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NPC33

 無茶苦茶な女だった。

 いきなり切りかかってくるとかどんな戦闘民族だ?!

 つーか、俺じゃねぇと死んでるぞこれ。

 そして、何よりこの女、明らかに俺より強えぇ!

 始めてあった時は不意打ちで圧倒できていたが、今はそういうのでどうにかできるレベルじゃねぇ!

 打ち合った時点でわかっていたが、力は互角くらいだろう。だが、速度がおかしい。

 背中をやられた時もそうだが、先読みして行動しているのに傷を負うってどういうことだよ?! 

 突き出される刃を受け止める。回避する。その直後にこちらの視覚に回りやがる。

 それこそこちらが旋回してなぎ払えば、斬撃に飛び込むようにしての回避。正直正気を疑うが、それゆえにまた回り込まれる。

 つーか、女心なんて知らねぇよ! なによりそんな斬撃放つテメェに女心なんて教えられて溜まるか!

 持ち上げた刃と振るわれる刃に何度目かの火花が散る。

「とはいえ・・・」

 俺は唇の両端を吊り上げる。

 こいつは良い。

 最高の実験素材だ。

 もっとギアをあげてやりあってみるか!

「アースランス」

 と思った直後、真白と俺の間に土の槍が突き立ち、両者の行動を阻害する。当然、お互いにバックステップ。

「おい、リーザ邪魔すんじゃねぇよ」

「あんた、女の子になんて言い方してるのよ」

 向かい合う真白はソードブレーカーよりも攻撃力を優先したようでブロードソードの二刀流だ。つーか、二刀流で持つような剣じゃねぇはずなんだが。

「二人ともやめてください」

「何でだよ」

 リーザは空を見据えながら桜色の唇を開く。

「私達の北方向から悲鳴が聞こえます」


 本来なら王都に行って装備を整えるはずだった。

 だが、今はリーザを背に抱えたまま全力疾走中。

 リーザが言うには俺達の泊まった集落が襲われているらしい。

 折角奴隷商人を皆殺しにしたのに・・・というかその残党か、真白を殺した盗賊の仲間かなんかだろう。

 最初は真白が一人で先行しようとしたが、強さはともかく周りが見えない部分が強いから一緒に向かわせた。それで被害がでたらどうすると言われたが、そんなの知ったことではない。

 とはいえ、多少世話にはなった奴らもいる。なら、万全の状況で挑むべきだろう。

 なのに、あの馬鹿女は暴走した。

「あたしが先行して助けに行くから後から追ってきて!」

 本当に人の話し聞いてないよな。人質とられたらどうするつもりなんだよ? そうなった場合のための俺であり、リーザだってーのに。

 まあいい。あの馬鹿には囮をやってもらおう。

「十夜、意地悪な笑い方をしています」

「知ってるよ」

 生憎と発想が腐っているんでね。


 あたしが到着した時、村の一部は燃え上がっていた。そして、村の中を駆け抜けるのは馬に乗った盗賊たちと逃げ惑う村民達。あたしが飛び出そうとしたところで、馬に追われていた子供が蹄に踏み潰されて、

「っ!」

 全身の血が沸騰した。

「ああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 飛び出したままの勢いで馬上の男を蹴り飛ばす。足裏には何かを砕く感触を覚えたけど、着地したあたしは子供の前に駆け寄って・・・絶望した。

「胸が陥没してる・・・」

 確実に肋骨が折れているし、それが内臓に突き刺さっている。吐き出す血は真っ赤な鮮血で動脈が破れていることがわかる。

 こんなの、現代医療の最先端でもなければ助けられない。

「あ、ああ・・・」

 勇者なんて言ったって、何もできなければ誰もすくえない。そんなことに今更気付いた。

 十夜君を圧倒できたって、誰かが助けを求めるその場に間に合わなければ何にもならないんだ。

 あたしは自分の傲慢に涙を浮かべる。

「おい」

 知った声だった。

「呆けている暇があったらさっさと殺しに行くぞ」

 振り返れば、さっき置き去りにしてきた金髪の黒衣が身の丈大の大鎌を持ちながらあたしを見下ろしていた。

「リーザ、土魔術で回復はできんだよな?」

「はい。でも、細胞活性化くらいしか使えないのであまり大きな傷は・・・」

 いつの間にかいたリーザはあたしの腕の中にいた少年を痛ましい視線で見据えていた。それはつまり、

「集中して直せば助けられるだろ?」

「はい。ですが、私は無防備になります」

 こんな傷すら助けられるの? というか、あなた達は出会ったばかりなのになんでそんな風にお互い任せられるの?

「紅 真白」

「な、何?」

 吹雪 十夜の言葉に声が裏返る。

「テメェは俺とテメェ以外を全員守れ」

「は?!」

 そんなの無理に決まってる。

 でも、彼は言った。

「できるできねぇじゃねぇ、やるんだよ!」


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