5-35 おかえりマイバディ
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……お?
あれ、俺、また水晶宮に来たのか……。
またウンディーネ(美)さんの膝で目覚めたりすんのかな。
もうすっかり慣れたもんだが、もし目を開けたら地獄だったらと思うとすげえ怖い。
うっすら目を開けて確認してみる。
すると、白い光がぼんやりとして見えた。
「あ、センパイ起きた」
「ちっ、陽花かよ……あだっ」
膝枕をしてくれていた陽花に、ぺちっと額を叩かれる。
こいつ俺の扱いがより雑になったな。
「急に倒れて動かなくなるから、どんだけ心配したと思ってんすか。疲れてるんなら言ってくれればいーのに」
「す、すまん……あれ? 真琴は?」
「偵察行くって言って先に入ってったっすよ」
俺達のいる小部屋にはモンスターは湧かないようだ。
壊れた道具が散乱する物置めいた部屋は、薄暗く、埃っぽい。
身を起こそうとして、あばらがズキッと痛んだ。
五体満足ではあるけど、満身創痍だな、ホント……。
座って休んでいるとコンコンと木の扉がノックされた。
一瞬身構えそうになるが、陽花が心配ないと肩に手を置いてくれた。
扉を開けて入ってきたのは真琴だ。
「行けるところまで進んでみましたが、城内にモンスターの姿はないですね。休憩できそうな部屋も見つけたので、そこまで安全に進めそうです」
「マコ、ありがとう!」
「ふふ、お安い御用だよ。曽良さん、立てますか?」
「ああ、悪い」
さっきまでの、立てなくなるほどの不調が嘘のようだ。
どころか、妙に体に力が漲っている。なんなら、ここまでの戦闘で溜まったはずの疲労もない。
よほどぐっすり眠っちまったのかと思ったが、陽花に聞くと倒れてから30分と経っていなかった。
「おし、んじゃ行くか。ノーム、こっから先……ノーム?」
ノーム様の姿が見えない。
「陽花、ノームどこ行った?」
「へ? あれ、そーいやいないっすね……。城に入った時は、ちゃんといたんすけど」
『おいてめェらァ』
2人してキョロキョロ見回していると、頭の中にサラマンダーの声が響いた。
普段のあいつからは珍しい、落ち着いた声だ。というより、何か警戒してる……?
『安全なんてねェぞ、ここは。敵の腹ン中だ、ボヤボヤしてっと、食われて終いだァ』
『ちょーっと遅かったみたいだね』
シルフも話に加わってきた。
遅いって何がだよ。
『錦曽良、今、武器は出せる?』
「は? 出せるよ、ほら……あれ? お、おい! 何で、あれっ!?」
『あーあ、やっぱりか……』
「何がだ!?」
どれだけ力んでもガイア・ノーツが出ない。
どこかに落っことしたのかと思ったが、自分の中にノームの力を感じられない。うっすらあったはずの、繋がりみたいなものが切れているように思えた。
これ、契約切れてる?
『ボケが。てめェ、やっぱ気が付いてなかったのかよ』
「な、何にだよ」
『ノームに利用されてたんだよ。あいつ、この迷宮全体が自分の物だって黙ってたんだな』
「いやいや、ノームはダンジョンを奪われたって言ってたんだぜ? あの裸マントのおっさん達に……」
『あいつがいなきゃ進めない仕掛けがごまんとあったのにかァ?』
……あ。
ああああっ!? そういや、そうじゃん!
何で神殿の上に勝手に建てられた、ウンディーネ信者の城が、ノーム様……いや、ノームありきの仕掛けで動いてんだ!?
ここまでの道中でまったく気が付かない俺、馬鹿かよ!!
「そ、曽良さん? ノームのダンジョンが奪われた、というのは……」
「えっ、センパイ、もしかしてノームの身の上話的なのに騙されてたんすか……?」
だよね!
話してもいない事、2人が疑問に思えるはずないし、指摘もできんわな!
ていうか、言ってよ! サラマンダーもシルフも! 怪しいって気づいてたんなら言っ……てたわ! おもくそ最初に言ってた! こいつは駄目だとか何とか!
お、俺、俺は……!
「馬ぁ鹿ぁかぁよぉ~~~~っ…………!」
崩折れる俺に、サラマンダーとシルフとついでに何故か陽花が「ばーかばーか」と罵ってくる。
陽花はお前、やめろや! お前に言われるのがいっちゃん傷つくわ!
『カカッ、クソみてェな情に絆されっからそうなるんだァ。あーあァ。この先武器なしでどうするつもりなのかねェ』
『こりゃ、足手まといどころじゃないんじゃない? 今度は偶然助けてくれる奴は現れないよ~?』
「ぐぬぬぬぬ……!」
「ま、まあまあ。曽良さんは被害者のようなものなのだし、そんなに責めなくても……」
「いーや! マコは甘い! センパイは、もっとボロボロになるまで叩かれるべき!」
こいついやに俺に厳しいな!
いやでも、愚直にも可愛いものを信じて騙されて大ピンチという醜態を晒してるんだから、ぶっ叩かれても仕方ないんだけどさ……。
うおお! 誰か俺の墓を掘ってくれ! そこに埋まってたい!
よりにもよって敵の本陣で、一番ステータスの低い俺が武器なしの足手まといになっちまうなんて……。
『……あ? おい、錦曽良。てめェ、ウンディーネの力を感じるぞ』
「え……?」
試しに、アクア・ネビュラを手の中に出す念じてみる。
すると、重さのない三叉の槍が、瞬時に手の中に現れた。
しかもなんか装飾が豪華になってる! 全体的に、ウンディーネ(美)さんの持つ物に近い感じだ。
「お、おおおおっ!!」
「なんかセンパイのそれ、形変わってません?」
「レベルアップによる影響? いやしかし、これまでそんな予兆は……」
「何でもいいよ! はあ~、戻ってきてくれたんだなあ、アクア・ネビュラ……。もう一生お前を離さない……」
「それ、ウンディーネさんに言えばいいのに……」
呆れる陽花の声を聞き流しながら、俺はアクア・ネビュラに頬ずりした。




