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伯爵令嬢は僻地で子供達と戯れたい!  作者: イブ
序章 繋がれた者たち
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4.孤児と護衛と伯爵令嬢

「待てぇ!!この泥棒が!止まらんかぃ!」



ハァハァと荒い呼吸で走る者は止まらない。止まれと言われて止まる泥棒はいないだろう。


捕まらない一心でひたすら逃げる者は夢中になって走っていた。だから馬車に気がつかずに道に出てしまった。


急に止まった馬車から怒鳴り声が聞こえると街の誰もが思った。この浮浪者は終わったな。追いかけて来た店主も馬車を見て同情する。



「貴様!グラウザム家の行く道を止めるとは死にたい様だな?」



浮浪者は怯え震える。その姿にイラだちを見せた者は浮浪者に剣を抜こうとすると声が掛かる。



「何をしている?」













〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ひゃん⁉︎な、なな何事ですの⁉︎」



数日間ドナドナと馬車の旅に飽きが来てしまった私は急な馬車の停止に反応出来なかったのは仕方ない事でしょう。

アイシャが咄嗟に反応して捕まえなければ私は壁とキスする未来しか無かったですね。危なかったです。

私は何事だろうと首を傾げるとアイシャが動く。



「……私が見てきます」



アイシャが出て行き、私は窓から周りを確認すると街の人々が私の馬車の前を見ていますね。


何かのアクシデントかな?


私も窓から街の人々と同じ方を見ようとすると外の声を拾った。



「お嬢様はその様な事は望まない。貴方が必要以上にグラウザム家の名を使い、貶める事が無い様に」



私はこの言葉を聞いて、外に出る事を決めました。

私が出ると周りの雰囲気も変わるのが分かります。私の今の格好はしっかりとした礼装の格好ですもの。

この騒動の問題になっている者達は前にいたした。

アイシャと馬車の運転をしている護衛とフードを被っていて顔が分からない子供です。



「どうなさいましたか?」



護衛は私の質問に苛立ち気な態度を見せ、何も無いと態度悪く答える。護衛達にも殿下との騒動が伝わっており、アイシャ以外は事実を知らない。この者も私が罪人だと思っての行動だろう。伝えてないのだから責めはしないが私は眉間に少し皺が寄るが抑える。


問題の子を見るとフードを深く被り直し身を竦めた。だが私はその一瞬でとあるモノが見えてしまいました。



……なるほど。そういう事ですね。



私は周りを見渡し1人と目が合いました。男を見続けると目を泳がせたので何か知っていると踏み男に声をかけました。

やはり、露店の店主で店主は品を取られた事を説明。それで追いかけていた時にこの子が馬車に飛び込んでしまったようです。

私はアイシャと目を合わせると袋を取り出して貰う。そこから銀貨を取り出して店主へ渡す。

店主は私の行動にビックリして固まった。固まった店主にニッコリと足りるかしら?と尋ねると多過ぎると受け取るのを断りそうだったので一言伝えます。



「この子の迷惑料ですわ。取っておきなさい」



店主は私の言葉に感謝し、深々と頭を下げ、周りも私達のやり取りを嬉しそうな表情で見守っています。ただ、1人を除いてです。私はそれを気にせずに行動します。


店主の件は片付いたので今度は子供に近寄り、子供と同じ目線になるようにしゃがみ込みお話する。



「貴方はずっとここにいるの?」



私の質問に子供は首を横に振る。

そうだよね。この子の正体を知られたらこの小さな町で生きてないよね。これ位大きくなって町に居る事が珍しいはずだ。



「貴方は行く宛が無いなら私と一緒に来る?貴方が宜しければのお話ですがね?」



警戒心の強い子供になるべく優しく微笑みかける。顔は見えないが私な言葉に迷っている雰囲気が伺える。

見ず知らずの貴族に言われたら戸惑いが確かに勝つでしょうね。

そんな中、護衛が私へ口出しする。



「お嬢様、グラウザム家として、その様な浮浪者を相手にする事はあってはなりません。もっと自覚を持って下さい」



「あら、私ったらそんなに可笑しな事をしたかしら?確かに子供をあの僻地に誘うのは考えようですが先程渡した銀貨分の旅に付き合って貰うのも良いではありませんか?この子に問題があるのなら銀貨分の付き合いで終わり、互いに気に入れば今後も私の従者としてご一緒させてもよろしいでしょう?それに周りも先程のやり取りは好印象のようでしたが私は何の自覚を持てば良いのかしら?」



それにグラウザム家は厳しいが身分には寛容なのです。それならアイシャも身分だけなら不明ですから。

実力ある者を身分で決めてしまうと碌な結果にならないとお父様から常に言われている言葉でもあります。

この護衛の言葉はグラウザム家に仕えたいからの言葉にしか聞こえませんね。



「この罪人め。グラウザム家の名に執着して見っともない。旦那様からお情けを貰った奴が」



この言葉にいち早く反応したのがアイシャだ。何処からともなく取り出した短剣を首筋に当てる。護衛はそれでも話すのを止めない。



「だってそうだろう?なんで殿下から断罪されたあんたを俺達が護衛して運ばなきゃならない。旦那様の依頼だから仕方なくだ。罪人と浮浪者まで乗せて行くなんて俺は嫌だね」



私は溜息しか出ません。アイシャに短剣を納めるように指示を出すと背後から声がします。



「へぇ〜、グラウザム家の護衛ってだけでそんなに偉いのかな?」



「アラン様、見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ございません」



……今回の断罪後から何故か付いてきた貴族です。出発したら途中で護衛をすると言われ断れずに今まで付いてきてくれました。



「いやいや、素晴らしいやり取りを見せて貰ったよ。うん、民を守る貴族の理想像だね」



アラン様は私に微笑み、そして、護衛を見ます。



「ところで君はシュア嬢が罪人って誰が決めた?この話は平民が口に出して良い話じゃ無いよね?それに罪人であればグラウザム家の名を剥奪されるはずだ。あの方ならね。それに領地も与えられ無いだろう?貴族とはややこしい事が多々ある。本当の情報を入手出来なければ貶められる。意味は分かるかな?

たかだか護衛如きがグラウザム家に依頼を受けたってだけで増長されるのも困るんだよね。だから、傲慢な印象を民に与えてしまうんだ。ロビン君、そうは思わないか?ちゃんと君の仕事振りはあの方にちゃんと報告してあげるから安心してね」



アラン様はニコッと目は笑わず護衛に話すから護衛は蒼白にらなりアラン様に謝ります。しかし、アラン様は失笑し言葉にする。



「君は謝る事をしてないのだろう?君は君の言葉を語った。私の言葉で惑わないでほしい。シュア嬢は最後の最後まで自分の正しさを唱え貫き通していた。なら君もそうあるべきだろ?」



……Sだわこの人。

本当に彼が護衛に来てくれたのか私は戸惑いますね。

私の考えを見透かした様に私に話しをする。



「私は自分の目で見たモノしか信じない主義なのですよ。だから、シュア嬢の護衛の間に彼女を見極める予定ですだからね」



アラン様の言葉に私はたじろぎながらもアラン様に話します。



「私はどんな理由でも追放された身です。何故そこまでしてくださるのかしら?」



「私はね、殿下然り、宰相の子息然り、男爵令嬢然りとあの場が異様に感じた。私は恋など興味がない。何故なら、私の領地は愚者では扱えない土地だ。常に隣国と緊迫した中で内政をしている。私がうつつを抜かせば民が死ぬ。独立領なんてそんなものだ。シュア嬢はいつも殿下に気を遣っていたが殿下は邪険に扱う様になり、最後は糾弾した。アレは不自然でしかなかった。ならば私は真実を知りたい。そう思うのは可笑しな事かい?」



私はアラン様の言葉に曖昧に微笑む。



「シュア嬢、君は彼が王になるのを望んでいるようだね。だけど、愚王に仕えたいと思うのは醜悪に染まった豚だけだ。この意味分かるよね?では、私は馬車へ戻るよ」



その言葉を残しアラン様は戻っていった。

アラン様の領地は隣国から独立し、この国の庇護に入り独立領として運営している。

だから、王座につく王次第でアラン様の領地は左右されてしまいます。


優秀な王ではないと殺す……って所でしょう。王族はまだ居ますもの。


アラン様の領地は港があり、貿易も盛んで王国に利益をもたらしているのは確実です。それに彼等の武力は脅威です。王国についてから陛下より賜り物を受け取り更に武威を隣国に見せつけ、互いに気を緩まない場となっています。



……この国は思ったより面倒くさいです。



私は改めて子供へ視線を戻して再度聞きます。



「ねぇ、貴方はここに居たい?それとも私と一緒に来ないかい?大丈夫よ。私は貴方に危害は加えない。私が気に入らないならば安全だと思った場所に貴方を降ろしてあげるわ」



子供は戸惑ってましたが頷きました。私はニッコリと笑うとよろしくねとフードから頭を撫でる。子供はビクっとするけど私は大丈夫だよ、知っていて撫でたのよ。だからついてくる?って聞いたのよと小声で教えるとフードから見える小さなお目々が見開いた。そして、か細い声が聞こえる。



「……ルーリー」



また私は微笑みシュア・グラウザムよと答えた。

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