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NPC45

 溜まりに溜まった胸糞悪い気分を開放しただけで回りは動けなくなったようだ。これが殺意拡散のスキルの効果か。

 だが、いつまでも効果があるわけじゃない。

 だから、俺は両手で持ったデスサイズを前に構えて突撃。

 蹴った大地は爆発したかのような破片を散らし、それだけの速度を得た鉄の塊と兵士の激突は激しい音を鳴り響かせ、空に舞っていった。

「まあ、死にはしねぇと思うが、死んだ時は運がなかったと思うんだな」

 元々、人を殺すつもりだったのなら、殺されたって文句を言えるはずもない。

 俺も含めて誰かを殺すということは殺されることを覚悟するべきなのだ。だから、俺は躊躇わない。手加減もしない。踏み潰しても後悔はしない。

「取り囲んで殺せ!」

 残念ながらそれが狙いだ。俺の周囲に影が集まった瞬間、柄の一番長いところを両手で握り締め、

「っ!」

 俺の腕力プラス重量武器の大旋回に、肉と骨を叩き潰す手応えと悲鳴が宙に舞う。間に挟まれた剣や槍などはへし折れる香り曲がり、そのまま続く人間の盛大なホームランを見やると同時に俺はまた飛び出す。全員行動不能にしねぇとならないからな。

 それは簡単なお仕事でした。ってか?

 とはいえ、俺にとっては簡単でも、殺人に対して忌避感のある真白は・・・

「ああ」

 心配する必要なかったみたいだ。

 物凄い速度で動いて攻撃を回避し、ソードブレイカーで剣をへし折って手足を斬りつけていた。しかも、地を這うように動いたり斬撃に対して飛び込んで回避しているのだから向き合った連中からしたら、現れたり消えたりする亡霊と戦っているようなもんだ。

 それでも、多勢に無勢だし集団と戦い慣れていないのだろう。後ろから突き出される槍に気付いていない。だから、デスサイズを投げつけようと思った瞬間、

「阻め大地」

 突如盛り上がった大地に槍を持った兵士が中まで舞い上げられた。

 つーか、阻んでねぇし。

「亜人の分際で!」

 純白の髪に赤い眼差し、それは新たに向かってくる兵士達を視界に収めると、

「阻め大地」

 複数の姿を空へ打ち上げた。

 だから、阻んでねぇよ。というかそんなこと出来るなら一人で奴隷商何とかできたんじゃないのか?

「食事も満足に与えられないで魔法を使うのは無理」

 体力と似たようなものか。というか、俺何も言ってないからな?

「隙あり!」

 奇襲に声出してんじゃねぇよ。つーか、気付いていたから半身になって銀ピカの突きを回避。だが、銀ピカは笑っている。

「ここまで接近すれば貴様の大鎌は・・・べっ!」

 最後まで言わせない。当然接近に気付いた時点でデスサイズを手放し、半身になる際の回転を加えて左のショートアッパー。拳に伝わるのは顎を砕く感触。こいつは一生流動食だろうな。

 ていうか鎧着てるなら兜もつければこうはならなかったのにな。

 まあ、これで全員鎮圧完了だ。

 後は縛り上げて、


「やるじゃないか」


 プレッシャーを知覚。同時に足を蹴りだした瞬間、銀ピカの身体が爆ぜた。


 それは文字通りだ。

 今まで人の形をしていたものが内側から破裂したかのように飛び散った。

 あまりの衝撃に内臓の束すらも飛散し、細切れになった。

 こんな威力は俺や真白では出せない。

 つーか、化け物の所業だ。

「てめぇ・・・」

 目に入った血潮を拭いながら前方に視線を向ける。

 そこには今までいなかった人物が身の丈大の大剣を肩に担いで立っていた。

 とにかくでかい。身長は二メートルほどあり、身長に見合った筋肉を纏っている。そして、そこに乗るのは短く刈った黒髪と豪快な笑顔と獰猛な双眸。美男美女はわからないが、野生的な顔立ちをした偉丈夫だ。

 こいつはやばい。俺の生存本能が逃げろと叫んでる。

「坊主随分と強いんだな」

「テメェに言われるほどじゃねぇよ」

 俺の一撃は切り裂く程度だ。だが、こいつは違う。化け物の一種だ。向かい合うだけで死の予感が這い寄ってくる。

「だが」

 こいつを殺せれば更なる高みにいけるんだろうな。

 なんにせよ、リーザと真白を逃がさないといけない。

 そして、こいつとの相性は最悪だ。

 俺はともかく、真白の戦い方に対して最悪すぎる。魔法も通じないだろう。

 なんせ、

「死ぬなよ?」

 真白より速い。

 俺は地面を蹴って大きく横に跳ぶが振り下ろされた大剣が地面を砕き、その破片が俺の頬を叩いたからだ。

 こいつに対しては手加減どころか、殺す気で向かわないと俺が死ぬ。

「真白、リーザを連れて逃げろ!」

 返答なんて期待しない。背後から聞こえる足音に何とか安心しながら、

「安心している暇があるのか?」

 振り下ろされる刃にバックステップ。

 額を掠めるようにして振り下ろされた刃。

 轟音。

 俺は撒き散らされた土の欠片に打ち据えられながら膝を突く。

「クソ、死ぬかもな」

 こんなに強い人間に初めて出会った。

「俺はグランドリオン。親しい人間はグランと呼ぶ」

 そうかいどうでもいい情報ありがとよ。

 右手に残るデスサイズの重さを確かめながら俺は死を確信する。

 だが、次は殺すぞ。

「貴様、何者だ?」

「ただの村人だ」

 そんな言葉にグランは笑う。

「貴様のような村人がいてたまるか。貴様が望むなら我が軍に取り込んでもいいのだぞ」

「ノーサンキューだ」

 俺の言葉にグランは訝しげそうな顔をする。

「そもそも、私はこんなくだらない作戦は嫌だったのだ。宰相の言うがままに自国民を殺戮するなど本末転倒。機を見て王都の宰相を何とかしようと考えていたのだが、貴様らが阻止してくれたおかげで最低限の被害ですんだ」

 そーかい。それは死んだ奴等に言ってやれよ。

「貴様の名前は?」

「吹雪十夜だ」

 そして、続ける。

「テメェを殺す男の名前だ」

 簡単に死ぬつもりはない。だから、振り下ろす刃は火花を散らした。


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