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いい加減にしてくれ、ダンジョン!  作者: 景浦良野
5章
102/112

5-37 今日死んだって構わない

「この世界、ファナティア再生の土壌として利用する」


 世界を土壌に、だと……随分大きく出やがったなこの露出狂野郎。

 イカれた冗談は性癖だけにしとけよ。

 ――と、言いたい所だけど、声がマジだ。

 このおっさん、ナリはふざけてるくせにギャグ時空の住人ってわけじゃないから、やるとなったらマジなんだよ。


「一つ聞かせろ……」


 陽花達はピクリとも動かない。俺も助けに行けないレベル。

 なんとか時間稼ぎして、体力を回復させないとまずいと考えた俺は、質問でおっさんの動きを止めようとした。


「ファナティアなんて再生して、一体何がしたいんだよ……? 滅んだんなら、何もないし、誰もいないんだろ、そこは……」


 世界は、ただ作り直しただけじゃ全くの別物だ。

 そこに知ってる人がいて、知ってる物があって、初めてちゃんと『再生した』って言えるはずなんだ。

 でも、命は戻らない。

 たとえウンディーネ達全員の力を使ったとしても、同じ命を戻せるはずがない。

 それは、水晶宮へ行った俺がよく知っている。死んだ命は戻らない。それが絶対のルールなんだと。

 なのに、このおっさんは、どうしてこんな夢見がちな事言ってんだ。

 再生なんて、滅んだ時点で無理なのに。


「空っぽの入れ物だけ作り直したって、何の意味もねえじゃねえか。そのためにこんな事して、ウンディーネも……何がしたいんだ、お前」

「知らずとも良い。全ては我らが母精のため」

「ウンディーネの事か? お前が殺したくせによ」

「違うな。あれはもう、力のないモノでしかない」


 ウンディーネをモノ呼ばわりされた瞬間、胸の奥からマグマのような怒りが噴き出てきた。

 だが、感情に体が追い付かない。

 どうしたって足に力が入らない。頭が締め付けられるように痛いし視界が狭い。

 さっきから左の脇腹辺りが熱いし、上手く腕も上がらない。

 お手上げだ。腕上がんねーけど。

 けど、なんとか1発だけでも、こいつをぶん殴りたい。

 鼻か歯をへし折ってやりたい。

 地面に転がる、ウンディーネの亡骸に視線を移す。

 あんなにうるさかったくせにまあ、静かになっちまってよ。

 でも、お前みたいに騒がしい奴がほんの一時期でも家にいて、なんとなく楽しかったんだよ俺は。

 お前がどう思ってたとか知らんし、トイレも自由に行けなくてはた迷惑な部分も多々あったけど、俺は楽しかった。

 またあの日々に戻れるんなら……ほんの1秒でも戻れるってんなら……!


「今日死んだって、構わねえ」

「ふん……」


 おっさんは、俺が何をするのかにさえ興味がなさそうだ。浸るように天を見上げている。

 アクア・ネビュラを手元に呼び出し、切腹するように正座して構える。

 ウンディーネがあんな状態で使えるのかどうかなんてわからねえ。

 使った後、どうやって生を繋ぐのかもわからねえ。

 そもそも勝てるかなんてもっとわからねえ。

 わからねえだらけだけど、やるしかねえ。


「行くぜ、ウンディーネ」


 こういうの、アニメとかだったらヒロインが後ろに寄り添ってくれたり、「頑張って」とか声掛けてくれたりするんだろうけど。

 如何せんあいつは、そういう面倒なのやってくれなさそうだし。

 だから俺は、俺の中だけにある薄い繋がりに向かって、言い聞かせるように叫んだ。


 ――ネプテューヌ!!


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