表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/143

NPC73

 大層な地獄だった。


 馬車は薙ぎ倒され、そこから逃げ出したレヴィーの仲間達はオーガの群れに襲われている。

 襲撃に気付くのが遅かったんだろう。完全に後手に回っている上に抵抗すら出来ていなかった。

 魔族の戦闘能力は知らなかったが、全員が全員レヴィークラスの力を持っているわけではないようだった。つーか、あんな化け物が量産されていても困るが。

 だがまあ、明らかなピンチだ。

 実際、目の前で頭を食い千切られようとしている女がいた。


 俺の選択肢は、


「さっさと死ねクソ野郎が」


 右手を全力で振り抜いた。

 それだけでオーガの頭が弾け飛び、俺の体と女の頬を血に染める。つーか、意外にもろいな。

 いや、移植されたこの腕がおかしいのか?

 なんにせよ、

「貴殿は死神か?」

 人外になったつもりはねぇよ。

 直後、後方に生まれた気配と音。

「後ろだ!」

 言われるまでもねぇ。

 振り返りざまに見える巨躯と伸ばされる腕。

 明らかに体格は向こうが上だ。

 そして、人間という生物は基本的に弱い。

 己より巨大な生物に勝てないどころか、身長に劣る狼にすら殺されてしまう。武器のあるなしじゃない。人間は戦闘生物として劣っているのだ。だからこそ、徒党を組んで武器を生んで作戦というものを取る。そうしなければ人間は生き残れなかったのだ。だからこそ、村を作り国を作り群れるのだ。

 なら、魔物に手を伸ばされた俺は死ぬのか?


 否だ。


 伸びてくる巨大な腕のシルエット。血の塗れた指に、爪の間に挟まれた毛髪。俺の手首の太さを持つ指。このままなら俺は掴み取られて握り締められて、内臓を吐き出しながら絶命するだろう。

 だが、生憎だったな。

「俺は殺す側なんだよ」

 刹那、踏み込んだ俺はオーガの頭部を上から押さえつけ地面に叩き下ろした。

 くぐもった悲鳴が聞こえるが関係ない。同時に左腕を振り上げて延髄に拳を落とす。やけに固い感触が拳に入るが関係ない。抉りこむように拳を落としながら反動で後ろに飛び、そのまま顔面に右爪先を打ち込んだ。

 鼻骨を砕く感触にオーガが悲鳴を上げて顔面をかばう。


 おい、人間じゃないテメェが人間みたいな痛がり方をすんなよ?


 打ち込んだ勢いのまま身体を返し、そのまま回転して踵を頭上に持ち上げる。それはイッツギロチン。俺は螺旋の軌道を描きながら踵を振り下ろす。

 快音。

 俺の踵下ろしは抵抗なくオーガの頭蓋骨を打ち砕く。同時に飛び知った脳漿は俺の頬を濡らし、オーガは痙攣しながらその命を停止させた。

「くそが、欲求不満になりそうだな」

 レヴィーみたいな化け物は勘弁だが、だからといって相手が弱すぎるのも問題だ。まあ、こいつらを助けるなら強すぎなくてもいいのか。なんつーか面倒なのは変らんが。

 だが、悲鳴が聞こえるのは鬱陶しい。

 とりあえず、見える範囲の魔物は全部殺そう。話はそれからだ。


 私は絶望していた。

 死も覚悟した。

 だけど、なんだこれは?

 荒唐無稽だ。

「私は夢でも見ているのか?」

 それは人間だった。

 だが、人間という生物は弱いのだ。

 魔族と違い魔力も力も弱い。勝っているのは数だけなのだ。

 なのに、目の前の人間はどこまでも違った。白髪黒衣の人間は死神だった。

 人間なのに、オーガをいとも容易く葬っていた。


 手が伸びる。巨大な手の平だ。あの手の平に同胞は掴み取られ無残な屍を晒した。だが、死神は違った。

 伸びる手の甲に蹴りを入れて逸らす。逸れた手首を回転した勢いのまま掴みとって地面に伏せる。同時に引き倒したオーガの腕に両足を重ねて背筋を伸ばした。それだけで何かが砕けるような音が鳴り響きオーガの絶叫が鳴り響く。

 直後、死神は手足を開放すると別の固体へ攻撃を始める。無論、素手でだ。

「なんなのだこれは・・・」

 手足の破壊だけではない。

 伸ばした指先が眼球を貫きうつぶせになったオーガの後ろに回りこみ首に手を回す。腕が十字を組んだかと思えば数秒後オーガは崩れ落ちた。

 何が起こったのかすらわからない。

 なんであれだけのことでオーガの巨体が倒れるのか理解できない。

 だけど思った。

 あり死神に手を伸ばされれば死ぬのだと。

 そして思う。この後あの腕は私達にも向けられるのだろうかと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ