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いい加減にしてくれ、ダンジョン!  作者: 景浦良野
5章
108/112

5-43 ハリケーンに乗れば怪獣にだって勝てる

 陽花が背伸びして作戦を耳打ちしてくる。

 なんでこの子、こういう時に限って可愛らしい仕草で攻めてくるんだろう。絶対自分の顔の良さとかわかった上でやってるよな。天性の才能だったら恐ろしいわ。

 だが、作戦を聞いた俺は表情の見えない仮面の下で思わず顔を顰めてしまった。


「それ、ミスったら俺死ぬな」

「ええ……」

「うっし、やるか」

「ええっ!? や、やるんですか?」

「やるだろ。みんな死ぬか俺が死ぬかもの二択だったら、やる以外なくね? しかし、陽花は発想の天才だよなほんと。普通思い付かねえよ、そんな作戦」

「えっへへぇ……。もっと褒めていいっすよ」


 皮肉ってんだよ馬鹿!

 常人は敬愛する先輩の命をベットする作戦なんて思い付かねえって言ってんの!

 でもまあ、可愛げあるから今回は許す。最悪最後になるわけだし、波風は立てん。

 ぐっと拳を握って気合いを入れ、それぞれ位置に付いた。

 俺の前に陽花と真琴。それぞれが武器を持ち、そこへ力を集中させようとしている。

 空気が揺れ、弓には風が、剣には炎が集まってくる。


「――サラマンダー、行くぞ!」

「――シルるんッ!! やって!!」


 そして、2人が同時に叫び、武器を思いきり振るった。

 すると――、


 ――ゴォッッッ!!


 地獄のような業火を、災害めいた暴風が巻き込み、巨大な炎の嵐となってモンスターへ襲い掛かった。

 その威力は、モンスターの歩みを止めるほどだ。離れた場所にある瓦礫さえ巻き込む勢いは、全く出力が衰える事がない。

 で、だ。

 作戦はこっからが本番だ。

 俺は今からこの嵐に飛び込む。触れるだけで骨も残らない灰になっちまいそうな、この死地にだ。

 おかしくなったわけじゃないよ? これが作戦なんだよ。


「……っし! 行くぞ、行くぞ、行くぞ……行くぞ……」

「センパイ早く! ビビりかよ!」

「お前口悪いからな、後で叱る! 絶対だ!」

「叱っていいから早くってば!!」


 だああもおおお、わかったよ!

 錦曽良、行きまあああああああああああああああああ――!!

 嵐に飛び込んだ俺は、四方八方から襲い来る高熱を必死で身に纏った水で防御しながら、乾燥機の中ってこんな感じかなという気分と共に超高速で回転しながらモンスターへ向けて突き進んでいく。

 前に突き出したアクア・ネビュラの狙いは過たないよう必死になっていると、ほんの数秒で、


 ――ゴガァァァァァァァァンッッッ!!


 と、凄まじい衝撃と轟音と共に、何かをぶち破る感触だけが背骨に響いた。

 ネプテューヌ使ってなかったらバラバラになっていたかもしれない。いやその前にこの世から消えてるけど。


「うおおおおおおおおおっ!!??」


 勢いは止まらず、そのままモンスターの背中をぶち破って飛び出してしまう。

 背後ではモンスターの断末魔なのか、低い声が響き渡っている。

 上空で身を捻り確認しようとして、気づいた。

 あれ、これ、どうやって止まるの?

 想像の10倍はヤバい勢いだったらしく、まるでギャグ漫画のように全然勢いが止まらない。

 ようやく勢いが落ちた頃、気が付けば地面を離れ、城下町を眼下に見下ろす空の上だった。

 これ、落ちるとどうなるんだ。

 ダンジョンは空間が歪んでいるらしく、これだけ吹き抜けてるのに、下から上にズルをして上がったり、下がったりはできないらしい。

 嘘か真か、一階層で下に下りた人間は、もう二度と帰ってこなかったという情報もあった。

 つまりここから落ちても、単に下の階層には行けず、どこか別空間にでも落ちて死ぬ可能性がある。

 だが、アニメよろしく空中を泳ごうとしても、現実の俺にそんな事はできない。陽花のように羽でも生えてりゃ別なんだが。

 あ、これ死ぬわ。


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