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NPC1

気がついた。

 そんな言い方ではおかしいかもしれない。

 生まれてから十五年。それまでの人生は振り返るだけで思い出せる。


 だけど。


 俺は今初めて「自分の意思で」世界を見た。


「っ」


 記憶もある。知識もある。だけど、それ以前の問題だ。

 俺には何も無い。

 自分で行動してきた記憶はあっても、自分の過去があっても、それを意識してのが初めての経験だった。

 俺が何を思っているのか誰も理解できないだろう。

 遠くの空から見下ろしていたならわかるだろう。

 こういう物語があった。


 そう言われれば俺自身納得するだろう。

 退屈な毎日が続き、退屈な毎日が終わりました。

 登場人物の意識なんて気にしなくていい。

 主人公の意思だけで進めばいいからだ。

 だけど、


「俺が主人公になってどうするんだよ」


 しがない村人でしかない。

 しかも、自分に自我が生まれたことに対して違和感しか感じていない。

 何回も言ったが記憶はある。だけどそれが役割を決めた配役に基づいた記憶でしかないということだ。

 そして、その記憶に対して自分が思う気持ちは違和感でしかない。


 実際、主人公であるかどうかも危ういかもしれない。

 いや、主人公ではないのだろう。


「ステータスオープン」


 そんな言葉は自然と出た。

 同時に、視線の中央に自分の名前とステータスなるものが現れる。

 俺には学がない。

 村人だからね。

 だけど、理解できない文字が見えてしまう。


 ステータスの基準はわからない。

 だから、そこは斜め読み。

 重要なのはその先だ。


「キャラクター設定」


 名前 吹雪 十夜

 種族 人

 ステータス///


 来歴

 カイル村に生まれて農耕に従事する。

 至極真面目、問題なく歳を重ねていく。

 恋仲であったアーリアと結婚の約束をする。


 ここまでなら何とか理解できた。

 俺はアーリアを知っている。

 昔から知っていた少女だ。

 今では何で恋仲なのすら理解できないが、そういう設定なのだろう。

 その上で、次の文言に絶句する。


 その後、村は滅ぶ。

 誰一人生き残らない。


 俺にとっての世界が終わる。


 救いの主は来るらしい。


 俺達が全滅した後に。




 なぜ、俺がそんなことがわかる?

 知りたくもないし、理解したくも無かった。


 だけど、俺は理解してしまった。

 そう思うと、何で俺は自分という意識を理解して、こんな世界でロールプレイをはじめてしまったんであろうと。


 ああ


 俺は村人でいたかった。

 何にも考えなくていい存在でいたかった。

 でも、なぜか俺は世界という存在に囚われた。

 気付かなければ俺はこのままでいられたのだから。


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