表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/143

NPC12

 長老の家は宿屋の変りになるというだけあって大きなベッドがあった。当然、屋根も無事だ。

 なんとも埃っぽいベッドに身を横たえながら俺は考える。

 どうすれば良い? どうすればあのクソ野郎を殺せる?

 殺意だけなら満タンだ。

 だが、届かせる手段が欲しい。

 とはいえ、それが思いつかないのも事実だ。

「待てよ?」

 シルファのクソ野郎は俺のことを主人公じゃないといった。なら、逆に言うなら主人公がいるっていうことじゃないか。


「なるほどな」


 意図的な発言か過失かは想像つかない。しかし、これはまたヒントの一つにもなった。

 主人公ってなんなんだろうな?

 魔物がいるんなら魔王だっているだろう。魔王がいるなら勇者だっているだろう。つまりはそういうことなのだろう。少なくとも魔王を主人公とは呼ばない。つまりは勇者がいるっていう仮説が成り立つ。

 そして、更なる問題が一つ。

 シルファのクソ野郎にとって勇者とはなんなのか?

 あいつの性格自体は捻じ曲がっているがイコール魔王もしくは魔王側とは断定できない。正解は誰の味方でもないって気がするが即断は悪手だ。


「まずは主人公とかいうのに接触する必要があるか」


 どこにいるのかすらさっぱりわからないがヒントはある。

 恐らくこの村を通過するだろう。そうでなければ村の略歴なんて読めないし、死体の情報なんて読み取れはしない。なぜならそれは、誰かがそれを読み取ることを前提としているからだ。

 その読み取れる奴を待つか、それとも先に行くか。


「決まってんだろ」


 先に進んでシルファの思惑を台無しにしてやるんだよ!

 だから、目標は決まったからこそ、俺は目を閉じる。

 まったく眠れる気はしなかったが、予想以上に疲弊していた身体は思ったよりも早く、眠りの中に落ちていった。


 目を覚まして今までの光景は悪夢なんじゃないか?

 なんて期待は抱かない。

 目を覚ました上で自分の中にある気持ちを自覚する。


「あいつを殺す」


 うん、気持ちは萎えていない。

 なら大丈夫だ。


 とはいえどうしたもんか?


 待っていれば少なからず主人公とやらは来るだろう。

 でも、それと出会って俺はどうするべきなのか?

 プラス、俺はこのままで良いのだろうか?

 ステータスは低いしレベルすら謎のままだ。


 そして、俺には知識が足りない。

 村の後方は王国がある。反対は街道が続いて遠くに帝国とかいうのがある。

 いや、俺が馬鹿っていうよりもこれはもともとの知識が不足しているってことか。

 とはいえ、俺はここに残ることだけはできない。

 簡単なことだ。

 今の俺にじっとしているなんて選択肢はないのだ。


「つっても、帝国側に進むにしろろくに装備がねぇしな」


 武器はともかく糧食や細かいアイテムなんて持っていない。金はあるけどな。

 とはいえ、長老の家を漁ったら見た目以上にアイテムを突っ込める、旅人の麻袋なるものを見つけた。当然ありがたく拝借する。


 そして、至った結論は、一度王国側に向かうということだ。

 ここでは旅に必要なアイテムや食料が残っていない。

 残っていたとしても、外は腐敗臭がひどい。少なくとも探す気は起きないし将来的な疫病が怖い。


「本当なら全員埋葬してやりたいが、そんな時間もねぇしな」


 麻袋とデスサイズを肩に担いで家を出る。


 外に出れば、相変わらず死が満ち溢れていた。


「一度王国側に向かって装備手に入れたら帝国側に向かうか」


 その時森を通ってこの村を回避すれば良い。

 何でそんなことをするのかって?

 何度も、自分生まれた世界が滅んだところなんて見たくないんだよ。


 そして、俺は故郷を旅立った。


 王国まで確か馬車を使って三日だったかな? いまいち覚えていない。

 とはいえ、その途中にうちのような村落は二つくらいあった気がする。かなり小規模だったけどな。

 基本的にお互いの行き来が少ないから記憶は曖昧だけどな。

 村人達によっては親戚達がいたりするようだが、俺にいたっては両親が・・・・なんでいないんだ?


「くそが」


 自分の記憶すら曖昧かよ。

 ステータスといい、明らかになんかされてるじゃねぇか。

 まあ、バッドステータス上等だ。記憶だって大したことじゃねぇ。

 そもそも、ステータス程度で絶望するなら俺は繰り返していない。ステータス以上の殺意で塗りつぶしてぶち殺す技術を磨けば良いだけだ。

 村を出たまま歩く俺はふと肩に担いだデスサイズに視線を向ける。その時、今更のようにアイコンが映る。つーか、アイコンてなんだよ?


 祭具の大鎌。

 カイル村で豊穣の時を祝う際に使用されていた。

 攻撃力20

 重量5

 固有能力:村民補正(微)


 ああ、なるほどね。

 デスサイズを手に入れてから俺が強くなったのは、この村民補正か。つーか微ってなんだよ? 村の一点ものならせめて強にしとこうぜ。

 つっても、武器なんてどうでも良いけどな。


 なんもない街道を歩き続ける。

 遠くを見れば木々もあるし、時折野生生物もいるだろう。

 とはいえひたすら退屈だ。

 魔物の一匹くらい出ればいいのにと思う。

 こうなる前だったら無事を祈って歩くだけだったが、生憎と今の俺はそうじゃない。

 ただ、こうやって歩いているだけで暗い気持ちがあふれ出しそうになる。


「ああ、殺したい」


 ただの危険な奴だ。

 でも、そんな言葉しか出ないんだよな。


「とはいえ、待てよ?」


 俺の村は滅ぶことが確定していた。そこまでは良い。良くはねぇが確定していた未来だった。その後、俺の村を滅ぼした魔物はどこに向かう? 遠い帝国か? アホか、あいつらは帝国側から来た。とはいえ、向こうの地理は良くわからないから帝国イコール魔物の国じゃない。

 なら、これから向かう先の集落に向かうはずだったのだろう。


「下手したらすでに全滅してるかもな」


 シルファのクソ野郎が言っていた。俺の村は滅ぶことが確定していたから魔物がいなくなっても滅んだのだと。

 胸糞悪くなる話だ。

 だが、この先の集落がそうでない可能性はない。

 その場合はどうするのか?

 簡単だ。金目のものをもらって去るだけだ。

 人道? 知るか。俺は俺の道を進むだけだ。

 そもそも、村をなくした難民の行く末なんて碌なもんじゃねぇ。

 俺はたまたま恵まれているが大体の行き着く果ては盗賊に襲われるか盗賊になるかだ。


「盗賊か」


 こねぇかな?

 いまいち自分の強さがわからんし、比較対象が欲しい。

 それに、盗賊だったらぶち殺しても構わないしな。

 魔物を殺しすぎて殺人に対する忌避って言うものが薄くなっている気がする。まあ、あれだけの死体を見たんだ。そうなっててもおかしくはないか。


 それから数時間歩き続けた。

 ひたすら暇だ。

 そう思った矢先のことだ。

 進む先からなにやら金属と金属がぶつかり合う音が聞こえる。それと同じくして人の声。


「ああ」


 争う音だ。

 身体が熱くなる。

 やっと何かを殺すチャンスのようだ。

 心の中に巣食った殺意が形を持って固まっていく。

 いいぞ、そういうのを待っていたんだ。

 唇が自然と歪んだ笑みに裂けて行く。


「最高だな」


 デスサイズの当て布をはずす。それだけで祭具の大鎌はギラリと光る。

 テメェも血に飢えてるのか? ああ、俺もだよ。

 だから行こうぜ? そして、皆殺しにしよう。

 俺は爪先に力を込めて飛び出した。





 あたしの名前は 紅 真白。

 苗字はともかく名前は名前の通り。生まれた時、髪が真っ白だったから真白。親しい人は白って呼ぶけど今はそんなことどうでも良い。

「くっ!」

 今は絶賛戦闘中。

 なぜか知らないけど、この世界に召喚されて勇者扱い。

 確かにあたしは武術の経験があるけど今まずい。

 だって、たった一人で村? 集落? を襲う盗賊団と一人で戦ってるんだから!


「離れなさいよ!」


 振り下ろした刃は馬に乗った盗賊に届かない。

 馬上の相手を斬るのがこんなに面倒とは思わなかった。


 いや、それ以前に人と人で殺しあうことが初めてだった。

 あたしの背後は集落の入り口。その背後には怯えた様相の村人達。あたしは負けるわけには行かなかった。殺されるわけには行かなかった。


 今までみたいに。


 あたしは死ねば巻き戻る。

 あの王様のいる王宮に。


 だけど、この人達はあたしの殺された後にひどい目にあう。

 私の想像もつかないひどいことになるだろう。

 だから、何度も死んだ。

 あたしもひどいことをされそうになった。

 その度に舌を噛んだ。

 死ぬほどなんて言い方はおかしいけど死ぬほど苦しくて痛かった。


 正直気が狂うと思った。


 でも、巻き戻った。


 だからあたしは剣を振るう。

 何度も負けたけど、心は折れそうになるけど、あたしは何度だって剣を握る。


「おいおい、一人で何頑張ってんだ?」


 囲まれていた。


 あたしは荒い息をつきながら周囲に視線を飛ばす。

 完全に囲まれていた。しかも、全員馬上で長物まで持っている。


 これはまた死ぬかもしれない。

 だけど、次のために経験は必要だ。

 あたしは強く剣を握る。


「投降しろよ? そうすれば悪いことはしないぜ?」

「とはいえ、お仕置きはするけどな」

「お前のお仕置きは女が壊れるじゃねぇか」


 また舌を噛むのは嫌だ。

 だけど、こんな奴らに屈するのは嫌だ。

 だから、飛び出そうとしたところで、


「生きるか死ぬか選べ」


 黒い影があたし達の間に落ちてきた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ