1-11 ステータス更新
土曜なので当然、市役所の窓口は閉まっている。
だが、ステータスカードを更新するための端末は時間外であっても使える。
こういうのは普通、ギルドとかでやるから気分が出るもんじゃないだろうか。
木製のカウンターに受付嬢、荒くれ者達が持ち込む戦利品……。そして、
「センパイ、オチョニャンのぬいぐるみ売ってるっすよ。お揃いで買いましょうよー」
「買わんわ」
オチョニャンのぬいぐるみ。目と口がやけに縦長な猫がモチーフの、気色悪い市のマスコットだ。色もモノトーン。何考えて作ったんだこれ?
目につくもの全てに興味を示す脳内3歳児は放っておいて、ステータスカードを出して端末に入れる。
端末の所定の場所に手を置き、少し待つとステータスカードが更新される。
ピンポンポロロンロンと軽快な音楽と共に排出されたカードを陽花と2人して覗き込んだ。
■錦曽良
Level:2 Rank:D
STR:1 DEX:1 AGI:1
なんとなく予想はしてたけどさあ……。
しょ、しょっぺえ〜〜〜〜!
柴ベロスの時は登録前だからノーカンなのかもしれないけど、一応コカトリスにトドメ刺したの俺だからね?
レベルは1上がっただけ、しかも能力補正値は1って。1%か? そんなもん誤差の範囲だろ……。
続いて陽花がカードを更新する。
排出されたカードを見た陽花はげっという顔になり、そそくさとカードをしまおうとした。
「おい」
「あぇっ!? や、違うんすよ、写真変だからあんまり見せたくないってゆーか……」
「こないだ俺に躊躇いなく見せただろ。今さらその言い訳は苦しいって。いいからほら、見せろ」
「いやー! 触んないでください! 人を呼ぶっすよ!?」
「ぐへへへ、こんなところ誰も来ねえよ! いいから寄越せオラ!」
などと悪人のような台詞を吐きながら陽花のカードを奪い取る。
どーれ、乙女の秘密、恥ずかしいステータスをご開陳…………何これ。
「わあー! わあーっ!!」
ぴょんぴょんと跳ねながら俺の手からカードを取ろうとするも届かない陽花。
なるほど、ダンジョンの外で補正値が効かないのは本当らしい。
だってこの数値が本物なら、今ごろ俺なんて片手でのしてるだろうし。
■竜宮陽花
Level:25 Rank:C
STR:120 DEX:120 AGI:120
「オゲーッ!? お前なんだこの数値!?」
「見ないでー!」
「これでよく今まで『わたくしレベル1の初心者でござい』って顔してたなお前! 逆サバにも程があるわ! アイドルでもこんな事しねーよ!」
全部120って本当に初心者かよ。
1レベルでどれだけ上がるかは知らんが、少なくとも俺の120倍の能力補正がかかってるのは間違いない。
そら金属バットくらいひしゃげるわ。元々武術もやってる上に運動神経のいいこいつの事だし、なんなら素手でコカトリスに勝てたんじゃないのか?
「うう……嫌って言ってるのに見られた……」
「何をそんなに嫌がってんだよ。俺なんか1だぞ1。カードに恥が並んでんだ」
「センパイよりめちゃくちゃ強いのなんか恥ずいじゃないっすか!」
何その気の使い方。逆にビシビシ刺さるわ。
こっちなんて今すぐ穴を掘ってその中で一生を終えたいのを我慢してるんだぞ。
カードを隠しながらうずくまって唸る陽花を見て、俺はがりがりと頭を掻いた。めんどくせえ……。
「……まあ、なんだ。エクスプローラーに関してはお前の方が先輩なんだし、むしろ先導役として強い方がありがたいよ。今回も助けられたしな」
実際、このめちゃくちゃなステータスがあるからこそ、俺達は無傷で攻略できたんだろうし。
多少は恥ずかしさも和らいだのか、陽花がうるんだ目で見上げてきた。
泣くほどかい。めんどくさいとか言っちゃった罪悪感が凄まじいよ。
「だからそんな、恥ずかしがるとかじゃなく、相棒として胸を張ってくれ。俺にはお前の助けが必要だ」
「……うっす」
陽花はやけに体育会系な相槌を返してきた。ようやく機嫌を治してくれたようだ。
ほんとこういうところは可愛げがあるんだけどな。
立ち上がった陽花はにかっと笑い、俺の肩をバシバシと叩いてきた。
「じゃあ……これからもよろしくっす、錦!」
ほう……。
お前の中の先輩後輩像がどんなもんかよく分かったよ。
きっかけさえあれば簡単に逆転できる程度の敬意って事もな!
「ああ、はい、竜宮サンにはお世話になりやーっす。じゃあ自分用事あるんで」
さっさとその場を立ち去る俺に、陽花は「ごめんなさい! センパーイ!」と叫びながら追いすがってきた。




