NPC43
「おい、道を譲れば見逃すレベルか?」
言いながら俺はおかしいと思う。
何でわざわざ侵攻の事実を口にする? 帝国はアホの集団なのか? そうじゃないだろ? こんなわざとらしいイベントには必ず理由がある。その理由を見つければ・・・あれ? 見つけて俺に特はあるのか?
・・・ねぇな。
「皆殺すか」
「その思考の超展開待ちなさいーーーーーー!」
うるせぇぞ真白、ぶっ殺すぞ。
「あれ? あたしまで標的に入ってる?!」
「十夜、ダメ、怪我してる」
怪我? ああ、左腕が盛大に折れてるな。とはいえまだ、右手もあるし両足も頭も口も使える。右手の大鎌で引き裂いて、足で頭蓋を打ち砕いて、首を食い千切ればいいんだろ?
「・・・十夜君、さすがにその発言引くわー」
ふと視線だけ向ければ真白だけでなく俺達を囲む自称帝国兵達もドン引きしていた。
とはいえ、帝国だろうが王国だろうが法国だとしても、俺に殺意向けるなら関係ない。等しく正しく報復対象だ。
つっても、良く考えればリーザを守りながら戦いなんてできねぇし、真白は人間殺せそうにねぇからどうしたものか。こいつらを見捨ててもいいんだが、ここまで連れてきたんだからせめて逃がすくらいはしてやりたい。
「おい、真白」
「なに?」
「テメェ、馬は乗れるか?」
まあ、乗馬なんて貴族様くらいの習い事だろうから期待はできないが、
「乗れるわよ?」
「まあ、期待はしていなかった・・・って乗れるのかよ?!」
思わずノリつっこみをしてしまった。
恐るべし、紅 真白。
「それがどうしたのよ?」
俺は元々来た道、王国側の街道を塞ぐ集団の中の騎兵に鎌を向ける。
「あいつらぶっ飛ばすから馬を奪って王国ルートに逃げろ」
その発言に、騎兵達がギョッと身を震わせる。
「おい貴様等いい加減にしろ!」
あん? なんだよ銀ピカ? ぶっ殺すぞ。
「貴様等はたった三人で我々をどうにかできると思っているのか?」
言われて少し考える。まあ、少なくとも一般人よりは強いだろうな。つっても、真白よりは弱いなら何とかならない気がしなくもない。
そんな思考をしていたのだが、銀ピカは俺の沈黙を怖気づいたと勝手に勘違いして口を開く。
「我々にだって慈悲がないわけではない。侵攻する王都に向かわれては困るが、法国側に逃げるのであれば見逃さないわけではない」
・・・ああ、なんとなくわかった。
こりゃ出来レースってやつだ。なんかまた知らん単語が出てきたがまあいい。
「どうしてあたし達を見逃すの?」
え? こいつ気づいてないの? マジか。
勇者って脳筋なのか? というか自分の価値忘れてないか?
「言った通りだ。我々とて無益な殺害をするほど鬼畜ではない。我々の向かう王国以外に向かうのであれば・・・」
「なら、魔族大陸一直線でもいいんだよな?」
「なっ?!」
俺の発言に銀ピカは驚きに顔を歪めた。
「き、貴様は黙って・・・」
「いや、だって見逃してくれるんだろ? なら、王国以外ならどこだっていいじゃねぇか? 何なら帝国臣民として生きるから帝国にだって向かってもいいんだぜ?」
「そ、それは・・・」
言えねぇよな? 言えるけねぇよな? だって、テメェ等は法国以外のどちらに向かわれても都合が悪いんだものな。そして、魔族大陸一直線はなによりも都合が悪いってもんだ。
「それにここにいる女はなんと勇者様だ。知ってるか? 勇者様は魔王とか言うくそったれな存在をぶち殺してくれるらしい。そんな女が魔族大陸一直線は世界平和の一番近道だと思わねぇか?」
「黙れ、貴様だけ殺してもいいんだぞ?!」
思わず笑ってしまった。
こいつはどうしても俺達・・・いや、真白を法国に向かわせたいらしい。そして、勇者である真白による発言で『帝国』が『王国』に向けて侵攻しているという『事実』を伝わらせたいらしい。
「ところでよぉ」
頭で真白を差し、
「なんで真白が勇者って事実をスルーしてんだ?」
「あっ!」
やっと気付いたかこの馬鹿は。
「そう! あたしは勇者の真白! 今は人同士が争っている場合じゃないの。人間同士一丸となって魔王を倒さなきゃいけないの!」
前言撤回、こいつ本物の馬鹿だ。大馬鹿だ。




