表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伯爵令嬢は僻地で子供達と戯れたい!  作者: イブ
1章 ドラゴンを従える伯爵令嬢
18/26

16.伯爵令嬢とドラゴンの戦い

真っ赤に燃える様な鱗を纏ったドラゴンと目が合いましたがドラゴンはすぐに別の方向を向きます。



……た、助かりました。



まだ何が起こるか分からないので私はドラゴンを警戒しながら辺りを見渡します。

潰れた岩蛇と丸焦げの猪が大きくてその前がどうなっているか分かりませんが辺りは木々がない空間が広がってます。近くに湖もあります。

そして、ドラゴンは木々の間から顔を出している状態です。しかし、ドラゴンは動きません。

ドラゴンを良く見ると怪我をしているのが分かります。

真っ赤な鱗で気づかなかったのですが身体は血だらけで羽も破けています。


……これは瀕死の状態では?


落ち着いた今だからドラゴンの息が荒いのが死にかけているからと理解出来ます。


先程、アイシャが言っていた3匹のドラゴンが襲っていてヤられたドラゴンでしょうか?

ドラゴンは強いと聞きましたがドラゴン同士の戦いなら負けた方は死にかけますよね。

弱っているのなら逃げられるチャンスです。

私はゆっくり岩蛇の上を登りドラゴンから離れようと動いた瞬間、思わず息を呑みました。


木々から沢山のモンスター達がこちらを凝視しています。

岩蛇の上から四方を良く見渡したら木々の間にはモンスターが集まっています。まるでドラゴンを囲む様にです。そして、必然的に私も囲まれた状態と言う訳ですね。


……ふむ、逃げ出せそうにありませんね。


また後ろでごうっと大きな音が聞こえます。

振り向くと猪の魔獣が燃え上がってます。猪の魔獣は悲鳴をあげながら、すぐに燃えて身体も何も残さずに消えてしまいました。

焼滅してしまう程の威力のある炎を使ったのは瀕死のドラゴンです。

ドラゴンの周りを見たら焦げが沢山広がっています。


まさか瀕死のドラゴンに沢山のモンスターが群がっているのでしょうか?

私が見たモンスターの大群はドラゴンの死を待っている。

それなら納得いきます。

猪の魔獣は気性が荒いので待てずに襲いにかかって殺された。

あの焦げている場所が物語っています。



さて、どうしましょう。

マントの効果で私は気づかれにくいだけで沢山集まったモンスターを横切る事が出来るかと言われたら無理ですね。

ぐったりしているドラゴンが死んだら私もこの状況では生き残れ無いでしょう。


アイシャは戦闘中でしょうから自力でこの状況を打破しなければなりません。この状況でアイシャを待って居るだけでは絶対に死んでしまいます。


モンスターに踏み潰されるかドラゴンに焼滅させられるかですね。どちらも選びたくありませんね。


生きたいのなら、この状況の突破口を考えなければなりません。

ですが、何も浮かばないまま時間が過ぎていきます。

するとドラゴンがバタンと大きな音を立てて伏せました。木々の間から沢山のモンスターが近づいてきます。私は急いで岩蛇から降りてドラゴンに近づきます。


大きな猿の魔獣がアンバランスな大きな手で更に大きな岩蛇を掴み森の中へ投げつけました。

私には気づいていないのでしょうがすぐ近くまでモンスターの大群が迫ってきました。


アイシャの言う通り人は最弱です。強い者がついていないと死んでしまいます。


後ろでドラゴンが小さく吼えると猿の魔獣達はまた退散して木々の間に隠れました。


……何とか助かりました。

しかし、あれだけの量のモンスター達がドラゴンに近づいて来たら、確実に私は必ず踏み潰されしまいますね。

やはり、ドラゴンを狙ってます。ドラゴンと共に死を待つかです。


……いや、確かドラゴンは知能は高いとアイシャは言ってました。

モンスターとはコミュニケーションはとれる自信は無いですがドラゴンとならとれるのでは無いでしょうか?


私は一呼吸おいてドラゴンに近づきますます。

弱っている為か私が近づいても反応が無いです。それともさっき目が合ったのは気のせい?


しかし、5メートルに近づいた時、ドラゴンは目を開け、口を大きく開けて唸ります。


やはり、私のマントの効果はドラゴンには通じなかったようです。ドラゴンはしっかりと私を認識しています。

しかし、私にも威嚇する姿を見て、何故か私は苛立ちを覚えました。


ドラゴンは最強なのでしょう?


なのに最弱な人間の私にまで警戒するのはそれ程、この現状に怯えているからでしょう。

そう考えるとドラゴンに対する恐怖は無くなり、私は更に距離を縮めます。

そして、ドラゴンと距離は1メートルもありません。

これでドラゴンに攻撃されたら私は死にます。

でもドラゴンはただ唸るだけです。


私が手を翳すとドラゴンは小さく吼えます。



「あなた達ドラゴンは賢いのでしょう?バカなの?死ぬの?」



私はそう言うと唸るのを止めました。


……言葉が通じましたね。


私はドラゴンに向けてハイヒールをかけます。



ずっと無力な自分に何が出来るかを考えていました。私にはお父様から受け継いだ炎属性があります。ですが、私よりも強かった護衛たちも私を守る為に死んでしまいました。あの日、自分が無力で弱いと理解させられました。だから、力を付けたい私は願った。

だけど、武力を高めた所で私は自分を守ってくれる護衛よりも強くはない。この先、鍛えれば強くなる可能性はありますが私が求めるものではありません。


アイシャが右腕を再生させた治癒魔法に惹かれました。


アイシャは確かに右腕を失いました。それを再生させる程の力は私が求める力でした。


あの日から欠かさずに私は治癒魔法に魅入って力をつけました。そして、今回ソール教を破門された事によって、属性神アポロ様へ魔力を奉納した私はすぐに加護を得ました。ですから、力は大幅に増しています。


時間はかかりますがドラゴンを治癒させる事は出来ます。


私は両手をドラゴンに向けて10分は治癒魔法をかけ続けました。


羽も破れていたのが元どおりになります。ドラゴンの自己再生能力の凄さも加わり早い段階で回復しました。


するとドラゴンは大きな咆哮を出します。私はびっくりして耳を塞ぎます。


周りのモンスター達も一斉に逃げ出しました。


びっくりしましたがモンスターがいなくなった事に私は安堵します。だけど、急にドラゴンの顔が目の前に迫ってきて固まってしまいました。



そう言えば、勢いで私はドラゴンを助けちゃったんだ。



元気になったドラゴンに私は目を瞑ります。しかし、何も起こりません。


恐る恐る目を開けると目の前でドラゴンは私を見つめています。するとざらりとした舌で私の頬を舐めます。


……これはどういう事でしょう?



「もう大丈夫よ、さっきは失礼な事を言ってゴメンなさいね」



そう言うとドラゴンは小さく短く唸ります。

一応、返答なのかな?

ドラゴンは私の隣に丸くなりまったりし始めました。



「どうしたの?私なら大丈夫よ。貴方も帰りなさい」



寧ろ帰って下さい。

言葉は通じているみたいだけど動きませんね。



「私と居たいの?」



そう尋ねるとグルルと唸り、私の頬をペロッとまた舐めます。


助けたら懐かれちゃったのかな?


疲れた私はそのままドラゴンに体を預けると温かいドラゴンの身体に安心を覚えます。

ドラゴンの身体を撫でていると眠気がやってきました。

これは魔力切れのようです。

私は意識が遠のいていきました。



















……。

………………。

…………………………。



「ガルゥゥゥッ!!」



大きく唸る声で目が覚めます。



「お嬢様!お嬢様!大丈夫ですか!このピリ辛手羽め!私のお嬢様を人質にして小賢しい!」



警戒しているドラゴンと攻撃態勢のアイシャが居ます。


……状況を把握しました。



「アイシャ、待ちなさい。私なら大丈夫よ」



私がそう言うとアイシャはキョトンとします。



「……どう言う状況なのでしょう?」



流石にアイシャも戸惑いを隠せないようです。

私がドラゴンを撫でるとドラゴンは小さく嬉しそうに唸ります。

私が寝ている間、私を守ってくれていたのね。

私は思わず笑みを浮かべます。



「ねぇアイシャ。このドラゴンを飼ってもいい?」



私の言葉を聞いたアイシャが可笑しな声を出して唖然とします。アイシャが唖然とする姿を初めて見た気がします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ