NPC66
目の前に集中しないといけないのに気持ちがどんどん落ち込んでいく。
でも、思っちゃうんだ。
この世界で魔王を倒してもとの世界に戻ったって、あたしの居場所なんてあるんだろうかって。
紅家はいなくなったあたしを探してくれてる?
否だ。
お母さんは心配していてくれるかもしれないけど、他の面々はあたしがいなくなったことを知りつついつも通りに過ごしているだろう。あ、一人だけは心配してくれてるかな? 真っ赤な髪の主人公。あたしの友達でヒーローの女の子。
でも、彼女くらいだ。
あたしはこの世界に来たとき、初めて必要とされていると思い込んで喜んだんだ。
なのに、あたしの存在が利用されて戦いが起こって十夜君が死に掛けた。
あたしは絶望したよ。
こんな世界に呼び出されたって、それはあたしの存在を期待していたのではなく、その存在を利用しようとしていた下心しかなかったんだから。
振りぬいた剣の軌跡が血の雨を生む。だけど、それが身体に触れるよりも先に加速した。その背にかすることなく振り下ろされていく刃と穂先の群れ。
あたしはそのまま転進して刃を振るう。
無防備な手足と首を切り裂いて再び加速。
自身を囮にしながら圧倒的な速度での遊撃。
これなら、あたし一人で・・・
あたし一人?
しまった! リーザちゃんとレヴィーさんのこと忘れてた!
二人は・・・
無事だった。
助けすら要らないレベルだった。
リーザちゃんは次々に近寄る魔物を串刺しにしているし、レヴィーさんに至っては、あたしなんかじゃ邪魔になるくらいの戦闘速度と破壊力だった。
十夜君もそうだけど、あまり人間を超えた行動しないでね? 行動をしないでね? あたしが付いていけないから・・・
とはいえ、落ち着いて行動すれば大体何とかなる。
三連で振り下ろされる刃はバックステップで回避し、地面を叩いた直後、左右からの斬撃を振り下ろす。
それだけで熱い液体があたしの身体を叩く。
中央の一体には蹴りを叩き込んで吹っ飛ばした後にステップを踏んで前進した後に剣を振り下ろす。
「・・・・・」
正直、人間じゃなくても命を奪うという行為に慣れつつある・・・いや、慣れてしまった自分が怖くなる。
だけど、このまま罪悪感で止まっていれば、あたし以外の誰かに危機が迫る。
そう思うと自然と体が動いた。
「でも」
こんなことに慣れちゃいけない。
なのに、あたしはこのまま元の世界に戻ったらどうなるんだろう?
あたしの一族は呪われている。
正確に言うなら、現代社会に生きながら家族同士の命を奪い合ってる。当たり前だけど、そんなのは狂っている。
でも、今のあたしはそれがおかしいと思いつつも、命を奪うことに対して躊躇いがなくなりつつある。
あたしのお母さんはそんな一族に嫌気が差して紅一族から離れたけど、やっぱり色々ダメみたいだ。
あたしがこのまま元の世界に戻ったら、歯止めの利かない化け物が生まれるだけなんじゃないのだろうか?
相手が十夜君みたいな人だったら、緋色ちゃんみたいな生粋の化け物なら止めてくれるかもしれない。だけど、今のあたしが元の世界に戻れば一部の例外を除いて対抗できないだろう。
なら、あたしはやっぱり、
「ステータスオープン」
固有名 吹雪 十夜
職業 殺戮者
レベル//
ステータス
力 //
体力//
素早//
知能//
魔力//
固有スキル
//////////////。輪廻(擬似)。殺意拡散。殺人意識皆無。人間失格。
暴走する病がキャンセルされました。
ステータスを更新します。
何?
頭の中に連続する文字の羅列が理解できない。
というか十夜君に何かあったの?
「ステータスオープン」
固有名 吹雪 十夜
職業 殺戮者
レベル//
ステータス
力 //
体力//
素早//
知能//
魔力//
固有スキル
暴食。嫉妬強欲輪廻(擬似)。殺意拡散。
なんかおかしいことになってる?!




