NPC49
「早く回復魔法!」
あたしが言うなりリーザちゃんは十夜に駆け寄って魔法を使い始めた。こういう時あたしは無力だ。何も出来ない。できるのは追撃があった場合の迎撃。
とは言っても、十夜君がここまでやられるような相手に戦い続けられるような強さは無い。それでも、ブロードソードとソードブレイカーは手にしている。
「来ないね」
それはそれで良かった。追撃があったとしたら、今のあたしでは二人を守りながら戦うことは不可能だったからだ。
だけど、それ以上に、この先どうしたら良いのかという疑問が生まれる。
なぜなら、戻ることは出来ない。例の剣士がいるかも知れないし、いなかったとしても、どんな追撃があるかもわからない。
そして、法国にだって進めない。なら、前進するしかないんだけどそれは十夜君に止められていた。
「リーザちゃん、十夜君はどう?」
「傷口は塞ぎましたけど、血を失いすぎています」
布地に巻かれた傷口は赤黒く染まっていた。それどころか顔色は真っ青だし、体温だって驚くほど低下していた。このままだと死んじゃう。
あたしが死ねば十夜君は生き返るかもしれないけど、この場合どこまでまき戻るかもわからないから、うかつにそんなことは出来ない。だけど、このまま彼を死なせ続けて回帰地点に十夜君が死んだ状態で更新されていたら彼の命はここまでということになってしまう。
『どうしたらいいの?!』
当然答えなんて無い。
そして、誰にも聞くことなんてできない。
このまま進んだって魔族街道まっしぐらで敵しかいない。
村落があったとしても滅んだ村落か魔族の村落しかないだろうから詰んでいる。でも、このままじゃ十夜君が死んでしまうし・・・
あたしの頭の悪さをここまで恨んだの初めてだ。
それこそ、十夜君だったら良い考えくらい思いついてくれるかもしれないのに・・・
でも、今の彼は意識が無い。意識があったとしても失われたものを補填する手段が無い。やっぱり、リーザちゃんとの関係をリセットすることになったとしても十夜君をループさせるしかない?
もちろん、あたし自身このままでいてもいいけど、彼はあたしと同じ時間と世界を共有できる貴重な存在だ。
それを失って・・・・これは嫌な思考だ。
あたしが望むのはハッピーエンドだけど、この考え方はいただけない。
だから、このままどうにかしようにもどうにも出来ないのだ。
「リーザちゃん、何とかできない?」
「私の命を使えば何とか出来ます」
「却下」
何とかなったとしても、その後あたしが殺される。もしくは酷い目に合う未来が見えた。十夜君がそんな行為見逃すとも思えないし。だから、却下。
「でも、このままじゃ十夜が!」
わかってるよ。だから、足りない頭で考えてるの。
だけど、足りないから答えが出ない。
でも、このままじゃ彼は死ぬ。
「恨まれてもいい。彼を助けるためなら・・・」
でも、それは今のリーザちゃんを否定した上で消すことになる。
目が合った。
だけど、彼女は寂しそうに笑いながら頷いた。
「良いですよ?」
なんで?
思わずそう思う。
記憶が連続するあたしとは違う。
絶対とはいえないけどあたしが死ねば彼女の記憶は十夜君と出会う前にまで巻き戻る。今、ここまであったことがなくなってしまうのだ。それは今まであった出来事もそうだし、彼女の抱いた感情だってなくなってしまうのだ。
なんでそれが許せるの?
「私は十夜がいなくなってしまう方が嫌ですから」
でも、あたしが巻き戻れば、ここまで言わせてしまう感情すら消えてしまうのだ。
それは、あたしだって嫌だ。
リーザちゃんは短い期間でも十夜君の事が好きになってしまったようだ。その感情を簡単に消して良いの? 人を好きになるって簡単なことじゃないし、簡単にやり直していいことじゃないんだ。また同じ道を辿ったとしても、それまでの行動や受ける印象だって変ってしまう。
ねぇ? どうしたら良いの?
「




