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いい加減にしてくれ、ダンジョン!  作者: 景浦良野
5章
104/112

5-39 混交の怪物

『オォォォォォォ――――――――!!』


 低い、地を震わせるような咆哮。

 凄まじい声量に陽花は耳を塞いでいた。

 少し離れた場所へ降り立ち、2人を地面へ降ろす。


「陽花、真琴抱えて逃げとけ」

「せ、センパイ? ボクも、ボクも戦うっす! ねえ、シルフ!」

『だ、駄目だ。キミが死ぬのは見過ごせない』

「シルフ!」


 いつもはムカつくクソガキだと思ってたけど、意外と話がわかるじゃねえかこいつ。


「シルフ、陽花の事頼むな。さすがに階層を超えたら攻撃だって届かないんだろ、ダンジョンは」

『……ああ。ていうか、僕に命令すんな』

「チッ、最後までこいつ……。わかったよ、でも本当に頼んだぞ」

「は? 最後? 最後って、何すか!? なに2人で通じ合ってんすか! いっつも仲悪いくせに、こんな時だけ……」


 陽花が手を伸ばしてくる前に、俺は思いきり跳んだ。

 背後から、「バカヤロー!!」と罵声が追い縋ってくるのを聞きながら、城を破壊したモンスターを睨む。

 モンスターから少し離れた尖塔に着地し、屋根を掴みながら様子を見た。

 強いて言うなら、ファンタジーのドラゴンのような顎に、ずんぐりと太い胴は鈍く光る鱗に覆われている。

 8本の人間のような腕は、それぞれ指のように別れた部位の先端から無数の触手を伸ばしていてめちゃくちゃキモい。

 背中には翼。ただ、翼は木の根でできていて、どう見たって飛べそうにない。翼の真ん中には巨大な背びれまで付いていた。

 尾も、形を見るなら巨大な魚のようにヒレが付いている。

 全体的に、自然が形を成したような怪物だ。

 大地の力を使うおっさんが、ウンディーネそっくりの聖女を食ったからこうなってるのか?

 だったらあの聖女が、ウンディーネの力を……。

 もし、あの怪物から聖女を引きずり出して、ウンディーネに力を返させれば、あいつは生き返るだろうか。

 ダンジョン生命体なんだから腹を抉られたくらいで死ぬとも思えないけれど、生き返る方法だって未知だ。

 やれそうな事は試してみるべき……って、


「あああああっ!? やっべ、忘れてた! あいつの死体、崩れた城ん中だ――――――!!」


 城はとうに瓦礫の山になっている。しかも、モンスターが巨大な足で散々に踏み荒らしていた。

 ……あれ、これってもしかして、もう手遅れなパターンじゃね……?

 …………。

 いや! でも、俺はダンジョンの力ってやつ、信じてっから!

 たとえ青着色料入れたミートソースみたいなナリになってたとしても、それでも何やらかんやらすれば無事に生き返るって、俺、信じてっから!

 つーわけで、今瓦礫を掘るのはなしだ。先にあのモンスターを倒さなきゃならない。

 けど、どうやって立ち向かう?

 実力差なんて測らなくても、サイズだけで圧倒的に負けてる。なんなら、腕の一振りでも食らえばバラバラになる自信がある。

 こういう時フィクションだと、都合よくすげえパワーに目覚めたりするんだろうけど、俺には無理だ。

 さっきノリで使った事もない力をフル活用していた気もするけど、あれだってどうやったのか自分でもわかってない。

 ただ、できると思ったからやっただけだ。

 なんてカッコいい事言ってみたってやっぱり力の差は覆せないわけで。

 策を考えていると、モンスターは手当たり次第に瓦礫を掴んで食い始めた。

 すると、肩口を突き破るようにしてもうひとつ、頭が出てきた。今度はエラのあって目が異様に小さい、ウツボのようなグロテスクな頭だ。

 もしかしてあいつ、食えば食うほどパワーアップできたりする?


「猶予はねえって事か……」


 とにかく、1発でも有効打を与えられそうな手段は……。

 とりあえず突っ込んでから考えようと思った時、俺はいつぞやぶりに、自分にできるもうひとつの攻撃を忘れている事に気づいた。

 ほんとよく忘れられる奴らだなあいつら。いや、俺が悪いんだけど。

 この姿になって使うのは初めてだから、どんな影響があるかわからない。

 一瞬で死ぬとかないよな……?


「ええい、ままよ!」


 俺はアクア・ネビュラを天に突き上げ、そいつらの名を高らかに叫んだ。


「来い!! ジズ! ベヒモス! リヴァイアサン!!」


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