NPC57
あの後レヴィーは馬車に戻っていった。
一人になった俺は考える。
レヴィーの話した情報は本来俺にいう必要のないものだった。
しかし、それを俺に話すということは理由があるのだ。
そして、理由があるということは結果になる。
その結果をなんと成すのか予測しなければならない。
本来なら殺し合う二人が一緒に行動している。
そして、そこに俺とリーザがいる。
これによって何とかできないかとも思ったが、こちらはシルファのクソ野郎が介入して何かを起こすだろう。それにレヴィーの言っていた誓約と契約も気になる。これは本人の意思すらも捻じ曲げる何かだろう。そういう響きがあった。
『物語が進行しました』
空から声が落ちてきた。
「シルファか!」
俺は声を上げて立ち上がる。
だが、空から続く言葉は感情を感じさせない平坦なものだった。
『以降の基点はここからになります。それではこのままゲームをお楽しみください』
ゲーム? どういう事だ?
言葉の意味は理解できるがなんでこのタイミングなんだ?
くそ、わからない事だらけだ。
とはいえ、俺ひとりでは何もわからない。そして、誰も起きてこないという事は俺にしか聞こえてない。もしくは寝ているから聞こえていない。なら、起きた後に聞けばいいだろう。
しかし、今後俺達が死んだ時、復活するのはここからということか。
今回は何も失っていない。
だから、それだけは安心しながら、俺は腰掛けて眠りについた。
それは俺を奪おうとしていた。
眠って意識がなくなったからこそ、右腕という基点を元に全身を奪おうと根を伸ばそうとした。
宿主の意識を起こさないようにゆっくりと、毛細血管を傷つけずに己の範囲を広げようとした。拡大しようとした。網目を広げようとした。
だが、
「引っこ抜くぞコラ」
直接的な言葉が腕の侵攻を止めた。
とはいえ腕に直接的な意思はない。ただ、存在証明と存在意義がそうしているだけだ。それを眠りながらも抑制したのは僥倖だろう。
しかし、それでも、魔王の腕はゆっくりと身体を侵食していく。
数ミリでも良い。少しずつ侵していく。
それは避けられないことだから。
起きて思うことは色々最悪だってことだ。
シルファントには監視されているだろうし、殺し合う勇者と魔王が同時にいる。プラス俺の身体は魔王の腕とか言うわけのわからんものが移植されていて俺の肉体を侵食しているときたもんだ。
そして、なにより、
「始めるよ」
とんでもない殺気にさらされているということだ。
意識が覚醒して見えるのは木々の隙間から刺す朝日と、吹き付けるような殺気を放つ朱色の双眸。
「あなた達は私を殺せるようにならないといけないの。だから、教えてあげるわ」
レヴィーは薄く笑っている。しかし、受けるプレッシャーはそういうレベルじゃない。むしろ、向き合うだけで死にたくなるような類のものだ。
だが、それが心地良い。
「寝起きに丁度いいな」
「あなた笑ってるわよ?」
「本質的にマゾなんでな」
手に武器はない。つーか、ぶっ壊れた。
だが、武器の有無なんかじゃない。
なんで殺しあうかなんての疑問ははさまない。
はさんだ瞬間に殺される。
それだけの密度を感じた。
「絶望の差を教えてあげるわ」
どうやって?
「ステータスオープン」
固有名 レベリオン アークエネミー
職業 魔王
レベル 100
ステータス
力 999
体力999
素早999
知能999
魔力999
固有スキル
輪廻。身体能力増幅。魔力増幅。全耐性。危険察知。未来予知。全武器スキル。全防具スキル。全投擲スキル。




