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NPC37

 ちなみに馬車の操縦なんてほとんどしたことが無い。

 それでも、村にいたとき何回か経験したからできているだけだ。お世辞にもうまくないし、案の定、

「気持ち悪い・・・」

「・・・・・」

 馬車内の二人が非常に酔っているようだ。とはいえ、何回か休憩を挟んでこれだ。

 さすがに馬車で野宿は嫌だから先に進みたい。と言っても、このまま進んで次の集落がどこにあるかなんて俺にはわからないが。

「と、十夜君」

 荷馬車側からくぐもった声が聞こえる。

「なんだ?」

「お願いだから、一回とめて・・・」

 一回どころか何度目だよと思いつつ、俺はクツワを引いて馬を止める。

 その瞬間、真白が馬車から飛び出し林の向こうに消えていった。

「リーザは大丈夫なのか?」

「・・・はい」

 あまり大丈夫じゃなさそうだが、奴隷として運ばれていた際に少しは耐性が付いていたのだろう。それでも、気分が悪そうなのは俺の操縦のせいか。まあ、劇的にうまくなることが無い以上、我慢してもらうしかない。

「もうここまで来ると、主人公もしくはヒロインっていうよりゲロインだな」

「あんた言って良いことと悪いことっ!」

 聞こえていたらしいが果てしなくどうでも良い。

「十夜のいた集落には寄るのですか?」

 とこれはリーザの言葉だ。

「いや、寄ったところで死体しかねぇし、街道沿いにあるわけじゃねぇ。このまま少し先に行くと馬車の停留所があるはずだから、そこで野営する」

 実際長老の家なら宿泊は可能だろうが、行って気持ちのいいものではない。なにより、俺が行きたくないのだ。

「それより、あのゲロ女が戻ってこねぇとどうにもならねぇよ」

「十夜君デリカシーって知ってる?」

「ああ、ここでテメェを殺すことが慈悲に繋がる程度はな」

 俺の皮肉げな笑みを素通りして馬車の荷台に戻る。

「とはいえもう少しだ。耐えろ」


 停留所とは街道沿いに少しだけ森を切り開いた休憩所のようなものだ。馬を止めておくための杭もあるが屋根のある宿屋のようなものはない。あくまで少数の馬車を止めるだけの停留所だ。

 とはいえ、長距離を移動するならこういった場所は必要だ。人間はもちろん馬だって休憩は必要なのだ。

 俺は杭にロープを使って馬を繋ぎとめると水と塩を食べさせる。

「何で馬に塩をやるの?」

「人間だって汗をかけば塩舐めるだろ。動物だって同じだ」

「・・・なんで塩必要なのかわかるの?」

 何言ってんだこいつ?

「人間含めてどんな生物だって塩分取らなけりゃ死ぬだろ。ミネラルに含まれる成分はそうだが、本来馬だって植物に含まれる・・・」

 いや、俺が何言ってんだ?

 俺は言いながら固まってしまう。それを不審に思った真白が馬車から降りるなり、

「あなた本当に召喚者じゃないの?」

「違う」

 だが、なんだ流れのままに言おうとした知識は? 今はまったく思い出せない。だからこそ、俺自身が不審に思う。

「十夜君どうしたの?」

「いや、なんでもねぇ」

「でも、明らかにこの世界の人間じゃ知らない単語を・・・」

「黙れ」

 それだけで真白は固まる。軽く殺意を向けたからだろう。とはいえ、俺自身が混乱しているんだ。ここで質問攻めにされたって俺は何も言えない。

 なんにせよ、

 ぐー、と腹の音が鳴った。

「あたしじゃない!」

「黙れメス豚」

 かまどは馬車の中にあった。

 本来なら石を組み合わせて作らなければならないが、鉄で作られた簡易かまどは置いて内部にマキを置くだけで済む。燃え上がらせるための着火剤は布でも良いし細かく裂いた枝で良い。

 何が食いたいなんてリクエストは取らない。

 とりあえず湯を沸かしながら馬車の中を探れば、干し肉と干し野菜のようなものしかなかった。ただし、干し野菜は複数の種類がある。そして、それらは村で調理した記憶のある食材だった。

 そして、黒パンを見つける。

 なら、上々だ。

「なにこれ、黒いの?」

「小麦を練って焼いたやつだ。まあ、保存食だ」

「つまりパンってこと?」

 いや、パンはパンだろ?

 ともあれ、馬車にあった鍋を使って沸かした湯に干し肉を投入する。

 干し肉は長期的な旅のために作られた保存食品だ。そして、何も加工しない天日干しと、塩を加えて水分出した後に天日干しをする二種類の干し肉があるが、馬車にあったのは塩を施したもののほうだった。

 塩は貴重品。それを使った干し肉があったのは行幸だった。

 試しに一かけらだけ食ったが魔物の肉ではないようだ。

「十夜君料理なんてできるのね」

「テメェはできないんだろ」

 後ろから憤怒の息が漏れたようだが事実は変らない。

 俺は干し肉で煮出したスープの灰汁を取って捨てると、そのまま干し野菜を入れる。本来なら水で戻してとかの手順をふむがそこまでしていられない。

「できたぞ」

 そして、完成したのは、


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