◆ 10 ◆
◆ 10 ◆
わたしの未来視は、融通がきくものではなく。
特に、わたしの死後のことは、とても断片的になる。
だから。
年を経たあなたの姿を見たとき、それがわたしが死んだすぐ後のあなたの姿だということは、直前の未来視から情報をつなぎ合わせるまで気づかなかった。
あなたは一瞬だがテロメアの老廃する力を全身に浴びて、もう青年には見えない姿をしている。
あなたは周囲を見る。
周囲は巨大な爆発に巻き込まれた直後で、残っていた廃墟も多くが吹き飛んでいる。空を覆う厚い粉塵の雲すらも一部が吹き飛んで、青い空から光が射している。
あなたは呆然と、その空をしばらく見上げている。
テロメアの白い肉塊も、周囲にはもう無い。ちょうどあなたにとって防護服の役割を果たし、消し飛んで、死んだようだ。
あなたはしばらく呆然とした後、道を戻り、地下への入り口を見つける。あなたは中を覗く。
ラキヤも、ヴァルーエフも、跡形もない。
もちろん、わたしも。
失意の表情をしながらも、あなたはさらに探索を続ける。瓦礫をどかして地下の奥を見たとき、その地下が迷宮のように広いものであることにあなたは気づくだろう。
あなたはその奥を探索して。
その最奥で、わたしが残した手記を手にする。
光の無い地下で、わたしが自分の血で書いた手記。偶然にも近い確率で、ラキヤの爆発からも無傷で残った手記。
この手記。
そこに、わたしはわたしが知る限りのことを記しておく。
『やり直す前の世界』のこと。その最後の、テルモ・パツァスによるやり直しに手を貸したときのこと。
そのときの方法から逆算して類推する、この『今』の世界をもう一度やり直すための方法の手がかりのこと。
その方法を行うのに必要な条件をそろえるために、あなたが持ち帰った情報を聞いたグラブラクスのレジスタンスがこれからたどることになる苦難の、その助けになればと集めた未来視の情報。
けれど。
それは後にして、まず、あなたに伝えさせてほしい。
あなたを愛している。
短い再会だったけれど、あなたの姿を見られて、あなたの声を聞けて、会えてよかった。
そしてもし叶うならば。
あなたと、もう一度会いたい。
(了)