!」
「うるせえ……! 人間サマの怒りをその青い顔面で受け止めろや……!」
「え、遠慮しておくわ……」
なんなんだよダンジョンってやつは!
恵みをもたらすどころか、俺にとっちゃ損しかねえ!
さすがに部屋に置いておくわけにもいかない石像は、ウンディーネの泉のそばに置く事にする。
が、そう提案するとウンディーネは、
「嫌よそんな、わけのわからない物」
と、わけのわからない存在のくせに意見してきた。
その後、口論の末にようやく折れたウンディーネと一緒に石像を持って運ぶ。
ついでに運搬中、腰を痛めた俺は、たった2週間の余命のうち2日を寝て過ごす事となった。
マジで……マジでさあ……!
「いい加減にしてくれ、ダンジョン…!」
そんな言葉が自然と漏れるほど、俺の中にはダンジョンへの憎しみが募るのであった。




