21.伯爵令嬢と神竜と土の民
お仕事のお休みが取れないので休み取れた時に1話から少しずつ直していきます。
『……ほぅ、ゴ○ラとは懐かしい言葉だ。その名前を知っているのなら本当に世界が複数あると知る者か。若きドラゴンが懐くわけだな』
……しゃ、喋りました。
羽が沢山ある大きいのが口を動かして喋りましたよ!
この堅い感じの喋り方は古代語です。人族は神に言葉を捧げる時や魔法力を高める時に使います。
「異世界のドラゴンとなるとゴ○ラを知っているモノなんですね。私、このドラゴンとは仲良く出来そうです」
なんとアイシャが珍しくドラゴンに対して好意を表してます。
『ふむ、知っているのは我だけだ。我は少しだが人であった記憶を持ち合わせている。もう何万年と前の記憶だ』
そうですかと笑顔のアイシャと壮大な話をするドラゴンのやり取りに私は戸惑いを隠せずに会話を中断させます。
「申し訳ありません。私達が何故お呼ばれされたのか先にお聞きしてもよろしいでしょうか?」
そう尋ねると大きなドラゴンはふむと一言呟き話しだします。
『若きドラゴンが竜の契りを交わしたと申したのが事の発端だ。竜の契りを交わした例は女神が地上に居た時代まで遡る。我々の力は強大だ。契りを交わした人間が悪いように扱う可能性もある。その確認の為に来てもらった』
竜の契り?
ガーネとその様な事をした記憶がありませんね。
となると私が寝ている間に何かあったのでしょう。
起きた時の安心感やガーネに対しての絶対的な信用は契りが関係しているかもしれません。
「契りを交わした記憶はありませんがガーネに対して言葉では説明出来ない信頼があります。それは竜の契りを交わしたからですね。それを知らずに今日まで過ごしていました。ですがどうしましょう?自分が悪さをしないと言い切る自信はありません」
悪さなんてしないですが状況や立場では私は悪者になってしまう事もあります。
正直に伝えた方が良いと本能が訴えてますので指示に従います。
『話は聞いている。主は若きドラゴンを助けたのだろう?その話を聞いて、何事も無ければ悪さはしないだろうと我々も想像はついてはいる。それに会って分かったが主は太陽神の加護も持っている。その加護が消えぬ限りは大丈夫だ。ドラゴンと契りを結んだ者への恩恵は服従と力の付与だ。悪用した場合は我は若きドラゴンと主を処分しなくてはならぬ。そのような事が無いように願いたい。忠告だ』
ぞくっと背筋に寒気が襲います。私がコクコクと頷くとドラゴンの雰囲気が和らぐのを感じます。
『しかし、主達は何故この地を訪れた?人がこの地に住んでいたのは何百年もの前の話だ。人の力が弱まり、住む場所を移動したはずではなかったか?』
私は頷き、ドラゴンに国の事情を話しても問題無いと判断して問いに答えます。
「確かにその通りです。私の住む国はこの領地を維持できずにこの地から去りました。ですが、この度は私がこの地を与えられました。今後とも隣人として宜しくお願いします」
ここは一つ仲良くしておいて損はないでしょう。
私は敬意を込めて深々と頭を下げます。
『そうか。若き娘が領主としてこの地に来るとは何かしらの事情があるのだろう。主の事情は知らぬが何かあったら我を頼ると良い。主達には懐かしいモノを思い出させて貰った。今後も良き付き合いが出来る事を願う。それと我の事は気軽にレヒトと呼んで良いぞ』
気軽に呼べません!
本能が無礼を働いてはダメと警告してます。
しかし、レヒト様の言葉に気遣いを感じ、ちょっと嬉しく感じます。
身体が大きくて怖かったですが話すと怖さが無くなってきました。
「はい、レヒト様のご厚意感謝します。まずはこの地に人が足を運べる様に村づくりから考えていますので出来上がりましたら初めに是非レヒト様をご招待させて下さい」
私も少し余裕が出来ましたのでスラスラと話します。
私の言葉にレヒト様はふむと一言置いて大きな顔が近づいてきました。
『村を造るのか。若きドラゴンから主達は少数と聞いた。造るアテはあるのか?』
帝国から人を呼ぶ方法で考えていましたのでアテと聞かれると困りますね。
「今はありません。実は交渉次第です。何も無い所から造るのは至難の事です。ですが、せっかくこの地を授かりましたので私の領地として繁栄させたいと思っております」
初めの交渉は破綻する可能性の方が高いです。ですが失敗しても交渉する者は1人だけではありませんので問題ありません。
向こうの状況を知る事が大事なのですから。
レヒト様から聞かれて私の考えを再認識します。
『ふむ。ならば、我が良き職人を紹介しようぞ。村と言わずに街を建造するが良い。この世界の人族より技術が高く職人達の集う民だ』
……え?
レヒト様に聞かれてこれからの事を頭の中でグルグルと考えてましたので聞き間違いでしょうか?
「人族ではない職人をですか?」
私は恐る恐る尋ねます。
『ふむ、土の民だ。彼等の技や技術はこの世界随一である。街を造るのなら我が仲介に入ろう。土の民は我の庇護下にあるのですぐに呼んでやろう。どうする?』
土の民と呼ばれた種族の名前も想像つきます。私の想像通りであれば、レヒト様の提案は魅力的です。何も断る理由がありません。
「お願い出来るのなら嬉しいです。しかし、私の知る土の民は人族と関わりを絶った種族のはずですが大丈夫でしょうか?」
しかし、伝承でしか知らない種族です。女神がいた時代から情報は途絶えています。
『人族から関わりを絶ったようなものだ。それに時は流れている。昔の事など土の民はその様な些細な事は気にしない。クリムよ、土の民の長老へ連絡を頼む』
右側のゴ○ラに似たドラゴンが頷き、スッと抜足でその場を離れて、地面を鳴らしながら去って行く。
「お嬢様、予想外の展開ですね。もう帝国に行かなくても良いですね」
アイシャはドラゴンの去っていく姿を見つめながら口にします。
しかし、私も見送りながら首を横に振ります。
「それは違うわ。街が造り終わったら住む人々を呼ばなければならないわよ。ならね、帝国とは必ず接触が必要になる。交渉せずに街を得ただけで根本的な所は解決してないわ」
街が帝国の手を借りずに造れるのは貸しを作らずに済みましたが次の問題が出てきます。
それに住む場所の維持や活用は王国からは厳しいです。
近い帝国を利用しなくてはなりません。
また色々と考え無ければなりませんね。
ですが、まずは土の民との交渉が先です。来るのが楽しみです。
そう言えば、何故ガーネは他のドラゴンに襲われていたのでしょう?
振り向いてガーネを見るとぐるっと機嫌良く唸ります。
そして、またレヒト様を見ます。
レヒト様の会話や雰囲気を察するにガーネは悪さをしてないはずです。
この際、聞いてみます。
「レヒト様、私がガーネと出会ったのは他のドラゴンに襲われた時です。何があったのか聞いても宜しいですか?」
そう言うと残っているドラゴンがレヒト様の方を見るとレヒト様も重く溜息を吐き、ふむと唸ります。
……聞いてはダメだったかもしれません。
『ドラゴンは強いモノがモテるのだ。そして、この若きドラゴンの力は上位竜にも勝ってな。故に数多くのメスのドラゴンから寵愛を一人占めしていたのだが若きドラゴンは誰にも靡かずにいたのだ。それで嫉みを持ったオスのドラゴンが三体で襲ったそうだ』
……。
どの種族でも似たり寄ったりのようです。
そして、ドラゴンとも距離感が近くなった気がします。
「……どの世界も色男の末路は同じなんですね」
アイシャの言葉を最後に私達はただクリムと呼ばれたドラゴンの帰りを待ち続けました。
リヒト様と待ち続け30分もしないうちにクリムと呼ばれたドラゴンが戻って来ました。
そして、そっと両手を地面に近づけると誰かが飛び降りるのが見えます。
頭にグルグルと布を巻いているのが見えます。。小さな見かけですが老人に見えヒゲも伸ばしっぱなしです。。
眉間にシワの寄った顔付きは頑固者の職人のイメージです。
近づいて来て私の前に立つと険しい顔付きのまま、ジロッと見られます。
そして、ニカッと笑いました。
「ワシがドワーフ族の長やってるカイトっちゅうもんや。よろしゅうな!お嬢ちゃんはこの地に来た人族の長なんやろ?お互い長同士仲良くしような!」
……予想以上にフレンドリーでした。
アイシャ
「全く手羽先がモテモテだったと聞いてからムカムカしますね」
レヒト
「まな板の民よ。そう言ってやるな」
アイシャ
「……ピキッ」
レヒト
「急に笑顔を貼り付けてどうしたのだ?」
アイシャ
「ふふっ、私の強さがどこまで通じるか試すのも悪くないですね。ふふ」
レヒト
「……何が怒らす原因となったのか分からぬがすまない。若きドラゴンから主はまな板の民出身だと聞いたものでな」
アイシャ
「前回、水色を仕留めましたが次は赤色を仕留めるのも悪くないですね!」
ガーネ
「グルルッ⁉︎」
シュア
「……遊ぶのはほどほどにね」
 




