7.伯爵令嬢と獣人と大怪盗
沢山のブックマーク、評価ありがとうございます。
感想もいただき、書く励みになります。
皆様の評価に応えられる様にこれからも物語の進行を頑張ります。
この物語は子供を愛でるのが一つのテーマです。
賊達が動かなくなり、その場が静寂に包まれる中、ゆっくりと歩いてくる男に私は警戒します。
アイシャは確か後ろに100以上居ると言っていましたね。
彼がそのリーダーなのでしょう。別の勢力?彼は味方?それとも敵?
情報が足りなさ過ぎますね。
アイシャがまぁまぁと言っていたのは彼の事でしょう。彼の登場でこの場の雰囲気が変わりましたからね。
アイシャは普段通りですが短剣を取り出してますし、アラン様は凄く警戒してます。
その姿を見て男は両手を広げ声にする。
「そう警戒しなさんな。俺は此奴等の仲間ではない。その反応を見るにお前達を助けたのは余計な御世話だったか?」
彼が両手を広げた瞬間、アイシャは私の前に立ち、彼の話が終わると言葉に答えます。
「助けて頂いた事には感謝します。ですがこの賊達よりも貴方と後ろで待機している方々が脅威でした。その所為で警戒をこの賊ではなく貴方達に向けなければならなかったです」
アイシャの言葉を聞いた男はニヤリとする。
「やはりか。目が良いって訳じゃねぇな。何かのスキル持ちか。気配を消した俺達に気付いていたのはお前だけだったようだしな。まぁいい。この森を護っている俺の名はロビンフットだ」
「……ロビンフット?」
アイシャは名前を聞いてから男をジロッと見ます。アラン様よりも背は高く、がっちりした体つきでワイルドな男です。アイシャは見終わると何か納得した様で警戒を解いて短剣をしまう。
「成る程、王都で噂の大怪盗ですか」
ロビンフットは溜息をつき、アイシャの言葉に肩を竦めた。
「さぁ、何の事かな?」
2人はジッと見つめ合います。何の牽制でしょうね?私の疑問にアイシャは気付き口にしてくれます。
「ただ、私は彼を一方的に知っているだけです」
その言葉を聞いて私は例のアレかと納得する。違う可能性もありますのでアイシャに聞きます。
「その情報はここの?それともアイシャの?」
「私のです」
アイシャはすぐに答えます。
となるとやはりロビンフットの事を赤裸々に知っている訳ですね。ご愁傷様です。
例の言葉も無いですし、アイシャが警戒を解いたのなら少なくとも敵では無いはずです。
「お嬢様も噂位なら知っているはずですよ。予告を出して、黒いマントに猫のお面をつけて参上し、狙った獲物は必ず盗み出す大怪盗。王都の貴族や富豪達が最も警戒している大怪盗が彼です」
アイシャの説明を聞くと私もその話しに聞き覚えがあります。
アイシャの言葉を聞いたロビンフッドは、自分の正体を隠す気をなくしたのか八重歯を見せ獰猛な笑みを浮かべながら語り出します。
「全く、首突っ込まなきゃ良かったぜ。バレているのなら隠さなくていいか。あぁ、お前の言う通りだ。俺が狙ったら最後……どんなお宝も盗み出すぜ。今では富豪や貴族の奴等相手に暗躍し、王都を恐怖に陥れ、誰もが俺のもう一つの姿に怯えているその名もーー」
ですがそこまで言われたら私も知っていますわ。そうーー
「貴方が猫仮面様ね!」
「……」
「……」
「……」
ん?何で雰囲気がおかしくなっているのでしょう?
アイシャも微妙そうな表情をしているし、ロビンフットは固まってしまってます。
「あの、王都で悪さをしている貴族からお宝を盗み出し懲らしめている、あの猫仮面様ですよね?」
「お嬢様、その認識で確かにあっています。ですが彼の通り名はシーフキャットですよ。猫仮面では彼が可哀想です」
アイシャが猫仮面様に同情する。失礼な。可愛らしいじゃないですか。
「シーフキャットの話は聞いた事がありますが猫仮面様の話と真逆ではないですか。私が初めて知ったのは子供たちからです。他の方々からも聞きましたが悪事をしている貴族からお宝を盗み出している事しか聞いてませんよ?」
「それは貴族と民では立場が違いますからね。貴族は盗られる側ですから、腹いせに流す情報もある事ない事も増えますよ」
「納得いきませんね。他にも手が付けられず悪さばかりして稼いでいた方が猫仮面様に成敗された話も聞きました。その様なお話を集めて、私が孤児院で正義の味方猫仮面様の話をすると子供たちは大喜びするのです。最近の子供たちの楽しみは猫仮面様の活躍なのですよ?人気なのですよ?」
王都の子供たちの間で猫仮面様の話を知らない子達は居ないでしょう。私が広めたのですからね。
私とアイシャが話を続けていると猫仮面様から声をかけられます。
「すまないが猫仮面様はやめて欲しい」
「猫仮面様がダメでしたら良い方のロビン様とお呼びした方が宜しいでしょうか?」
「……何故良い方なんだ?」
「そこで伸びて居るのが悪い方のロビンです」
ロビンフットは何か言おうとしましたが苦虫を噛み潰した顔をしましたがすぐに何か諦めた様子で言います。
「……猫仮面でいい」
本人から名前を呼ぶ許可を得ました!この様な形で有名人と仲良くなるとは思いませんでしたね。
私達が互いに警戒が無くなった瞬間、アラン様から声がかかります。
「あー、盛り上がってる所悪い。そこのシーフキャットが害が無いのは分かったので俺達はそこの賊達を集めるよ。まだ生きている者もいるようだ。情報を吐かせられるかもしれん」
アラン様達も何とも言えない表情です。どうしたのでしょう。
「アラン様お願いします」
私の言葉にアラン様は頷き、ロビンフットも話し始めました。
「スタン付きの矢を放ったので暫くは目は覚めねぇだろう。紐で縛り付け、一箇所に纏めると良い。俺の仲間も手伝わそう」
既に動いているアラン様の護衛達を見てロビンフットは言います。
「ありがとう。……それにしてもあの大怪盗が猫仮面か。その頑張れな?」
アラン様の言葉にまたもロビンフットは固まります。アラン様も何故同情的なんですか⁉︎
民の間では大人気なんですからね!全くもぅ!
「話が逸れてしまったな。ただ、お前達を助けた理由はそこにいる子供だ」
急にルーリーの事を言われ私はギュッとロビンフットに見せない様に抱きしめる。
「教会の狂信者でもないし、別にその子供を捕るつもりはない。おい、チャコ来てくれ」
ロビンフットがそう言うと成人した女性が現れる。だが、私は言葉を失った。
彼女には耳が付いている。
「察しの通り、オレの仲間は先祖返りした獣人だ。国には住めない者達で集まりこの森で暮らしている。この伸びている賊も近くに居た賊だった。俺達に手を出さなければ何もする気は無かったがお前がその子供を庇ったのを見て気が変わった」
そう言う事だったのですか。アイシャはこの背景も知っているのでしょうね。
「私の名はシュア・グラウザムと言います。宜しければシュアと呼んで下さい」
私の名を聞くとロビンフットは目を見開きます。
「……グラウザムの者だったのか。成る程な。その従者も納得だ」
……グラウザム家はどの様な評判なのでしょう?
「猫仮面様、私達を助けて頂いたお礼がまだでしたね。アイシャ」
私がそう言い出すとロビンフットは待てと言います。
「確かに俺達が助けたがこの従者一人でもあの程度なら乗り越えれただろう?それに俺は金が欲しくて女子供を助けた訳じゃねぇ」
そう言われましても私は引き下がりません。
「助けて頂いたのも事実です。私の気持ちとグラウザム家の名の為に受け取って欲しいですわ」
私が微笑むとロビンフットは頭を掻きながら仕方ねぇと呟き、アイシャからお金を受け取ります。
「なぁ、お前達の向かう方向は英雄の大地だろう?何しに行くんだ?」
「私があの土地の領主になりましたの」
そう答えるとロビンフットは驚きます。
「おいおい、忘れられた地の領主だと?マジかよ。こんな嬢ちゃんを向かわせてどうすんだよ。この従者が強いのは分かるがあの地にいる全てが異常だ。俺達も忘れられた地に住もうと考えた事があるが無理だった。極めつけがドラゴンだ。人ではドラゴンを殺せない。昔からの言い伝えだ。ドラゴンスレイヤーなんて武器もあるらしいが無理だ。過去の帝国の皇帝ならドラゴンを退けた話はあるが倒した訳ではない。それでも行くのか?」
またドラゴンの話です。何度も話に出てきますが怖いだの勝てそうだの曖昧な事しか聞いてません。肝心なお話は聞いた事はありませんね。ドラゴンについて一度アイシャに尋ねてみましょう。
「理由がありまして、そちらへ向かう事になりました。いずれ私の噂を聞く事になるでしょう」
「ワケありか。貴族から流れる噂は大概ロクなモノはねぇ。俺はココで見た事が真実だ。お前が襲われ獣人の子を守った。その事実があればお前が悪だろうと俺はお前を信用はしてやる。俺も賊だからな。賊と言っても義賊をやってるつもりだがな」
そう言ってロビンフットは八重歯を見せます。
「ありがとうございます。獣人を人として扱う姿を見て、私も貴方の事は信用します。また縁があえばお会いしましょう」
「あぁ、お前が死ななければな。あの僻地に子供は辛いと思う。一つ提案なんだが、その獣人の子供を俺達に預けねぇか?俺達は獣人の保護をしている。その子を悪い様にはしねぇ。どうだ?」
私は考えます。初めてルーリーに会った時、連れて行く理由はこの子の安全な為です。獣人であればこの大陸では住みにくいでしょう。ロビンフットの隣の獣人を見ます。綺麗な女性で私と目が合うとニコッと笑います。きっとルーリーも彼等について行った方が幸せかもしれません。
ですが少しの間ですが一緒にお話をして、情が移ったのは仕方ないと思います。
彼等に渡した方が良いと分かっていても離れたくないと心では思っています。
私では決めきれません。ですから、ズルいでしょうがルーリーに話を振ります。これでルーリーから言われれば私も踏ん切りがつきます。
「ルーリー、私はこれから過酷な地に向かいます。ここでルーリーのお仲間と過ごすか、私と一緒に来たいか……ルーリーが決めなさい」
私の言葉にルーリーは迷いを見せますが私と彼等を見て、ルーリーは口を開きます。
「本当に良かったの?」
私は馬車に揺られ尋ねます。
「ルーはシュアと居たい。ダメ?」
「ダメではありません。私は可愛らしいルーリーが居てくれたら嬉しいわ。だけど、ルーリーのお仲間達といた方が幸せだったのではと思うと私は悩んでしまうの」
ルーリーは首を可愛らしくちょこんと傾げます。
「ルーと同じ姿の人居たけどシュアは居ない。シュアの方が安心」
私がルーリーの頭を撫でると目を細め気持ちよさそうに顔がへにゃっとなります。
「そう。なら良かったわ。これからもルーリーの側に居るからね」
ルーリーはうんと子供らしく頷く姿を見て、私もつられて笑います。
これから向かう場所もルーリーやアイシャとなら楽しく過ごせそうです。
ロビンフット
「道理で王都に行くと皆が俺を率先して助けてくれる訳だ」
アイシャ
「猫仮面……。まぁ、そのなりでその二つ名はギャップがあっていいのではないでしょうか?」
ロビンフット
「下手な同情は更に傷つく」
アラン
「……(ニヤリ)」
ロビンフット
「無言でニヤけるのも傷つく」
シュア
「え?可愛らしいじゃないですか?」
ロビンフット
「……もう、そっとしといてくれ」