NPC39
「真白、テメェはこれからどうすんだ?」
翌日、俺は馬車を走らせながら荷台にいる真白に問う。
「なし崩し的に行動してるが、もう少し進めば分岐路だ。直進して魔族大陸突っ切るか、帝国ルートか法国ルートの三種類がある」
ちなみに直進すると確実に死ねる。人の集落も無く魔王とやらのいる城までの一直線だ。補給無しで向かうなら自殺と変らない選択肢。常に魔物に襲われる恐怖とそれに対抗できる実力と人数がいるならともかく、少数で向かうルートじゃない。賢いなら帝国ルートを使うだろう。
信心深いなら法国ルートに向かう。
色々あるらしいが俺には分からないから帝国ルートを進みつつ北を目指すつもりだ。
だからこそ、真白に問いかけたのだが、
「え? まっすぐ進めば早いんじゃないの?」
ぶん殴ってやろうかと思った。
何で十夜君はそんな簡単なことを聞くのだろうと思った。
だってまっすぐ進めば一番速いじゃないかと思ってしまう。あたしは何か間違っていたのだろうか?
「そうか、自殺志願なら一人で進んでくれ」
え? どういうこと?
「直進ルートには集落なんかねぇぞ。たったこれだけの装備と食料で向かったらサバイバル生活どころの騒ぎじゃねぇ。それだけならまだしも、いつ魔物に襲われるかわからねぇ」
まじですか?!
それはさすがに嫌だなと思う。
「なら、どのルートが正解なの?」
「ただの村人だった俺が知るわけねぇだろ? 旅すら経験ねぇよ」
戦闘能力だけの人か。
「殺されたいか?」
あれ? 言葉にしてないのに。
十夜君は溜息交じりに頭をかく。
「リーザは何か知ってるか?」
「すみません、私は馬車に閉じこめられての移動でしたので・・・」
つまり、三人とも何もわからないということだ。
「とはいえ、各国の特色は知っています」
なんと!
「帝国は建国から三百年しか経っていない歴史の浅い国ですが、王国と違い他国や領を占領することによって支配地を着々と広げている国家です。王国との最大の違いは血筋を重要視するのではなく実力主義を重視しています。わかり易く言えば平民でも将軍にすらなれるかもしれないそうです」
あたしを召喚した王国は逆に血筋を重要視する国だ。だから、あたしを勇者と呼びながらも見下すような視線を向けてきた貴族もいた。視線だけなら良かったけど、手を出してきた連中は問答無用で叩きのめしたけど。
「法国は人が知識を持ってから存在し続けてると言われています。ただし、私のような獣人族を亜人と呼び、人としての尊厳を認めず奴隷として扱います。人間族は神の似姿でありそれ以外は異なる種族であるという教義です」
リーザちゃんみたいに可愛い女の子を人として扱わない? 絶対分かり合えないことだけはわかったわね。
「ただし、神から授かった技術、神聖魔法が研究されていますし、その勉強、研究のために足を向ける人は多いようです」
「リーザは魔法使えるけど教えてもらえないのか?」
「むしろ、魔法の的にされるかと」
その国滅んだ方が良いんじゃないの?
「確実に殺し合いになるな。そのルートは無しだ」
「はい。とはいえ、法も整備されていますし奴隷の権利も認められているので、非常に暮らしやすい国だとは思います」
人族にとってはね。ってことかな。
まあ、そうだったとしても、あたしは進むとしたら、
「直進ね!」
「テメェ一人で死ね」
あれ? 同意が得られなかった。
レベルアップもできるし良いと思ったんだけどな。この三人なら余裕な気もするし。
「なんか勘違いしているみたいだから教えてやるがな」
馬車のたづなを握る十夜君は目線だけこちらに向けてくる。
「俺が死ぬのはまだ良い。だが、テメェが死んだ場合、俺以外の全てが巻き戻ることを忘れるなよ?」
それは一体どういう意味で・・・
「俺とテメェの巻き戻りは命の巻き戻りであると同時に、それ以外の全てが巻き戻っちまうって事だ。テメェは仲間を連れていないようだが、それまで積み上げてきた感情や行動、それに記憶までも無くなっちまう」
つまり、今こうやって十夜君と話していることはお互いに残るかもしれないけど、リーザちゃんや他の人達と親睦を深めたとしても、あたしが死ぬだけで全てなかったことになってしまうってことだ。
例え、同じことを繰り返したとしても同じ結果になると限らない。
実際、あたしも何回か巻き戻った時点でそれには悩まされた。
「それでも、レベル上げがしたくて突撃したいなら一人で行け」
そこは助けてくれないんだ?
「他人に気遣いできないならいないと同じだ。それなら、巻き戻り前提で考えて俺は一人で行動する」
「でも、それじゃあ、リーザちゃん一人になっちゃうじゃない」
「なら、どうするべきか自分で考えろ」
十夜君はそういって視線を前に戻す。
ヤンキーっぽいけど色々考えてるんだなーって思った。
あたしは頭が悪いからあまり深いことはわからないけど、勢いだけで行動してはいけないのだ。
それを踏まえた上でもう一度考えて答えを出そう。
うーん、勇者をするのにも頭を使うのは大変だ。




