無の魔力
翌朝長門は刀の携帯申請書の紙と教科書を用意して部屋を出て、食堂に行った。食堂でご飯をとり席を探していると白空と恭乃がいた。
「ここ、いいかな?」
長門が聞くと二人は快く承諾した。長門は座ると白空に気になったことを尋ねた。
「そういえばなんで昨日王女さまは俺のことを知っていたんだ?」
白空は頬を掻きながら行った。
「あーとね。昨日放課後に聞いてきたんだ。『日昇国出身の刀使いが私よりも成績が良かったと聞いたのだが、、、心当たりはあるか?』てね。ほら長門くん馬車乗ってるとき刀掛けてたじゃん?だから、もしかしたらってね。そしたらダッシュで行っちゃって、、、て感じ。」
白空が言うと恭乃が笑いながら言った。
「なるほどな。くっくっまさか王女さまとお近づきになるたぁ夢にも思わなかったぜ。長門お前はいろんところからモテるなぁ。」
恭乃が意地悪めいた風に言うと長門が少し微妙な顔をしたが白空はキョトンとしていた。それを見た恭乃は白空に説明を始めた。
「実はな、―――」
「なるほど。それは面白い体験をしたねぇ。」
白空が笑いを堪えながら言うとちょっと長門は不機嫌になった。
「いやでもまさかあのアルバード大臣のご子息に目をつけられるたぁな。」
恭乃がそう言うと後ろから声を掛けられた。
「呼んだか?」
振り向くと冷たい目をしたギャビンが立っていた。
「おう、賢人の息子じゃあねぇか。」
そう恭乃が言うとギャビンの眉がピクッと上がった。
「キミ、わざとだね?私がその事を気にしていると知っていて。まったく、質の悪い、、、。だが、何故それを?」
ギャビンの言葉に長門は激しく同意して、だが、同時に何故そんな事情まで知っているのだろうとも不思議に思った。
「ん?そうさな。この学園の主要な生徒のことについては大抵調べたからな。」
恭乃が言うとギャビンは首を傾げた。すると白空が捕捉説明をした。
「彼、諜報員を目指しているんですよ。ですからそれもその一環なんじゃあないでしょうか。」
ギャビンがなるほどと頷くと長門が呟いた。
「自己主張の激しい諜報員ですけどね。」
その呟きにギャビンは確かに、と思った。
長門が思い出したようにギャビンに聞いた。
「そう言えば、なんで賢人の息子というのが嫌いなんだい?」
「ん、それはな。誰も私を見てないからだよ。私ではなく、みな父の影を見ている。賢人の息子それだけで期待されて来たからさ。ま、その全てに答えてきたのだが、、、。でも、私は私だ。賢人の息子としてではなく、このギャビンをみなに見てほしいのだ。」
「なるほど、だから負けてられない、か。」
長門が呟くとギャビンはムッとして言った。
「昨日の事は忘れてくれ。まぁ負けてられないのは本当だが。私は強くならなければならないのだよ。父を超えるためにも。」
ギャビンが拳をギリッと握り言うと恭乃がフッと笑い言った。
「全く、父の影に引っ張られてんのはどっちだか、、、。しかしお前さんその様子じゃあ、強くなるために魔族の力を手に入れてもいいという感じだぜ。」
恭乃が冗談めかして言うとギャビンは自嘲気味に笑って呟いた。
「もしかしたら、そうかもな。」
するとギャビンはご飯を口に詰め込み冗談だ、と言い足早に帰っていった。
「全く、後が心配だ。」
恭乃の呟きを最後に三人も学校に行った。
*
まず、最初の授業は歴史に関するものだった。
「みなはこの世界の成り立ちは勿論知っているな?」
アンドレアが聞くとみな頷いた。
「だが、これには続きがある。最後は種族間で不可侵を結んだが、考えてみてくれ。私たちには使い魔がいる。その使い魔は神に近しきものから精霊、小人、ひいては龍族までいる。つまり人族は他の種族と関わりを持ちすぎている。それは、何故か。単純に弱かったからだ。その時は属性を持っていなかったからな。他の種族と交渉をしたんだ。人族は幸いにも魔力を持っていた。属性は無であったが。これは原始の魔力とも言われ、今では貴重な物になっている。この魔力では派生として力魔法、音魔法のような物ができる。」
黒板を消しながらアンドレアは説明を続けた。
「さて、その後人族は最初は自分達の生活で必死だった。獣を狩り魔獣の襲来に備え、とな。その後生活が安定したとき人族は魔力の研究に移った。精霊が小人と人族以外に授けた属性とは別のな。人はまず火の魔力を手にした。これは精霊が授けたのと非常に似ていた。次の水と土もそうだ。だが、次の風は精霊たちにはなかった物だ。どれに近いかと言われれば木だな。次は雷だ。これは、精霊達のにも似た者がない人族独自の魔力だ。そして、これらを五大元素と呼ぶ。と、まぁここら辺は常識だな。」
アンドレアはふぅーと長い息をし続けた。
「次は今説明したのとは別の特別な属性だ。まず、光と闇この二つは対となるもので、光は神族、闇は魔族から派生して出来たものだ。そして、先ほどちらっと言った力魔法、音魔法は次の物理魔法に関するものだ。これは大変扱いが難しく、物理魔法を扱うことができるのはこの世界でもごくわずかの人間だ。無は先ほども言ったように原始の属性、一つの説として物理魔法は無属性の中の一つとも言われたりしている。最後は癒これは回復魔法の事だ。他にも毒属性や死霊魔法など色々な物があるが、それらは色々な研究が進み派生して出来たものだ。テストに出るのは今、私が言ったようなものだ。覚えておけよ。詳しく書くことになるからテキトーじゃダメだ。」
アンドレアは一旦教室中を見渡してついていけてないものがいるか確認してから説明を続けた。
「大体、ココまでで300年くらいか、魔法の歴史は今も進んでいるからどんどん新しい魔法が開発されている。それから時々小国同士の小競り合いが始まってしまい、それが徐々に広まっていってしまった。それを気にした十二の国の長たちは4年に一度十二の長達だけで周辺国の状況を確認しあう会議を始めた。この会議の場所は世界的商業国で十二の星の名をもたないオーティス国、これは今でも変わってないな。十二の国の長たちがそこで会議をする場所に結界を張り星の名をもつものしか入れないようにした。この出来事は537年の時だ。」
アンドレアは時計をちらりと見ると黒板を消して皆の顔を見て言った。
「それから数百年がたつとみなも知っている大事件が起きた。」
その言葉に生徒たちは体が引き締まる。
「今から987年前星国会議の場に13人目が現れた。」
*
時は1577年、今から987年前の事だ。
オーティス国の中心部で厳重な警備と結界に守られている十二の長達が会議をしていた。
「そちらの状況はどうかな?」
ヴァルゴ王国女王のエステル・バルゴが口を開いた。
聞かれたリオ王国国王リー・レオは頷き答えた。
「こちらはまぁ、大丈夫かな。ランドン辺境伯に睨みをきかせてもらっている。」
この両国は十二の王国の中でも特に強い力を持っている国だ。
次に口を開いたのはヴァルゴ王国とは友好国であるリブラ王国の女王ダコタ・ライブラだった。
「んー、今回も目立ったナニかはない感じ?」
ダコタが首を傾げるとジェミナイ王国女王双子のエレナ・ジェミニーとエロノア・ジェミニーが同時に言った。
「「多分、そうかもねー。」」
それを聞いていた会議の中でも最年長の国王エリーズ王国国王ジョナス・エアリーズが笑いながら言った。
「クックッ、平和とは良いものよ。これがずっと続いてくれたらいいのだがなぁ。」
それをスコーピオ王国国王ラルフ・スコルピオーンが頷きながら同意した。
「全くです。」
その話しを今まで考え事をしながら聞いていたサジャテリアス王国国王ラジャド・サジターリアがハッとして言った。
「いや、まて。最近地震が起きなかったか?」
パイスィーズ王国女王フローラ・ピスキィーズが訝しげに反応した。
「あったけど、、、それがどうかしたの?」
会議の中心はラジャドになった。
「あ、ああ。その地震から周辺国の様子が少しおかしくてな。」
考えながら喋るラジャドにエステルが聞いた。
「おかしい?」
「ああ、うちの大賢者イザベラ殿が周辺国の様子を見に行ったらしいのだが、そこの者たちはほとんど自分達の荷物をまとめていたらしいんだ。」
するとキャンサー王国国王ゼノ・キャンシーが気づいたように言った。
「む、そう言えばルース伯爵からも周辺の島国からたくさんの人が来て港が賑わってるとか言ってたな。」
アクウェリアス王国国王ショーン・アクウェアリアスがしかし、と口火を切って言った。
「それはただ、地震による被害からそういうものが増えただけかも知れぬぞ。」
キャプリコーン王国国王シャノン・キャプリコーナスが確かに、と頷いた。
そんな折外からだっだっと走ってくる音がした。
ドンドンとドアが叩かれるとリーが咄嗟に叫んだ。
「何奴!」
「ハッ、私はオーティス国近衛隊隊長ティモシー・トリスタンと申します。」
「よろしい。そのまま話せ。」
十二の王はティモシーの言動を一言一句聞き逃さないようにした。
「ハッ、今十三個目の国の長だ、というものが現れました。」
「「「「「「「「「「「「「何っ!」」」」」」」」」」」」」
十二人が口を揃えて言った。一人はただ絶句していた。
「詳しく」
焦りながらもエステルが続きを促した。
「こちらでその者に説明をしていましたが無理矢理入ってこようとしたので武力行使に出ました。しかし、」
察したようにダコタが言った。
「返り討ちにあったと、その者はいまどこへ?」
「各国の代表騎士たちと賢者さま達が戦っております。ですが恐らく時間の問題でしょう。」
ゼノがため息混じりに呟いた。
「もしや、その国への移住のためだったのかもな。」
ラジャドが苦虫を噛み潰したような顔で恐らく、と言った。
エレナとエロノアが声を揃えてティモシーに聞いた。
「「そいつの特徴はぁ?」」
「黒い甲冑を身に纏い、魔力属性は物理か無だと思います。」
「原始の魔力か、、、。」
十二の長が沈痛な顔をしているとドアの前まで十三個目の長は来ていた。
「こっから先は通さん!」
「黙れ。」
静かに言ったその言葉はとても低くそれだけでもただ者ではない雰囲気を醸し出していた。
「グッ、」
「ティモシー近衛隊長!」
咄嗟にリーが叫ぶが返事はなかった。
ドアの奥ではあの低い声をしたものが返事をした。
「いやぁ、十二の長達よ。入ってもいいかね?」
通常この会議の場は今いる十二の長しか入ることができない。だが、十三個目と自負するなら、と代表としてエステルが答えた。
「いいが、この場は原則武器の持ち込みは禁止している。鎧くらいはいいがな。」
そう言うとそうか、と十三個目の長は呟きドアを開けた。
そこにいたのは黒い甲冑を着た魔王のようなものだった。
そいつは会議の場に足を踏み入れようとして、あっさりと入っていった。
な、と十二人が絶句し、トーラス王国国王ヴァル・タウロスだけが顔をしかめ見ていた。
「何を驚いている。言ったろう。十三個目の王、もとい皇帝オヒューカス帝国皇帝ヴィンセント・オフィウクスだ。」
今まで黙っていたヴァルが顔をしかめながら重苦しい口を開いた。
「そいつは本物だ。だけど、そいつの言うことには絶対聞くな!」
「知っていたのか?」
リーがヴァルを睨みながら問いただそうとするがそれをエステルが制した。
「待て、今はそんなことをしている場合じゃない。あなたは何故ここへ来た?」
エステルが問おうとするとリーが怒鳴り散らした。
「そんなもの聞かなくてよかろう!こやつは同胞を殺したのだぞ!」
それを聞いていたヴィンセントは心外なように言った。
「殺してなどおらぬ。少しの間眠ってもらっただけだ。まぁ、いい。説明をしよう。」
「しなくていい!」
ヴァルが言うがそれをダコタが制して続きを促した。
「それは――――」
その説明を聞き十二人は閉口し、ヴァルが悔しいそうな顔をした。
「わかった。私は賛成だ。」
最初に口を開き賛成の意を示したのは意外にもリーだった。
「何を言うか、私は反対だ。大陸統一だと?そんなことしなくても解決する策はあるはずだ!」
エステルが言うとダコタも頷き言った。
「私もそう思うわ。」
だが、ラルフはそれを鼻で笑い言った。
「甘いな。私は賛成だ。」
それから賛成と反対の意見が別れ、結局賛成にリオ王国、スコーピオ王国、キャンサー王国、パイスィーズ王国、キャプリコーン王国、サジャテリアス王国、反対にヴァルゴ王国、リブラ王国、ジェミナイ王国、トーラス王国、エリーズ王国、アクウェリアス王国に別れこの二つは後に賛成派が強硬派、反対派が穏健派と呼ばれた。
しかし、このヴィンセントが話した内容は国王以外には伝えられることがなかった。
―――それから戦争は始まった。今も続く戦争が。
*
時計を見ながらアンドレアが言った。
「最後にみなも知っているが今、戦争をしようと思ったら海を渡るか、三つの中立国を通らなければいけない。そして、その中立国で70年前から、国立学校対抗戦が行われるようになった。戦争の代わりとしてな。こんなところか、次の時間もこの教室でやる。以上。」
アンドレアがそう言うとタイミングを見計らったようにチャイムがなった。
授業が終わるとみな伸びをして次の授業の準備をした。
*
次の時間では自分の魔力属性を確認する授業であった魔法科ではカイルが何やら荷物を運び、授業を始めようとした。
カレンが手を上げ、先生に聞いた。
「先生それ、なんですか?」
カイルは白い歯を見せながら笑顔で言った。
「これは君たちの魔力属性を確かめる装置だ。」
カイルは全体を見回し、授業を始めた。
「よし、ではカレン君からこっちへ来てくれないか。」
言われたカレンはスッと歩いていった。
「そして、この水晶玉に魔力を込めてほしい。」
カレンははい、と言って魔力を込めた。すると無色であったはずの水晶玉が黄色く光り、その下に引いてあった紙では稲妻模様がぼわぁと光りだした。
「うん、やはり雷か。中等部までは全部の属性の基礎的な攻撃をやっていたと思うが、高等部からは自分にあった属性、そして複合魔法を覚えてもらうことになる。」
カイルは途中から全体を見ていいみなも大きな声で返事をした。
次は紅梅がやった。
魔力を込めると水晶玉がピンクに光り、紙ではハート模様が光りだした。
「ほほう。なるほど。」
カイルは感心したように言った。
次はウェスタであった。みなも何となく彼女の魔力属性には感づいていたが、ドキドキとそれを見守っていた。
ウェスタが手をかざすと灼熱の炎のように真っ赤に光り、紙では炎の模様がぼぉと光だした。
徐々に水晶玉の光りが濃くなっていき、それをみたカイルが止めに入った。
「ストップ!」
すると光りが収まり熱も収まった。
「君はやはり魔力コントロールができていないようだな。」
そう言うとウェスタはしょぼんとして謝った。
「ご、ごめんなさい。」
「いや、謝ることじゃない。凄いことだよ。君が魔力コントロールを上手く出来るようになったら、恐らくこの国の大賢者さまを軽く越えるだろう。恐らく女王さまもね。」
それを聞きウェスタは心から喜び、教室ではおおーという声が響いた。
それから何人かが続いてやっていき碧の番がきた。
碧が魔力を込めると、水晶玉は緑と黄土色に光って、紙では風模様と土模様が光った。
「ほほう、これは珍しい。二種類の魔力属性はごく稀に起きる。これはそのまま二つの属性に適していると言うことだ。」
次は白空が教卓に行って魔力を込めた。
すると、紫色に光りだし、紙では中央部分が光った。
「なんと!これは毒か。面白い。まさか特別な属性の中でも無や物理の次に珍しい付与魔法属性が出るとは、、、。」
カイルが一人で感心しているとカレンが手を上げて言った。
「付与魔法属性とは派生して出来たものですね?それって属性として存在するんですか?」
カイルは我にかえり質問に答えた。
「いや、かなり珍しいが、ある。付与魔法はどんな人間でも扱えるのだが、それに特化しているということは体質に関係している。」
カイルが言うと白空は納得したように頷いた。
「君、毒に耐性を持っているね?若しくは毒を体に吸収しているか。」
白空は笑顔で答えた。
「両方、ですかね。昔々にちょっと色々あって。」
白空はそう言うと席に戻っていった。
それから最後までやり終えると授業が終わった。
最後にカイルは笑顔で言った。
「今年の新人戦はホントに一年が1,2,3とるかもしれんぞ。」
*
時を遡り、剣技科でも魔法属性を調べる授業が始まった。軽い説明をしたあとギャビンがやることになった。
魔力を込めると水晶玉が眩しく光って紙では光模様が眩しく輝いた。
「うむ、属性は光か。」
次はカリーナがやることになった。
魔力を込めると色は変わらず紙が物理のマークに光った。
「おお、物理属性とは珍しい。」
それを見てカリーナがどういう人かを知っている人たちは苦笑いを浮かべた。
ー怪力に物理は、きついなぁ
長門はライバルが一人増えたかもしれないと思った。
次はココが魔力を込めた。
するとピンクに光り、紙ではハート模様が光りだした。
「癒か、連続で、特別な属性が来るとは思わなかったな。」
アンドレアが苦笑して言った。
その後は火だったり水だったりと五大元素が続き恭乃の番がきた。
恭乃が魔力を込めると水晶玉が真っ黒になり、紙では闇模様が光りだした。
「うん、なるほど。」
次は長門が魔力を込めた。
すると、何も変化はなかった。
水晶玉は無色、紙もどこも光りださなかった。
それをみた生徒たちは首を傾げた。だが、アンドレアだけは目を見開いた。
「あ、あの。魔力込め、たはずなんですけど、、、。」
長門の言葉にアンドレアは我にかえり言った。
「あ、ああ。いや、確かに込めている。それは無だ。原始の魔力だ。」
その言葉に教室の中は静まった。数秒、誰も言葉を発することはなかった。恭乃でさえ、予想してなかった顔だ。それならば当の本人は尚更のことだ。
「まさか、この目で無を見ることができるとは思っても見なかった。今、世界で無を扱う者は分かっている限りで、オヒューカス帝国皇帝、リブラ王国代表騎士、日昇国の将軍、他にも部族として原始の部族と呼ばれる者たちだけだ。」
その後長門は席に戻っても心はどこか行っていた。
気づいたらチャイムがなり、最後にアンドレアが笑顔で言った。
「今年の新人戦、お前たちならきっと何かしてくれる。」
それを最後に授業が終わった。
*
3,4時間目は教室と先生が変わり、それは何事もなく過ぎていった。
それから長門と恭乃は学食を食べに食堂へと行っていた。
すると碧、白空と鉢合わせた。
「お、白空と碧ちゃんじゃあねぇか。一緒に飯食おうぜ。」
恭乃が手を上げて言うと二人は快諾して食堂に入っていった。
するとそこにはカレンと紅梅が一緒にご飯を食べていた。
「あ、あの子日昇国の関係者だと思うんですけど。確か、巫紅梅さんです。」
白空が指を指すと恭乃がああ、とした顔で言った。
「あの子が巫か。確かにただ者じゃあないな。」
恭乃はそう言いながら紅梅に近づいていった。
「なぁ、ココいいか?」
恭乃が聞くとカレンはキッと睨んでいるが紅梅は笑顔承諾した。
「おう、お前たちもココにこい。」
三人は苦笑しながら歩いていった。
「えと、巫さんて日昇国の人ですよね?」
白空が身を乗り出して聞いた。紅梅は笑顔で答えた。
「まぁ、一応。空風さんもですよね。あと、東雲さんも。そちらのお二方は?」
紅梅が聞くと恭乃が答えた。
「俺は伊賀恭乃、忍だ。」
「俺は皇長門です。」
カレンはそう聞くと興味なさげな顔から一転長門を睨み付けた。
「あなたが皇?あなたが首席の、ね。」
「えと、知っていたんですか。」
長門が言うとカレンがふんと言いながら答えた。
「知っているわ。私が越えなければいけない人たちの名くらいね。私はあなたに負けない。」
カレンそう長門を睨み付けた。
すると後ろから声を掛けられた。
「やぁ、ここ座ってもいいかな。」
「あ、いいd」
長門が言いながら振り替えるとそこにはウェスタがいた。
「王女さま、何故ここに、、、。」
長門が言うとウェスタは不満気に答えた。
「む、私を王女さまと呼ぶな。それに私は学生だ。食堂くらい来る。」
ウェスタはカレンをチラリと見て続けた。
「いやはや。私も皇を越えなければという信念は同じだ。負けぬぞ。」
カレンはクスッと笑いながら言った。
「私が越える人には王女さまも入ってるわよ。王女さまって以外と面白い人なのね。」
カレンが言うとウェスタは心外な顔をしたが、みなもふふっと笑った。
「私がここに来たのはな。原始の魔力を使うものが現れたと聞いてだ。」
ウェスタが言うと剣技科ではない5人は目を見開いた。
当の長門は苦笑を浮かべ、恭乃は笑いをこらえていた。
「まさか、皇、、、あんたが?」
カレンが聞くと長門はゆっくりと頷いた。
「本当ですか!?凄いなぁ。」
そう白空が言うとウェスタは微笑みながら言った。
「お主だって珍しいではないか。付与魔法属性とはな。私は始めて聞いたぞ。」
「確かにそうね。それに、東雲さんだって二つの魔力属性でしょ?」
「はい、そうみたいですね。」
それを聞いた恭乃は頭を抱えた。
「おいおい、お前らドンだけ怪物何だよ。俺でさえ付与魔法属性なんて聞いたことがないぞ。マニアック過ぎるだろう。」
白空が乾いた笑いをした。
長門も驚いたように言った。
「二つの魔力属性て、俺が聞いたことあるのは、賢者と王様くらいなもんだけど、、、」
「そうさな、二つの魔力属性を持ってるやつは数ある国の猛者たちの中でも特に抜きんでてるやつくらいぞ。」
碧もはは、頬を掻きながら笑った。
すると思い出したように長門が言った。
「あ、そういえばうちのクラスに物理魔法属性の人いましたよ。その子怪力らしいんで、試合では気を付けといた方がいいと思いますよ。」
そう聞くとカレンはああ、と言って聞いた。
「それってカリーナ?」
「知ってるんですか?」
カレンは頷き答えた。
「うん、中等部からの付き合い。確かにあの子は手強いわよ。」
そんな話をしていると、食堂の入り口付近からざわざわと声がした。
「なんだ?」
恭乃が首を傾げ見ていると、人垣から出てきたものを見て絶句した。
出てきたのはとてつもなく大きい肉塊のような人間であった。しかし、恭乃が驚いたのはそれだけではない。その人物から漏れ出るオーラがただ者じゃあなかったのだ。
カレンは心当たりがあったのかポツッと言った。
「ああ、あの人は去年の新人戦優勝者ね。」
「あの人が、、、?」
日昇国から来た四人は驚いたが、この国では有名なのかウェスタも驚きはしなかった。
するとその巨大な人物が長門たちに近づいてきた。
「やぁ、君が首席で無の魔力属性を使う皇長門だね。」
長門はただ頷いただけだった。
カレンはその光景を目を丸めて見ていた。
「ん、自己紹介が遅れた。僕はファーガス・アレクシス。2年A組だ。宜しく頼むよ。今度の大会、楽しみにしている。」
ファーガスはそう言うと、女子たちを連れ、端っこの席に行った。
それを見たカレンは鼻をは鳴らしていった。
「ふん、優勝者の眼鏡に叶ったからと言って調子に乗るんじゃないわよ。」
カレンが言うとウェスタも頷き言った。
「うむ、私も負けてられないな。」
長門以外の人は微笑ましく見ていたが当の長門は疲れきっていた。
紅梅は微笑みながらカレンを咎めた。
「もう、カレンちゃんたらあんまり他人様に強く当たっちゃだめよ?」
「分かってるわよ。」
カレンはムスッと答えた。
それをみた恭乃がおかしそうに言った。
「おかんと反抗期の子供みたいだ。」
それを聞いてカレン以外はみなおかしそうに笑った。
カレンは少しムッとした。
すると長門はまた声を掛けられた。
「あら、賑やかね。」
長門は誰かと思い見るそこにいたのはフロリアだった。
「生徒会長さん、、、?」
「ええ、どうも。フロリア・ローズブレイドと申します。」
フロリアは丁寧にお辞儀をして、上目遣いでウィンクをした。
長門は少し顔を赤らめて聞いた。
「ど、どうしてここに?」
それを見たカレンがジト目で鼻の下伸ばしてんじゃないわよ、と言ったが長門は無視をした。
それを見ておかしそうにフロリアは答えた。
「ふふ、あなたに会いに来たのよ。」
「僕に、、、?」
「ええ、噂の首席、それに無の魔力属性なんて一度でも見てみたいじゃない。それにここには興味深い人がたくさんいるもの。」
フロリアは後半7人を見ながら言うと、フロリアは微笑みながら帰っていった。
「また、あんたか。」
カレンは鼻を鳴らしてきょうしつに戻っていった。
その後各々教室で授業を受け、家に帰った。