6.伯爵令嬢と賊と裏切り者
まだ物語の舞台に辿り着いてませんがランキング上位に入っていてビックリしました。
お仕事の合間に書いてますので投稿も感想の返答も遅れてしまい申し訳ありません。
皆様に面白いと思っていただける様に今回、内容は既に決めてプロットも一丁前に書いています。それに自分なりに文章を選んでますが読まれる際、未熟者なので本好き、活字好きの皆様にはご迷惑をおかけします。
少しでも皆様がこの物語を楽しめる様に言葉を選んでますがまだまだ勉強不足な為、不適切な表現や脱字が多々有ると思います。
少しでも少なくなる様に頑張りますので暖かく見守って下さると嬉しいです。
「敵は200近くでしょうかね?周りに70……背後に100以上いますね」
「あらあら、早大な出迎えね」
「たかだか200近くのザコを集められても手ごたえはありませんね。1人だけまぁまぁなのが居ますがドラゴン1体を相手にするよりヌルいですよ」
アイシャは普段見せない獰猛な笑みを浮かべ、うずうずし始める。その姿を見て私は溜息を吐く。
「私が良いって言うまで攻撃しちゃダメよ。まずは交渉から入り状況を探ります」
私の言葉にアイシャはつまらなさそうにする。
外を眺め周りの状況を確認しますが完全に嵌められましたね。アラン様は大丈夫かしら?
「包囲されているのね。窓から見えるのは柄の悪そうな人達ばかりね」
「えぇ、ヒャッハーとか言いそうですね」
「それは大変ね。ルーリーは大丈夫よ。私が守るからね」
「お嬢様!私は守って下さらないのですか⁉︎」
「アイシャは私を守ってくれないの?」
「任せて下さい!私が守り抜いてみせます!!」
……チョロいな。
さて、この状況もこれ位簡単だと良いのだけどね。
そもそも何故こうなったのでしょうかね?
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ルーリーも連れて旅は順調に進みました。
護衛の彼は不服そうでしたがアラン様に怯え何も言わなくなりました。
その旅の中で私の膝に乗せたルーリーとお話して少しこの子の事を知りました。
歳は7つになり、つい最近、住んでいた村から離れ、あの町に辿り着いたそうです。ルーリーの両親が既に亡くなっており孤児として生きていたみたいです。
姿を見られる事に怯えている様で私には分からない辛い事があったのでしょう。アイシャもルーリーについて何も聞かないのでルーリーもアイシャに警戒はしなくなりましたね。
また日が経ち、幾つか町を抜けて、やっと目的地の半分まで行きました。目的地の僻地へ向かう途中には深く広い森があります。
森の中は危険もありますが真っ直ぐに森の中を抜けるのが早いらしく私達は馬車を走らせます。
森を抜けたら小さな町があり、私達はその町で馬車を変える為による必要があります。
森は早朝から入り夜になる前に抜ける予定です。
正直、ずっと馬車の中に居て退屈です。遠くの僻地とは知ってましたがもっと近くだったらこんな思いしないで済みますのにと心の中で思ってしまいます。
王都から1ヶ月はかかる場所にマイホームがあるらしいです。
アイシャからの情報だと私達が向かおうとした村は既に廃墟となっているそうです。代わりに荒野の別の場所に大きな建物があるらしく、私達はそこを目指してます。
そこを私の新しいお家にするそうです。
どんなお家でしょうかね?
大きいのならお城みたいなのでしょうか?
ずっと残っているのなら建物の崩れや防衛には問題ないはずです。
あぁ、妄想が膨らみますね!
私も僻地暮らしが少し楽しみになっています。
私がのほほんと妄想に浸っているとアイシャの雰囲気が急に変わったので私は寝ているルーリーを起こさない様に小声で尋ねます。
「どうしたの?何かありましたか?」
「ルートが違います」
「え?ならば護衛に伝えなきゃいけませんね」
「その必要はありません。ロビンの裏切りです。アラン様も彼の事を警戒していましたし、私もずっとお嬢様の護衛をしていましたが昨夜に何か動いていたのを察知していました。何事も無かったので放置しておきましたが、第三者の仲間への合図か何かだったのでしょうね。この馬車を動かしている時点でお嬢様を人質に取った様なものです。アラン様が居てこれだけ大胆に動くのならここに居る全員を口封じや始末出来る何かがある自信の表れでしょう。さて、どの様な罠でしょうね?」
ふむ、どうやら私だけが気がつかなかった様ですね。この手の争い事は苦手なのです。お父様の用意して戴いた護衛に紛れ込む事は出来ないでしょう。ならば、買収されたと考えるのが妥当ですね。では、誰に?
パッと流しましたが口が悪いのは私の扱いから来たのかと思いましたが違うのかもしれませんね。殿下から断罪されたのを知っていたのも、その誰かから聞いたのでしょうか。もしかしたら要らない事まで吹き込まれていたのかもしれませんね。
平民に情報が出回らないうちに王都から出たのですから。お父様からも依頼内容は娘の護衛で出されたと聞いてますし。情報の入手が早すぎますからね。
しかし、命を狙われるのはいい気がしません。
「殺りますか?これだけ大胆にやったのですからアラン様も口添えして下さると思います」
……そう。ここで事を簡単に終わらせる事も出来ます。アイシャなら可能です。ですが、今後の憂いを断つ為にもここは敢えて罠にかかるのが良いでしょう。
「いえ、もう少し泳がせましょう。ここで終わらせてしまったら背後が分かりません。もう少し情報が欲しいわ」
私の言葉にアイシャは頷きます。
アラン様もルートは把握されていました。ですから、こちらの異常は察知してるはずです。アラン様も警戒していたのなら何かしらの対応を考えているでしょう。
問題は私の荷物を護衛している者達ですね。彼の仲間だがアイシャの言い方なら彼等はグルの可能性は低い。お父様が用意した人材ですが戦闘能力は未知数です。彼等も腕が立つはずですがどの様に動くか分かりません。 ですが自分の命なら自分で守れるでしょう。それに彼の裏切りでも彼もお仲間ならば多少の情はあるでしょう。
さて、何が起こるのでしょうね?
時間はかからず薄暗い森の中で馬車は止まりました。
止まると同時に私の膝で寝ていたルーリーも起きます。キョロキョロとすると、
「悪い人……いっぱい」
何かを察知したルーリーはそう呟くと私に抱きつきます。ルーリーも周りに気が付いた様です。
……えぇ、私だけ何も分からないのですが。私は淑女として生きてきたので戦うより守られる方なのです。
うん、仕方ありませんよね!
自分に言い聞かせる様に慰めます。
「敵は200近くでしょうかね?周りに70……背後に100以上いますね」
「あらあら、早大な出迎えね」
思った以上に待ち伏せの方々が居たようです。大掛かりな罠に私は溜息をつきたくなります。
「たかだか200近くのザコを集められても手ごたえはありませんね。1人だけまぁまぁなのが居ますがドラゴン1体を相手にするよりヌルいですよ」
アイシャは普段見せない獰猛な笑みを浮かべ、うずうずし始める。アイシャがいきいきする数少ない場面です。その姿を見て私は溜息を吐く。
「私が良いって言うまで攻撃しちゃダメよ。まずは交渉から入り状況を探ります」
私の言葉にアイシャはつまらなさそうにこちらを見返しますがしぶしぶ頷きます。
ですが、アイシャがスイッチが入ったら私の言葉でも歯止めが効かないのです。自重しなさいな。
外を眺め周りの状況を確認しますが完全に嵌められましたね。アラン様は大丈夫かしら?
勝手に動かないかしら?
「包囲されているのね。窓から見えるのは柄の悪そうな人達ばかりね」
「えぇ、ヒャッハーとか言いそうですね」
……ヒャッハーって。確かに言いそうですが緊張感ある言葉を選んで欲しいです。
震えるルーリーを抱き寄せ私はルーリーに話します。
「それは大変ね。ルーリーは大丈夫よ。私が守るからね」
私の言葉にいち早く反応したのはアイシャです。
「お嬢様!私は守って下さらないのですか⁉︎」
……私がアイシャに守って貰わないと困るのですけど。死んじゃうんですけど。
「アイシャは私を守ってくれないの?」
私がなるべく怖がった表情を作り嘆くように言うとアイシャはぱあっと明るく笑顔になり胸に手を当てます。
「任せて下さい!私が守り抜いてみせます!!」
……チョロいな。
さて、この状況もこれ位簡単だと良いのだけどね。
「お嬢様よ?気づいてんだろ?今は何もしねぇから全員出てきな。出てきたら互いに距離を取れよ」
やっと私への呼び出しが来ましたね。アイシャと目配せし、表へ出ます。その時、アイシャは小声で呟きます。
「前の70は大した事ないです。背後の者達に気をつけて下さい」
私は馬車から降りて見渡します。割と広い空間ですね。ここだけ木々がありません。待ち伏せには丁度いいでしょう。
70人と言ってましたが見える者達は40人程度でしょうか?残り30人はどこだろうと後ろの木々の上を見てみると弓でこちらを狙ってる者を見つけました。
成る程、木々の間に隠れて狙ってる訳ですね。
私は目の前にいる彼に話します。
「ロビン、これはどういう事かしら?」
私の言葉にロビンは嬉しそうに答えてくれます。
「あぁ、お嬢様はここで死んで貰う。森の中で化け物に襲われたお嬢様御一行は勇敢にも立ち向かうが俺以外は死んでしまう。傷を負った俺は急いで戻り旦那様に依頼の失敗を伝え事を話す。賢明にも戦ったが負けたとな。後で貴族から口添えもして貰えるし、安心して俺の為に死んでくれよお嬢様ぁ」
にたぁ〜と笑うロビンに私は首を傾げます。
「貴方達、冒険者とは依頼を遂行させ、権力に屈しないのが売りではないのかしら?貴方を信用したお父様を裏切るの?それに依頼を失敗した者をお父様が貴方を雇うかしら?」
「何言ってんだ。それは持っている者の言い分だぜ?権力、金、地位、全て持っている貴族様の娘のあんたにはわからねぇだろ?あんたは与えられるのが当たり前だもんな?平民でも俺には強さがある。この強さを使ってどんな手を使ってでも成り上がってやる。そして、手に入れる。賢く生きなきゃな!それによぉ、罪人のあんたを俺が始末してやるんだ。旦那様に感謝される事があっても逆はねぇな。まずは旦那様の所で箔をつけないとな。それにこれが成功出来たら依頼主に会える」
ククッと笑うロビンに私は考える。やはり、誰かの差し金のようですね。
本当に口添えして貰えるのかしら?化け物に襲われた傷跡作るからとか言われ、きっと殺されるでしょうね。
彼にはこれ以上の情報は期待の出来ないでしょう。それにアイシャを抑えるのもこれ以上は無理ですね。後ろにいる賊に話します。
「貴方達のリーダーはここに居る誰かしら?」
私の行動が気に食わなかったのかロビンは私を睨む。
「おい、俺との話し合いがまだだろう?」
「待て!ロビンこれはどういう事だ?」
私と彼の話に第三者が入る。声のする方を見るとお仲間さんだ。それからアラン様の方も確認する。アラン様は注意深く周りを観察している様だ。
「あぁ、リーダー?俺とお嬢様の話中だ。ちょっと待っていな」
「そうじゃない!オレ達仲間だろう?どうして、この様な裏切りをした!」
ロビンはやれやれと腕を上げる。そのポーズにリーダーと呼ばれた男はムッとする。その表情を見たロビンはニヤッとした。
「リーダー、今更だが1つ教えてやるよ。俺が成り上がる為の仲間だ。要するに用済みだ」
そう言いながらロビンは片手を下ろすとヒュンと音が複数なる。
隣で仲間達の悲鳴が上がる。
私は目を瞑る。
「……貴方、クズね」
「互いに利用する為の集まりに何の同情がある?それよりもさっさと終わらせようぜ」
そう言うとロビンの隣に1人の賊がゆっくりと近づく。
「おいおい、ロビンよ。これだけの上玉を味あわないで殺すのは勿体無い。あの男達は殺してもいいがこの女達はオレ達に寄こせ。依頼主もそれが望みだからオレ達みたいなグズに仕事を依頼したんだろ?」
ロビンは舌打ちをして、分かったと言い退がる。
「という事であんたは俺と話がしたかった様だが俺からは何もない。ただ全てを奪うだけだからな。女が5人と男が7人、ガキが1人か。女は生かしておけ!男は殺せ!」
それが合図でアラン様に矢が一斉に撃たれる。
その瞬間、アラン様達の周りに水の壁が出来る。矢は勢いを無くし途中で止まる。
水の壁が破裂するとアラン様の護衛は二手に分かれます。アラン様に2人が付き、他の護衛はロビンの仲間だった2人を庇うように立ちます。
「アイシャよ!こちらに構わずシュア嬢を守れ!」
飛んでくる矢を避け、素早く賊の懐に入り、1人、また1人とアラン様は斬り伏せる。
魔法は普通は詠唱が必要な為、この様な接近戦では向きません。
アラン様は剣術のみで賊と戦ってます。私もすぐにルーリーの元へ行こうとすると目の前にいつの間にかアイシャが立ってます。
「お嬢様、そろそろ良いでしょうか?」
アイシャの手には一本の矢が掴まれてます。
……殺さずと言われたのに私に矢が飛んできてますけど。
アラン様を狙った矢が流れて私に当たりそうだった様で顔を青ざめてしまいます。
アイシャがこちらに来たのでルーリーが1人だけ残されており、私が気づいた時にはそこに賊の1人がルーリーを捕まえマントを剥ぎ取り、マントの下の素顔が現れてしまいます。
「アイシャ!」
アイシャは了解しましたと言葉を残し、ルーリーを捕まえていた賊を瞬時に駆け寄り、賊を言葉の通り吹っ飛ばします。
「ルーリー!」
私も駆け寄りルーリーを抱き締めます。
ルーリーの姿を見た賊の1人が大声を出す。
「お頭!このガキはミミ付きだ!帝国の変態共に高く売れますぜ!」
その言葉に周りは騒めいた。
ルーリーの頭には獣の耳が付いている。形から察するに犬だ。
警戒する様に耳をピコピコと動かしている。
私は更に守る様にルーリーをギュッと抱きしめます。
アイシャは私から許可を得たので凄く嬉しそうに笑みを浮かばせ狙いを定めます。しかし、アイシャは急に無表情に戻す。
アイシャの様子を見て尋ねようとすると目の前で賊達が次々と倒れていきます。
よく見ると背後に矢が刺さってます。
「い、いてぇ、た、助けてくれ」
ロビンも複数の矢が刺さってますが死んでません。悪運が強い様です。
殆どの賊が倒れると森から1人の男が堂々と現れる。
「なぁ、俺も混ぜてくれ」
その男は獰猛に笑う。
※高ぶったまま、目の前のエサをお預けの状態のアイシャ
「……私の出番」