NPC61
講義は続いているけどあたしは途中から理解を放棄していた。
所々はわかるのだけど、感覚的なところしか理解できない。
構成がどうとか、魔力の分配比率とかそういうのは右から左に抜けています。
でも、あたしの身体にも魔力というものは流れていて、それを集約することによって身体能力を上げられるらしい。
こちらはわかりやすい。
全身に力の流れのようなものが漂っていると仮定する。
実際、見えないのだけれどイメージは得意だ。
その流れを一部に集約する。
それは気であり魔力である。
後は簡単だ。それを込めて解き放つだけで良い。
快音。
手の中に握りこんでいた石ころが粉々になった。
「え?」
そんな声に視線を向ければ、唖然としていたレヴィーさんの表情が見えた。
どうしたの?
「真白ちゃん? あなたなにしたのかしら?」
え? レヴィーさんに言われた通り身体能力強化の魔法を使っただけだよ?
こんな簡単だって思わなかったけどね。
「手は無事なのよね?」
うん、怪我は無いよ。
でも、慣れればもっと硬いものでも何とかなりそう。
それよりも走るのにこれを使えればもっと面白くなるかも。イメージは足裏から魔力を放出してブーストダッシュかな?
「その発想は私にも無かったわ」
そうなの?
でも、今度試してみようかな。
とはいえ、リーザちゃんみたいに何かを作り出して攻撃できるようなイメージはわかない。多分、向いていないんだろうな。
「あなたはそのままで十分よ。とはいえ、とんでもない才能ね」
「そんなこと無いと思うけど?」
「私は逆にそんなことを出来るイメージが出来ません」
とはリーザちゃんの言葉。
そうかな?
以外に簡単だったけど。
だから、詠唱はせずにイメージだけで右手に魔力を集めていく。
全身を循環する流れを右手の拳に集めていく。循環自体は止めない。あくまで流れたままで少しずつ右手に溜め込んでいく。
それは徐々に光を生み出していき、遂には右拳自体が青白く光り始めたところで、
「真白ちゃんストップ!」
レヴィーさんの制止が入った。
「無理に力を抜かないで? ゆっくりと拡散させるイメージで」
深呼吸しながら、言われたとおりに拡散させていく。それだけで光は消えていく。なるほど、集めた魔力はこうすると消えていくのか。
そして、散っていく魔力はまた全身を循環していく。
再利用は大切だよね?
なんなのこの人達?
私が思ったのはそれだけだ。
吹雪 十夜は必殺に育つ化け物だ。
でも、それだけじゃない。
正直、軽視していた紅 真白はもっと化け物かもしれない。
魔力操作。
言葉にするだけならそれだけなのだけれど、これは私ですらまともに扱えない。下手に使えば膨張した魔力に身体が耐え切れず弾け飛ぶ。
だから、イメージでしか伝えなかったのに、真白ちゃんはろくに説明も受けずに実践した。私以上の精度と密度で。
しかも、私より上のステージに進んでいる。
身体能力強化だけなら私も使える。だけど、真白ちゃんはその上、人体保護まで使っていた。わかりやすく言うなら防御力の上昇だ。
身体に魔力を通して身体能力強化はわかりやすい。でも、彼女が行ったのは人体の表面を魔力でコーティングして防御力を強化したのだ。そんなのは私も出来ない。いや、出来なくはないけど、同時に並行しては無理ね。
レベルやステータスは私のほうが遥かに勝ってる。だけど、これはそれを覆す可能性を持っている。
本当に怖い。
十夜君が気にかけていた理由がわかる。多分、時折リミッターをはずしていたのだ。それが今、いつでもリミッターをはずせる状況になってしまった。
なんてことをしてしまったんだろうという思いが少しある。
でも、無自覚な暴走を生むよりは良いかもしれないわね。
いや、そう思わせてください。




