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NPC88

インフルでしばらく倒れてました・・・停滞した分頑張ります。皆様も健康にはお気をつけて


新規ブックマークありがとうございます!


 と言っても囲まれている現状簡単に後退なんて出来はしない。

 それに、仲間もいるのだから、彼等を率いて・・・

「テメェしかいねぇよ」

 そんな言葉に視線を前へと向ければ、そこは狂乱だった。

 魔物達が何かに群がるようにして終結している。

 そして、その中央からは赤い何かが散っていた。

 その瞬間、私の脳髄は沸騰し、手にしたままの剣を持って身体を起こし、

「邪魔だっつってんだろ」

 元々、オーガに飛ばされていたにも拘らず、かすかな浮遊感と共に宙を舞う。直後、背中から叩きつけられた衝撃に肺が痙攣し荒れた息を吐き出すが、再び身体を起こしたとき、更なる朱が世界に舞い散っていた。


 とりあえずあの女騎士は安全圏だ。後はこのまま目の前の魔物を皆殺しにすれば俺のミッションは終了だ。つっても、女騎士以外の連中は救えなかったが、俺の力で救えたとしてもそんなのは辻褄あわせで死んでしまうことになる。なら、気にしたところで何の意味もない。

 というか、あの女騎士も死ぬ運命が決まっているならこの後死んでしまうんだろうが、そこは諦めるしかねぇ。

 まあ、まずは目の前の魔物だ。

 食事が終わった魔物どもは一斉に視線を向けてくる。赤い口元がチャーミングだが、熱いベーゼを交わすつもりはねぇ。

 手前にゴブリン、奥にオーガか。距離は五メートルといったところ。こっちは一人で向こうは・・・沢山。数えるのがだるい。だが、二十体くらいいるか。

「まあ、大した数じゃねぇな」

 背後で息を飲むような気配を感じるがシカトだ。

 刹那、俺は加速した。

 デスサイズの峰を前に向けた突進。それだけで距離をつめられた二体のゴブリンの胸骨を砕き吹っ飛ばす。後ろの連中に当たって体勢を崩しているから踏み込んで足元の頭部を踏みつける。

 それだけで頭蓋が砕けて脳漿を散らす。踏み出す左の二歩目で二体目の頭部も粉砕。同時に右にひねっていた身体を旋回させてデスサイズの刃を左に薙ぎ払う。それだけで飛び込んでいた三つの胴体が宙に舞い、降り注ぐ血潮が俺を高揚させた。

「揃って死ね。生まれたことを後悔しろ」

 振りぬいた刃はすぐに返せない。だからこそ、数体のゴブリンとオーガが突進してきた。

 だが、それがどうした?

 振り下ろされる錆びた刃、前に迫る巨体。

 それこそ、それがどうした?

 額に触れんばかりの刃、伸ばされる腕。

 次の瞬間、俺はデスサイズを手放した。


 何が起こっているのか理解できない。

 本来ならあの死神は目の前に迫った刃に額を割られて、オーガの手で掴み取られて命を散らしていなければならない。

 なのに、魔物を目の前にした彼は手にしていた大鎌を手放した。

 それは今を生きるという意味では正解だろう。重量武器を手放して回避する。それは正しいことなのだ。だが、武器を手放した人間はどこまでも弱い。

 人間同士ならともかく、生物として脆弱な人間は武器と数があるからこそ魔物や魔族と渡り合えるのだ。

 なのに、魔物を目の前にして武器を手放す。それはどこまでも自殺行為だった。

 しかし、

「馬鹿な・・・」

 死神は大鎌を手放した瞬間、ありえない速度で切っ先をかいくぐり、後ろからゴブリンの首を右腕で絡め取る。同時に、身体を左に旋回させてゴブリンの身体を跳ね上げた。同時に何かの粉砕音。恐らく頚椎が砕けたのだろう。

 それと同時に伸ばした左の手の平が隣にいた存在の喉仏に触れた上で、左の足払いが抵抗する間もなく打ち払う。

 おそらく、そのゴブリンは最後まで理解できなかっただろう。自分の視界がいきなり空を向いて、その視界が暗く染まった瞬間、振り下ろされた踵が己の頭蓋をふみ砕いたことなど。

 だが、最後に一体残っている。

 無論他にもいるが、一番近くにいるのは背後のオーガだ。伸ばされた腕は回避している。しかし、伸ばされた腕を戻して掴まれればそれまでだ。だから、間に合わないと思いつつも飛び出そうとしたところで、

「ぶっ飛べ」

 引き戻される腕にむしろ手を伸ばす死神。

「無茶だ!」

 しかし、死神は私の予想を覆す。

 背後から引き窓される腕をむしろ両手で掴み、うずくまるようにして身体を捻ったのだ。同時にオーガの巨体が宙に舞った。

 ありえない。

 私は言葉を失うが現実は変らない。

 二メートル以上の巨体が宙に舞い、引かれるままに頭から地面に激突。だが、激突する瞬間、死神はその頭部にめがけて蹴りを放った。激突する衝撃にオーガの体重。そして、蹴りの威力が重なった結果、オーガの頭部は弾け飛ぶ。

 衝撃に続く地響き。

 周囲の世界が揃って沈黙した。

 なぜなら、ありえないことが起こったのだから。

 人間という生物が素手で魔物を殺したのだ。

 しかも、あまりにも一方的に。

 大人と子供、それ以前の問題だったのに。

 だが、死神にはそんな感慨さえ必要なかったようだ。

「さて」

 魔物すらも固まっている中、ゆったりとした動きで地面の大鎌を拾う。

「皆殺しだ。死にたけりゃかかって来い。逃げたら追って殺すがな」

 私は初めて魔物に同情した。


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