NPC34
この馬鹿何を言うんだ。
そう思った。
せめて、傷を直す間リーザを守ってくれならともかく、それ以外も含めて全部守れなんて・・・
「代わりに全員俺が殺す」
「え?」
そこから先は一瞬だ。
あたしの蹴り飛ばした男の首を一瞬で撥ねて噴出す血潮を全身で浴びる。
髪も肌も真っ赤に染まった悪鬼が笑う。
「誰ひとり生き残れるなんて思うんじゃねぇぞ?」
周囲の悲鳴が一気に止まった。
広場の中央で血の雨を浴びる一人の男が両手を広げて笑っているのだから。
それまで虐殺の快楽に夢中になっていた連中すら動きを止めていたのだ。それは明らかな異常。
「ああ、人質は何の意味もない。俺はテメェ等を殺したいだけだからな」
拡散する殺意。
あたしは立っているだけで死にたくなる。視線を向けられるだけで刃を胸に立てたくなる。だけど、これは、あたしに対してだけじゃない。粘りつくような殺気に身体が硬直しそうになる。
でも、
「う、動くんじゃねぇ!」
どう見ても致命傷の老人。その首筋に剣を寄せた男は、
「人の言うこと聞けよ」
老人ごと両断された。
宙に舞う二つの上半身、それが落ちるよりも先に目の前にいた黒衣の化け物は駆け巡った。その後に続くのは無数の死体と蹂躙されていく盗賊達の遺骸。
速いとかじゃない。
とにかく躊躇いがない。
人を殺すことに対してここまで忌避感がないとは思わなかった。
しかも、守れと言っておきながら、十夜君は村人ごと殺してる。
「やめろぉぉぉぉーーーーー!」
あたしは間違っていると思いながら、後ろから十夜君に切りかかる。
だけど、彼は視線すら向けない裏剣であたしの刃の皆を叩いて方向を逸らす。
同時に合った視線は何よりも冷たく、
「邪魔だ」
そのままあたしを蹴り飛ばした。
「がぁっ!」
女の子らしくない悲鳴を上げながら受身を取る。
でも、
「あんた何やってんのよ?!」
なんで、助けるべき人たちを盗賊もろとも殺してるのよ?!
そんなの・・・
「俺は勇者じゃないんでね」
それこそ、人質なんて意味がないと思ったのか、盗賊達は一閃に背を向けて逃走を始める。だけど、
「一人も逃がすわけねぇだろうが」
虐殺だ。
逃げようが悲鳴を上げようが涙を流そうが、吹雪十夜は誰一人生かさなかった。
跪いて命乞いを仕様が関係なかった。あたしが止めようとする前に、彼は全ての命を惨殺していった。
「何でよ?」
その言葉を言ったのはあたしじゃなかった。
「何で、私のおじいちゃんを殺したのよ?!」
言ったのは十代半ばくらいの少女。
恐らくそれは、盗賊ごと両断された老人のことを言っていたのだろう。
彼女の言うことは当然だ。
でも、十夜は・・・
「致命傷負ってただろ。魔法でだって救えねぇ。苦しませるよりはましだろうが」
乾いた音がした。
それは飛び出した少女が十夜の頬を張った音だ。
少女は手を振りぬいた姿勢のまま歯を食いしばり涙を流していた。
対して十夜は爬虫類のような感情の色のない視線を少女に向けながら、
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