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伯爵令嬢は僻地で子供達と戯れたい!  作者: イブ
序章 繋がれた者たち
10/26

10.犬っ子と令嬢 ~孤児は勝手に救われる~

ルーリーの心情です!

お母さん、どうして……



お父さん、どうして……



自分で壊さなきゃならない日がくるの?



るーが求めて伸ばした手は宙で空振り、何も掴めない。



どんなに望んでも壊れたモノは戻ってこないよ。



るーは何も悪い事してないよ?



誰に伝えればいいの?



ねぇ、誰か助けてよ。



ねぇ、胸が苦しいよ。



夢なら覚め無いかな……


















あの日から、るーの全てが変わった。

初めに気付いたのはお母さんだった。

るーの頭やお尻に尻尾や耳が現れたその日、全てが壊れた。


お父さんも、るーを見て、絶対に外に出ちゃダメだって言って、身体を隠す服を着ました。


小さな村だから、知られたら私の姿はすぐに広がるから。


夜になるとお母さんとお父さんは怒って喧嘩して、私は怖くて隠れるの。


怒っているのは、るーの所為?


るーは何も知りたくない。



『アレは俺の子じゃない。お前が他の男と作ったんだろ!』



『……あんたの子なんか産まなきゃ良かったわ!』



……聞きたく無いのに新しいお耳から聞こえてくる。



ねぇ、るーは要らない子なの?


そんな眼で見ないでよ。


ずっとずっと胸が苦しいのが止まらないよ。


もう涙も出てこないの。


胸の苦しみもこのお耳も尻尾もどうしたら治るの?


またお母さんとお父さんと仲良く暮らしたいよ。


るーが望んだらダメなのかな?














1日1日が過ぎると、更に壊れていくの。


私が寝ていた時、声が聞こえた。



『こんな事になるなら産まなきゃ良かった』



目を覚ますとるーの前に赤いナイフを持ったお母さんが立っていた。


私が産まれてこなかったらこんな事にならなかったの?


ねぇ、お母さん。私はお母さんの事、大好きだよ。



『るーなんか……大嫌いよ』



なら、なんで悲しそうなの?

なんで涙を流しているの?



『さっさと出て行ってよ。化け物』


お母さんは、るーをお家から追い出しました。

外に出ると村長が居ました。


大変だったねと言って、るーを連れて行きます。


るーのお耳と尻尾を見ても何も言わない。


もう大丈夫だよって言うの。

るーを助けてくれるのかな?


村長がるーのお耳と尻尾は悪い事になるから隠さなきゃダメって教えて貰ったの。

ソール様に逆らった者と同じ姿なんだって。


だから、お母さんもお父さんも怒っていたんだ。


村長が大きな町で治してくれるから行こうって言うの。

うんと頷いて、るーは村長の家族について行った。


人に見つかったらダメだからってお部屋を用意して貰ったの。


村長達は良い人だね。


だけど、夜になっていつもの声が聞こえた。



『まさか耳付きだったとはね。良い金になる』



『教会に知られない様に貴族に売れば一生楽して暮らせるね』



『あの母親もバカだな。自分の夫を殺して耳付きのガキを助けるなんてな』



ああぁぁあ、もう聞きたく無い!

村長は、るーに嘘ついていた。

るーは村長達に黙って村へ戻った。

お母さんに会って謝るんだ。




だけど、そこにあったのは無くなったお家と動かなくなったお母さんとお父さん。



『聞いた?ルーリーって耳付きだったらしいよ』



『ふん、こいつらも耳付きの可能性があるんだろう?早く燃やせ』



『さっさと村長が連れ出してくれて良かったよ』



『耳付きが近くに居たなんて後で教会に行くわよ。穢れを祓うのよ』



……お母さん、ごめんなさい。


るーはお母さんとお父さんが燃やされてるのを隠れてただ見続けた。


るーは産まれてはいけない子なの?

なら神様。どうして、るーをお母さんと合わせてくれたの?


もう分からないよ。


ここには居たくない。







ずっと歩いて、知らない町に来た。


るーは悪い子なんでしょう?

なら悪い事をしても悪い子なんだから良いよね?

御飯を取ったりして、お腹を満たしていた。

お耳や尻尾を知られると酷い事される。

るーは必死に盗んで逃げた。


食べる時以外は安全な場所を見つけて眠り続けた。


寝ていたらまた優しかったお母さんとお父さんに逢えるから。












るーの悪い夢はまだ覚めないの。


盗んだリンゴを追いかけて来たおじさんから逃げようとしたら大きな道路に出ちゃったの。


目の前に貴族の馬車がある。


本当なら、るーは貴族に売られるはずだったの。


大きなおじさんが怒鳴って、るーに剣を向けるの。


お姉さんが出て来たの。お姉さんが言うとおじさんは剣をしまった。


すぐにまた違うお姉さんが出てきたの。るーでも分かったの。

この人が貴族だって。

凄く綺麗でお話で聞くお姫様みたい。

そのお姉さんが、るーの為にお金を払ってくれたの。


お姉さんは、るーを見ると笑顔を向けてくれたの。

そして、一緒に付いてくるって聞いてきたの。

誰も信用出来ないけど、他の貴族に売られるよりこのお姉さんの方が良い。



るーはお姉さんについて行く事にした。

お姉さんは、るーの秘密を気づいていたみたい。

でも、お姉さんは誰にも言わなかった。

それにお姉さんは優しく頭を撫でてくれるの。お母さんと同じだ。安心して、眠くなる。



『悪意の声とはまた珍しいスキルですね。お嬢様の害にはならなければ、消えて頂く必要はありませんね』



またお耳から聞こえた声。

声の人を見るとシュアと一緒にいるお姉さんが、るーを見おろしている。……怖い。

この眼は、あの時の眼だ。


るーが変わった日、お母さんもお父さんも変わった。

村長も周りも皆が変わった。

……皆と同じ眼だ。


人を人として見ない眼だ。


だけど、このお姉さんはシュア以外、皆を同じ眼で見ている。


シュアが居たらこのお姉さんは平気。


森の中で悪い人が沢山いたの。

沢山の聞きたくない声がいっぱいいっぱい聞こえるの。

シュアがぎゅっと抱き締めてくれるから安心。


悪い人に襲われそうになったらシュアは助けてくれた。

このお耳と尻尾があるのに。

シュアはどうして、るーを助けてくれるの?


るーと同じ人が沢山いた。

同じお耳と尻尾がある。

形は違うけど分かるの。仲間って。



『可哀想に……小さいのに獣人化してしまったのね。人に襲わてないといいけど』



『あの貴族が小さい子を買い取ったのかしら?やっぱり人は嫌いよ』



沢山の声がまた聞こえるの。

大きなおじさんからは何も聞こえないけど、るーと同じ人の声が聞こえる。


シュアは何もしてないよ?

なのに何で悪く言うの?

おじさんが同じ人がいるから付いてくると言ってきたけどシュアの方が良い。


シュアとまた一緒だよ。


ねぇ、お耳と尻尾があると人じゃなくなるの?


るーとシュアは同じ人じゃないの?


誰も信用出来ないよ。
















るーがお母さんに会っている時にシュアの新しいお家が出来たの。

知らない人も増え……人?

声が聞こえない。

シュアは大丈夫よと頭を撫でてくれた。

シュアが言うのなら人じゃなくても大丈夫。


シュアが寝る場所を用意してくれたの。暖かくてもふもふして気持ち。これなら今日もすぐにお母さんに逢えるね。


お母さんに逢おうとしていたら、急に声が聞こえたの。

分からない。分からないけど聞かなきゃいけない気がしたの。

知らない場所を声のする方へ行く。そして、声が聞こえる所についた。



『お嬢様、これ以上はあの子供を側に置く事をオススメしません』



『お嬢様は不利な立ち位置です。ソール教を破門されましたが獣人を囲っていると知られたら罪が無かろうとお嬢様は教会から異端視されますよ!』



……分かっていたの。るーには初めからこの世界に居場所がないの。

るーの存在が悪いから仕方ないの。

もう、こんな声ばかり聞きなくないよ。



『ねぇ、アイシャ。さっきね、あの子は笑ったわ。私が微笑むとあの子もつられてぎこちないけど可愛らしい笑顔を私に向けてくれるの。何故、人は自分達と違う者を否定して拒絶し排除するのかしら?この世界でも同じだわ。それが正しいのなら私は間違いで構わない。周りがあの子の敵なら私だけでも味方になってあげないと誰があの子を守るの?』



……シュアの声?



『何故そこまで情を向けるのでしょうか?再度言います。お嬢様は不利な立ち位置です。獣人を側に置いていると知られたら殺されるかもしれませんよ?』



『既に失う物は全て失ったわ。別に他の誰かに何を言われようとも構わないわよ。居場所とは自分で作るものよ。だけどルーリーはまだ子供よ。大人が居場所を作ってあげなきゃ誰が作るの?獣人とか関係ないの。ルーリーはルーリーよ。私が気に入ったから私が側にいるの』



『覚悟はもう決まっているのですね。ならば、私はお嬢様の道を邪魔するモノを排除するだけです。……全く仕方がないですね。今日はあの子供と一緒に寝る事を許します。大きな部屋は小さい子供は落ち着かないものですからね』



シュアとアイシャの話が終わったみたい。


アレ?目の前が歪んでしまう。

どうしよう。涙が止まらないよ。

泣かなくなって涙の止め方を忘れてしまったみたい。


シュアが来る前に部屋に戻らないと心配かけちゃう。


急いで寝る場所に戻って、布を被る。こんな姿をシュアに見せれないよ。



「ルーリー、今日は一緒に寝ても良いかしら?」



シュアが来たみたい。るーは布の中で頷くとシュアが隣で横になり、布から撫でてくれます。


ダメなのは分かってるけど涙が止まらないの。

シュアに知られちゃう。

シュアに心配かけちゃう。

止めようとしたら涙以外にも声が出てしまう。



「……そっか。辛かったよね。ごめんね。こんな遠い所にまで連れて来ちゃって」



違うの。そうじゃないの。



「ルーリーの辛い事は私には理解出来ないの。それはルーリーのモノだからね。だけど、こうやって側に居てあげる事は出来るわ」



シュアの困った声を聞きたくて泣いたんじゃないの。



「違うのっ!るーは、ヒック、シュアと会えて嬉しいの!」



るーがシュアに抱きつくとシュアも受け止めてくれて頭を撫でてくれます。


シュアの胸の中で大声で大粒の涙も沢山出てしまいます。



「そっか。私も嬉しいよ。ルーリーが生まれてきてくれて良かったわ」



『こんな事になるなら産まなきゃ良かった』



「私はルーリーの事、大好きよ」



『るーなんか……大嫌いよ』



「これからもずっと一緒に居てね」



『さっさと出て行ってよ。化け物』



るーが求めて伸ばした手はシュアの服を掴み側に居てくれる。



壊れたモノは戻ってこないけどシュアとなら新しく作っていける。



るーの胸の苦しみもシュアが助けてくれたからもう大丈夫だよ。




ここはもう悪い夢じゃない。



だから、隣で今だけは泣かせて下さい。





これからはお母さんに逢わなくなるけど、るーはもう大丈夫だよ。

序盤の内容はここまでです!


救いの話です。


人は勝手に救われるのなら人は勝手にザマァになる。


ふむ、殿下ぁ!今すぐ逃げて!

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