23.伯爵令嬢と鍛治巫女と双剣使い
遅くなり申し訳ないです。
環境が少し変化して書けなくなってました。また投稿を再開しますので宜しくお願いします!
それから皆様はお気づきだと思いますが1〜4話は起承転結の流れで書いています。5話はその切り替えの為に別の登場人物です。その繰り返しで書いています。
何が言いたいかと言いますと……まだ物語が進んで無くて申し訳ないです><
王子視点が終わると一章は転の部分に入るので話がやっと進みます。
早く次も投稿出来るようにします!
頭を痛そうに摩って正座をしているカイトさんをおいて、玄関では話が進まないからと豪快に笑って話す奥様のアキラさんがこの場の進行役が代わり、私とアイシャは客間に案内されました。
「あんた等も黙ってついてくるように」とアキラさんが睨み付けて言うとドワーフ親子は、はいと二つ返事でそれは先程と別人の如く、素早く大人しく従ってテクテクと私達と供に行きます。
家の中は広く、部屋も幾つもあり、私達はその一つの部屋に案内されました。
部屋の中に入ると広く中心にテーブルとソフィアが置かれていて、周りもバランス良く装飾品が綺麗に並べられ飾られていました。ドワーフと言えば宝石に目が無いと伝承にありましたが今まで見た廊下や部屋には全く見当たらず、質素なイメージです。
部屋を見渡して内装の作りに感心していますとカイトさんの視線に気が付き、不躾になってしまったのではと内心で心配になって、振り向くと予想とは違って嬉しそうにしています。
……ジロジロ見るのは失礼にならず良かったです。
そして、一通り見終えた私はカイトさんと対峙して座ります。私の背後にアイシャが控えてます。
この部屋に入ってから挙動不審と言いますか、そわそわしていたちびっ子ドワーフのリンは邪魔にならないようにとの配慮でアキラさんに連れて行かれたので静かです。その時、リンが顔を引きずらせていたのは気のせいでしょう。
さて、静かと言うか気まずいです。
「……その、交渉前に締まりなくて、すまんな」
申し訳なさそうにカイトさんは頭を深々と下げ謝罪します。
確かに締まりが無くなりましたがリンのおかげで森の民と言う情報を得ましたし、カイトさんのペースに引き込まれずに済みましたので問題ないです。
「いえ、気にしないで下さい。それにしても可愛い娘さんでしたね。帰る前にまたお会いしたい位ですよ」
私がそう微笑むとそうかとホッとするカイトさん。
「ホンマはもっと家の隅々を見てもらってから話に移ろうと思ったんやけどお嬢ちゃんならもう十分やろ?」
長の表情に戻ったカイトさんは試す様に尋ねますので私はしっかり頷きます。
それに伝承と違う本当のドワーフ族の情報がまだ欲しかったのですがそれは仕方がありませんね。
私が話だそうとした瞬間にアイシャに肩をトントンと叩かれます。
振り向くと珍しく険しい表情です。何事かと思い、カイトさんに視線を向けるとカイトさんもまた警戒します。緊張感のある場になりましたが先に口にします。
「どうしたの?何かあるのかしら?」
私の問いにアイシャは頷き、カイトさんにお尋ねしますと話し出します。
「この場に招かざる客がひとりいます。貴方も気付いてない様に見えますがこの部屋に隠れているドワーフは誰の差し金でしょうか?私たちは話を聞かれて困ることはないとは思いますが貴方にとっては気分の良いモノではありませんよね?」
そうアイシャが言葉にすると険しい表情をするカイトさんは立ち上がり、アイシャが向けた視線の先に警戒しながら近づきます。
その瞬間、物陰から人影が慌てて出てきました。
「ちょ、ちょ、ちょっとタンマ⁉︎タンマや!ウチや!ツルギや!おっちゃんが大事な話するんと思わんかったからここに隠れてたんよ。堪忍してな」
隠れているのが完全に見つかったと分かると物陰からドワーフの子供が慌てて出てきました。
ツルギ……先ほど聞いた名前ですね。
先程の方が探していた子供ですね。
ですがアイシャが珍しく警戒するので本当にこちらまで緊張してしまいました。
「何でツルギがここにおんねん。全く……見ての通り今から大事な話があるからさっさと部屋から出るんや」
手を額に当て呆れた表情を浮かべたカイトさんはツルギに言います。
……段々とドワーフ族の雰囲気が掴めてきた気がしますね。
アットホームと言うかそんな感じです。
カイトさんだけと会ってましたら印象もまた違ったのでしょう。
「ちゃうねん!おいちゃんと喧嘩したんは良いけど逃げ先が無かったんでリンに匿ってもらったんや」
しかし、あたふたしているツルギと怒っているカイトさんの姿を見て、何事も無くて良かったと安心しました。
ですがアイシャが何故険しい反応したのでしょう?
「アイシャ、いつもの貴方らしくないわね?どんな時も平然としているのに子供相手にここまで警戒する事は初めて見るわよ」
私が聞くと険しい表情のままアイシャは話します。
「いえ、確かにそのちびっ子には警戒していないのですが右膝辺りに隠し持っているエモノが危険です。この部屋に入った時から強い力と存在感を示して主張してましたので警戒していました。そのエモノが属性持ちの武器で相当なモノだと嫌でも理解させられましたからね。使い手に実力が無くても武器の性能で敗北する事もありますので」
……うん、よく分かりませんね。
武器の話は興味が持てないので頭の中に入ってきません。
アイシャは察したようで言葉を変えます。
「旦那様相手でもその武器があればどんな素人でも当てる事が出来れば致命傷を与える事は容易いかと思われます。そうですね……この世界ではあまり見かけない銃の様なモノと言えばお嬢様でも理解出来ると思います」
……お父様が傷付く姿を想像する事が出来ないのでそれ程凄い武器なんですね。
やっとアイシャの伝えたい事を理解して驚きます。
「なんや!あんた、一瞬でウチが持ってる武器を見抜いたん⁉︎凄いな!」
私とアイシャの会話をカイトさんに怒られながらもツルギは盗み聞きしていたようで会話に入ってきました。
反省していないツルギにまた何かを言おうと目を吊り上げたカイトさんが口を開けましたが先にアイシャは話します。
「アレだけ自己主張されたら気付かない方がおかしいです。属性は火属性ですかね。貴方が持っている武器は人族にとっては過去の遺産……伝説級の武器に相当します。ですから人族以外にも異種族には気をつけるといいです。それにしても作った方は本当に一流の鍛治師だったのでしょうね」
アイシャの話を聞いてカイトさんは驚愕の表情を浮かべてます。
「お前さんがただの付き人では無いと薄々気づいておったがそれ程とはな」
カイトさんはツルギに怒るのを辞めてアイシャに驚きを隠さずに呟きます。
アイシャはカイトさんの呟きにニヤッとします。どうやら褒められたのが嬉しかったみたいですね。
「ドワーフ族は魔力探知が出来ない様ですね?強い武器には力が宿ります。強い武器ほど本来は暗殺には向かないモノです。但し、強い武器を扱いながら武器ごと気配を消して暗殺が出来る者も居ますけどね。ドワーフ族は元々力で捻じ伏せるタイプのようですから、戦いではタフな体力と圧倒的な力で敵を引きつけるスタイルに捻じ伏せる武器を使うのでしょう。しかし、この子供が持っているのは短剣です。短剣は暗殺に向きますがこれは護身用ですね。ドワーフ族の特性から考えての判断です」
アイシャはツルギの取り出した短剣を見て、言葉にします。
カイトさんは複雑そうな表情を浮かべますがツルギは嬉しそうにします。
「その通りや!おいちゃんがウチの為に作ってくれたん。お姉ちゃん余所者なのに物知りやな!武器の事をここまで理解してくれるんなんて凄いな!仲間でも理解出来へん奴等もけっこおんねん」
ツルギは凄い凄いと言葉にして褒めますがアイシャは澄ました顔で答えます。
「私は使い手ですので」
……何でしょう。
アイシャが珍しくかっこいいです。いつものアイシャで無いみたいです。
しかも気取ってニッコリと微笑んでいます。違和感がお仕事してますよ。
普段のアイシャを思い出すと心の中では自賛してそうですね。
「ここに居たんか!外でカイトの家の方に行ったって聞いたんで来てみたら当たりか」
突然の乱入者の声に振り向くと先ほど会った気難しそうなドワーフのゲンさんが立ってました。
……まだ交渉のお話はお預けのようです。
入って来たゲンさんにツルギは不機嫌そうに睨みつけ大声をあげます。
「何で来るん!もうウチはおいちゃん所に帰らんで!今決めたんや!このお姉ちゃん達の所について行くねん!」
突然のツルギの発言に私は目を丸くします。
ツルギの言葉を聞いたカイトさんは我慢の限界が来たようで目を吊り上げて本当に怒鳴ります。
「喧嘩の続きなら他所でやらんかい!リヒト様の客人の前でこれ以上ドワーフ族の醜態晒すのならワシもいい加減本気で怒らなアカンで?」
長の表情に戻ったカイトさんはピシャリと厳しい口調で言いますとゲンさんもツルギもピクリと止まり、2人が不機嫌な表情のまま話は終わります。
交渉の話になるはずがおかしな方向に行ってしまいましたものね。
場の雰囲気がおかしくなったので私は大丈夫ですよと微笑むとカイトさんはまた申し訳なさそうに頭を下げます。
「カイトさん、私は大丈夫ですよ。他者が介入しないと収まらない時もあります。私たちで良ければツルギちゃんの話を少し聞きますよ?私たちについて行くと言葉にしたのも気になります」
ドワーフっ子をお持ち帰り出来るかもしれませんからね!
ツルギに視線を向けるとまだ不機嫌な表情をしてました。そんなツルギにニッコリと微笑むとバツの悪そうにしますが何かを決心した様子で頷き、ゲンさんをまた睨みつけて言葉にします。
「ウチは鍛治巫女やから鉄をカンカンするんが好きや。好きやからこそ世界一の鍛冶職人になるん!その為にウチはな、誰にでも認められる武器を作りたいんや!物語に出てくる魔剣も聖剣も何でも作りたいんや!なのにおいちゃんは普通の剣を作れと言うんや。……違う。ウチはこんな里で埋もれてしまう職人になりたくない!世界に通用する職人になるんや!おいちゃんが作った武器はどれも凄いけど魔剣や聖剣はもっと凄いって聞いたんや!とうちゃんは作るんに失敗したけどな、とうちゃんの理想はウチが継ぐんや!やから、まずはお姉ちゃんについて行って、この世界を見たいんよ!」
私達に可愛らしく身振り手振りを使って気持ちを伝えるツルギの目を見ると本気で考えていると伝わります。
理想を口にする事で目標に近づく一つの手段にもなりますし、努力する糧にもなるので否定せずにそのまま頑張るのも良いと思いますがドワーフ族にとってどう答えて良いものか迷いますね。
ゲンさんはきっと現実的な言葉を選んで使い喧嘩になったのでしょう。
私が言葉にするよりも先にアイシャが口にしました。
「なるほど、意気込みは分かりました。ちびっ子は中々の情熱家ですね。熱意もやる気もあります。理想を口にするのは良い事です。物事とはまず口にしなければ始まりませんからね」
アイシャはニッコリと笑顔を作り言葉にするとツルギはまんべんの笑顔を見せます。しかし、すぐに笑顔を崩さずにアイシャは言葉を続けます。
「ですがそれだけです。仮にちびっ子がお嬢様について来ても無駄な時間を過ごすだけなのでオススメしません。今のちびっ子ではお嬢様について来ても、逆に駄作しか作れなくなるでしょうね。以上で話は終わりです」
アイシャはばっさりと話を切ってしまい、ツルギは笑顔のまま固まってしまいます。
さすがにカイトさんもゲンさんもアイシャの対応に顔が引きずっているのが分かります。
ツルギは固まっていましたがハッとして、アイシャに悲痛な表情で怒鳴るように言います。
「なんでや⁉︎ウチは本気なんやで!なんで外の世界を見ると駄作しか作れなくなるんや!意味が分からへん!」
アイシャはスッと私の背後から移動して、私、ツルギ、ゲンさん、カイトさんに自分の姿を見えるにテーブルの横に移動します。
「良いですか?理想を語るのはもちろん構いませんが目の前の事が分からずに居るのでしたら、ちびっ子の作った物は高が知れています。それにちびっ子の言葉は綺麗事過ぎて面白くありませんね。使い手にヘコヘコして、欲張ってあれもこれもしたいと言葉にして芯がなくブレまくってます。作るにあたって、ちびっ子のやりたい事や心が無いです。それでは世界一どころか一流の職人にすらなれませんよ。私はですね、ちびっ子が持っている武器は大戦時代の遺産かと思いましたがそこに居る眉間ドワーフが作ったのでしょう?平和な世界で戦争をしていた時と同じ、もしくはそれ以上のエモノを作れるのは一流の鍛治師の証拠です。なら眉間ドワーフの側で教わるのが一番だと私は思います」
そう言われるとツルギは一度ゲンさんに視線を向けますが悔しそうにして、またアイシャに話します。
「何でそんな事言うん?ウチは本気なんや。おいちゃんを超える鍛治師になりたいんや。同じ事をしても勝てへん」
ツルギの言葉にアイシャは溜息で答えます。そして、ツルギを手招きをして机を指差します。
「本気だからこそ言うのですよ。カンカンが求めている聖剣も魔剣もその種族が自分達の為に特化させた代物です。それはその種族の創り手が極めた証でもあります」
アイシャはいつもの二本の短剣を指を指した場所に置きます。
すると3人とも顔色を変えて、前のめりになりながらアイシャの短剣を凝視し始めました。
……そんな目の色を変えてアイシャの短剣を見て、急にどうしたんでしょう?
「カンカン、これが貴方の作りたいと言っていた魔剣と聖剣です。ですが、武器の見る目のあるドワーフ族なら直感で理解されたと思いますが一応忠告します。触れない方が良いですよ。貴方達では触れるだけで死にますから」
さらっとアイシャの口から私の知らない真実が語られました。
切れ味が良いからと包丁代わりにしていたあの短剣が物語に出てくる聖剣と魔剣とはビックリです。
そう言えば、確かにいつも私に念を押すように武器は危ないから触れないようにとアイシャの武器だけは触らせて貰えませんでしたが本当に危ないと言う意味だったのでしょう。
「聖剣とは使徒と呼ばれる者達が扱えるように特化しています。天族は永遠に等しい時を生きる種族で生命力が高いのです。ですから、聖剣のその特性は自分の生命力を大きな力に変えます。魔剣は魔族の為の剣です。魔族は魔力が高い種族ですから膨大な魔力を消費して力に変えます。他種族にとって、聖剣は生命力を魔剣は魔力を持って行かれて死に至る欠陥品です。行き過ぎた力には代償がつくものです。貴方達の武器も同じです。その強すぎる力は相手に居場所を知らせてしまいます。それぞれに欠点があるからこそ武器が使い手を選ぶ。カンカンが言うように聖剣も魔剣も常剣もリミット無しに使えたら良いでしょう。ですが、クセがあるから使い熟せる。使いこなせば使い手の実力も上がります。使い手に気にし過ぎては良いものは作れません。カンカンが作りたいモノを作れば、いずれ良いものが生まれるでしょう。しかし、魔剣や聖剣などでは無く、ドワーフ族がもっとも得意とする常剣の属性剣を極めるのも悪くないと思います。私もいまだに属性剣の良いものをまだ握った事がありませんからね」
挑発する様にアイシャはツルギに話すとツルギは不機嫌そうな表情のまま頷きます。
「……お姉ちゃんの言う通りや。うち、全てを求めずきてたわ。魔剣も聖剣にも劣らない剣を作ればいいだけの話やな。まずはおいちゃんの工房でウチがお姉ちゃんにウチの最高傑作の剣を作る。そん時は使ってくれる?」
アイシャはニッコリとして、頷きます。
ツルギもスッキリした表情に変わったので解決ですね。
……ん?聖剣も魔剣も扱えるアイシャって本当に何者かしら?
そして、手元にあった短剣もいつの間にか消えてます。
いつも手品みたいに消えますがどこに消えているのでしょう?
いつも不思議です。
「その時を楽しみにしていますよ。では、これ以上は話がズレてしまいますのでお嬢様との交渉の話し合いを進めてください」
アイシャはそう言い終わると私の背後に戻ります。
いつも通りのアイシャを見て、疑問はどうでも良くなりました。
私がカイトさんもゲンさんに目を向けると険しい表情のまま頷きます。
「カイトよ、ワシもこの交渉の場に参加してもええか?邪魔はせん。それにワシも交渉の場に居た事実があった方があいつ等にも言いくるめやすくなるやろ?」
ゲンさんは眉間に皺を寄せ更に険しい表情で私とアイシャを見つめ、カイトさんへ話します。カイトさんはゲンさんの言葉に少し悩む素振りを見せますが分かったと頷きます。
「どのみち後で議会で話すから構わへんけど、ゲンはええんか?面倒やで?」
「ふむ、文句があるなら武器の整備はもうやらんと言って黙らしたる」
カイトさんの態度を見ているとゲンさんも居た方が私達に都合が良いようですね。
ツルギは素直に部屋の外に出て、ゲンさんも加わっての交渉の話に移ります。
先程の雰囲気とは変わります。
適度な緊張感のある中で私から話し始めます。
簡単な挨拶から始め、今回の本題に入ります。
「私は領主として、この地に来ましたが村が荒廃して人が住める状況ではありませんでした。この地を栄させるには移住者が居て、人の行き来させる村が欲しいと考えています。その話をリヒト様が聞いて下さり、腕の良いドワーフの方々を紹介して頂きました。ここまでがお互い知っている内容です。私がドワーフの方々に依頼するのは民の住居です。規模はドワーフ族の出来る範囲で大丈夫です。出す報酬は人族が街で建てる家の相場の2倍辺りで支払いは価値のある宝石でいかがでしょうか?」
私がそう話すとカイトさんはふむと少し不満そうに目を瞑ります。
「人族が作る相場の2倍がお嬢ちゃんが考えるワシ達の仕事内容か。人族の建てる家の情報が分からんが一応聞いておくが倍の価値があると判断したんか?」
私はカイトさんの言葉に横に振ります。
相場の2倍でも貴族の住む家はその何十倍です。
話しはここからです。
「ドワーフの里を少し拝見しましたが人族が作る街の技術を超えています。人族の貴族の住む家は更にお金はかかってます。私は民が安く住める最低限度の住居をお願いしたいのです。その最低限度でも私の予想を上回る家を作って下さるでしょう。ですから2倍が妥当だと考えました。それにちゃんとドワーフ族が作る家なら2倍ではなくて、更にその何倍にしても私達に十分な利益があると思います。それと報酬なら幾らでもドワーフ族の方々の望み通りのモノを用意出来ます。この部屋が埋まる程の財は持っていますので」
私がニッコリと告げるとカイトさんはふむと呟き、目を合わせます。
「なるほどな、嘘では無さそうやな。ドワーフ族の長として、この条件でええで。幾らでも出せるし、作った後からの請求も出来て、お嬢ちゃんの見立て次第では追加も可能なんやな?しかし、ワシ達が作るのはお嬢ちゃんの様な上位の者ではなく、お嬢ちゃんを慕う者やな。やから、その者達に合わせた住居を作って欲しいんやな?」
私は頷きます。
そして、ここからが勝負です。
「ですが現物の報酬だけの繋がりにしたくないと思っています。ここからが本題です。追加の報酬は金品とは別に私達の情報を提供します。あなた方がリヒト様から授かった情報で作りたいと思っている物の資料と原理を伝えると言うのはどうでしょうか?それがあなた方ドワーフ族にとって一番の望み通りの報酬でしょう?」
作る事に情熱を持つドワーフ族なら作れない物の作り方は喉から手が出る程欲しいはずです。
リヒト様の情報から考えて創り出している彼らに自分の理解出来ない事を答えるで私達の利用価値を高めます。
そして、今後も彼等に作り方の情報を少しずつ出してこの付き合いが互いに利益を得る関係だと分かって貰えれば目標達成です。
そう話すとカイトさんは目を見開きます。
「そう来たか!なら、そこの付き人をしばらくこの里に居てもらっても構わへんか?そしたら、人族の相場でも構わん!」
アイシャを置いて行く?
ガーネが居るけどアイシャが居ない生活は考えた事が無いわ。
「それは無理です。アイシャは私のモノですから私の側から離しません」
カイトさんの言葉に即座に反応してしまった私はしまったと振り向くと先ほどと別人のようにアイシャが顔を赤らめて緩みきってます。
「朝から晩まで勿論お布団の中でもお嬢様の側からもう離れませんよ!」
握りこぶしを作って宣言するアイシャに私はそう言う意味では無いと話しますがアイシャはクネクネして、聞く耳を持ちません。
「……2人はそう言う関係じゃったのか?」
「違います!」
即座に答えますがカイトさんとゲンさんは私達を見て微笑む姿を見て、もう一度言わせてもらいます。
「従者と主の関係でその様な関係ではありません!」
大事な事なので二回言いましたからね!
ツルギ
「あんなー!ウチ凄い出会いしたん!」
リン
「そうなんやー、へー、それでどうしたん?オッちゃん来たのにご機嫌やな?あの部屋の中で何話してんやろうな?」
ツルギ
「普通に流さんといて!それでな、聖剣と魔剣見たんよ!本物や!」
リン
「本間なん⁉︎メッチャ凄いやん!ウチも見たい!」
ツルギ
「あのお姉ちゃんなら多分、見せ……そういや、ウチの名前ツルギなのに途中からカンカンって呼ばれていたのツッコミ忘れた⁉︎」
リン
「え⁉︎多分なんや!ちょっ⁉︎ツルギどこ行くん⁉︎」
 




