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NPC54

 こいつは頭がおかしいのか?

 それとも今すぐ殺しにかかるべきだろうか迷う。

「生憎と冗談ではないのだけれどね」

 だが、今の俺の身体は鉛が流し込まれたかのように重く動かない。プラス、腕を掴む存在がそれを許さないのだ。最悪振り払ってもいいが。

「魔王って、テメェがか?」

「ええ、レヴィーって呼んでほしいわ」

 見下ろす笑顔がなんとなく面白くなかったので、起き上がるなり背中越しに顔を向ける。

「んで、俺はどう突っ込みを入れたら良い?」

「私もボケ担当じゃないのだけれど?」

 知ったことか。

「つーかあれだろ? 魔物や魔族を率いて世界と戦争している奴らの親玉がテメェだと言いたいのか?」

 そんな俺の言葉にレヴィーは苦笑する。

「誤解があるから解いておくけど、私達魔族は向こうが攻めてくるから相手をしているだけで、積極的に世界や国を滅ぼそうとしているわけではないのよ?」

「そんなことを簡単に信じることなんてできねぇし、テメェが本当に魔王なのかの証拠すりゃありはしない。少なくともはいそうですかと頷くことなんてできねぇな」

 他の奴がどうかは知らないが、そいつが信じられるか信じられないかは種族でなくそいつ個人だ。だからこそ、シルファのクソ野郎は神様もしくは悪魔のまがい物かも知れないが、俺からしたら殺すだけの対象でしかない。

 というかこいつが魔王本人ならシルファは魔王じゃないってことになる。それはそれで手がかりが無くなって面倒臭ぇな。

「本当にすごく考えているのね。でも、あなたの本質はそうでないでしょうに」

「何でも見透かしていると思っているなら大した勘違い女だな。そして、少なくとも俺は自分の本質なんて哲学的なことを考えたことすらねぇよ」

 そして、この女はまた苦笑。

「話は逸れてしまったけど、魔族が人間全てに悪意を持っているのなら、私はあなたを助けていないわ。もちろん、彼女達も見逃していないでしょうね」

「そこにだけは感謝しといてやるよ」

 言いながらリーザと真白の腕を引き剥がしたところで上半身に何も纏っていなかったことに気づく。

「体温が下がっていたから彼女達に湯たんぽ代わりになってもらったの。代わりの服なら用意しているわよ? ワイシャツしかないけどね」

 湯たんぽにワイシャツ。素直に理解しているが、この女の言っている単語は何か違和感を感じる。それこそ、最近目立つ知らない知識を知らないまま理解している時のような感じだ。

「テメェも召喚者なのか?」

「あなたは違うでしょう?」

 なぜわかる。

 その試すような笑みに苛立ちを覚える。そして、同時に召喚者という言葉をあっさりと噛み砕いたことに確信を得る。こいつは真白と同じだ。外の世界からやってきて、その知識と何かを持っている。

 もっとも、真白の場合はその知識があまり役に立ってはいないようだが。

「あなたが思っている通り私は召喚者もしくは転生者と呼ばれる存在ね」

 何がどう違うんだよ?

「真白ちゃんは人間のままこの世界に来ている。でも、私の肉体は人間じゃなくなっているのよ。だから、私は人間の身体から魔族に転生したから転生者って言うのよ。ちなみに、真白ちゃんのようにそのままの年齢で来たのではなく、赤子の頃からこの年齢になるまで育ったわ」

 気の長い話だな。

 つっても、俺自身がまともな自我に目覚めたのは最近だから逆パターンか。

「だから、あなたはイレギュラーなんでしょうね」

「どういうことだ?」

 その言葉にレヴィーは肩をすくめる。

「今の言葉で理解していないということはあなたが「本人」でないことが確定したわ。それに後で鏡を見るといいわ」

「そんな高級品ここにはねぇよ」

 なんだ? こいつは何を言っている? 俺のことを知っているようでそうではないようだ。

 なんにせよ不愉快だ。

「ごめんなさい。こちらも色々制限があるのよ」

「魔王なのにか?」

「魔王だからこそよ」

 こいつの言っていることが何一つ理解できない。

 なのに全てをわかったような口ぶりでひたすらむかつくな。

「何でも知っているわけじゃないのよ。それに言える事に対しての制約もあるし」

 本当に良くわかんねぇよ。

 まあいい服寄越せ。

「良い体してるわね」

「そいつはありがとよ」

 ワイシャツを受け取って袖を通す。

 初めて身につける衣服だが自然となじんだ気がした。というか、このとがった襟に何の意味があるのだろう? 着心地がいいのとなんとなくデザインが気に入ったから気にしないが。


「十夜、大丈夫?」

「ああ」

 リーザ達が目を覚ました。

 ひたすら心配されたが絶叫して暴れたらしいので仕方のないことだろう。

 とはいえ、身体の調子はお世辞にも良くは無いが起きた直後に比べればましだろう。


「改めてレヴィー、十夜を助けてくれてありがとうございます」

「構わないわよ。役得もあったから」

 レヴィーが薄く笑った直後、傍らのリーザから凄まじい怒気もしくは殺気が噴出す。

 って、俺以上だぞそれ?!

 何があった?!

「十夜は知らなくていいことです」

 いや、しかし・・・

「シラナクテイインデス」

 世の中には知らない方が良い事もある。

 心の底からそう思った。


 とはいえ、他にも聞かなくてはいけないことが多々あるし決めなければいけないこともある。

 むしろ、今後の方針が最優先だ。

 勇者である真白が倒さなければならない魔王がここにいるし、俺は魔王を倒そうとする王国に敵対してしまった。どういう処理になるかはわからないが俺個人は確実に王国の地を踏めば殺し合いになるだろう。そして、あの騎士と再戦か? したくねぇな。つーか、二度と会いたくねぇ。

 だが、真白は勇者でありどうしたもんかね。

 ちなみにレヴィーの正体は明かしてない。

 寝たふりしていたなら話は別だがな。


「さて、これからどうしたもんか」



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