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088 この男前が…

天下茶屋高校の初戦。

男子1500mに出場した能勢豊。。


…負けたわけではなさそうですが…


『泉…なにしとるんや!?(; ・`д・´)

 あんだけ目立ったらアカン言うたのに…』

『スマン難波。(-n-メ)

 つい熱くなってしもうて…』


『あとついでに…

 能勢が負けてもうたがな!!( ・`д・´)』

「…おぉい。俺の勝敗はついでか??(-_-;)」



 記録会の1500m五組目。。


 トップを走っていた能勢は泉の指示通り

 ラスト200mからロングスパートを仕掛けた。


 おかげで周囲の仕掛けに惑わされることなく

 いい形で逃げ切りをはかれたのだが…


 …スタミナ不足の能勢はゴール直前で失速。。


 一度は振り切りかけた報緑の二人に、

 最後の最後でかわされて三位に終わった。


 初戦としては善戦ではあるが…

 勝てたレースを落としたとも言える。。


 せやけどみなみが敗戦に憤っているのに対し

 実力者たちの評価は違うようで…



「けどな難波。目立ったことはともかく…

 俺はあの策で正解だったと思うぞ。」

『放出…何であんたが泉の味方をすんの??』


「…レースの分析に味方も何もないよ。。

 仮に能勢が最終コーナーで囲まれていたら

 おそらく潰されてただろうし…」

『…だろうし??』


「あそこでスピードアップをしたからこそ

 想定以上の結果が出たんだ。

 目標タイムを5秒も上回れたんだぞ。」



「…ボクも放出と同意見だ。」

『千林さん。。そんなに良かったですか??』


「…だって記録会だぞ。

 この時期に4分09秒台なら望外の好成績だし…」

『…だし??』


「後輩にあんな走りはして欲しくないんだ。。

 …ボクでさえそうなんだから…

 師匠の佐野なら苛立って当然だよ。」

『…そうか。千林さんも報緑OBでしたね…』



 その通りなんや。。


 能勢が勝負に拘らずに大逃げを打ったことで

 思いがけずにペースが上がり…


 上位三名は望外の好記録を出したんや。。


 …能勢のタイムは4分09秒8。

 心配されていたラスト一周も63秒で回り、

 駆け引きに惑わされることもなかった。


 …そして泉の後輩は二人とも4分09秒0。


 二人とも初めて公式記録で4分10秒を切り…

 一軍昇格を確実にしたんやて。。



『別にアイツらのことはどうでもええが…

 ウチには責任があるから。。』

『…責任って??』


『…駆け引きを教えたんはウチやから。。

 でもおかげで楽な勝ち方を覚えてしもうて…

 こんな場で他人の邪魔するようなこと…』

『…泉がその責任を感じんでも。。』


『…せめてウチが報緑の誘いに応じてたら…

 アイツらもっと強ぅできてたのに。。』

『……(・.・;)』



 そうか。泉のヤツ。

 見た目は乙女な女子高生やけどその実は…


 …責任感に溢れた男前やから。。


 いや。実はこういう男気に…

 男とか女とかはあまり関係ないから。。


 けどこの男気に誰よりも礼を言いたいのは

 他にもいるわけで。。



『…名谷はん。。なんで突然。。』

「おう(・v・)。オハギの姉ちゃん。

 ちょっとジャマしていいか。」


『…けど名門報緑の監督はんが…

 こんなとこで油売ってええんでっか??』

「…よくはないけどな…(#^v^#)

 スケベな記者が油を売るよりはマシだろ。」



 …訪ねてきたのは…報緑の名谷先生。。

 ワシら陸上競技者にとっては超のつく有名人。


 けど…身近な人もいるようで。。



「…ご無沙汰してます先生…

 でもそれって俺のことスよね。。(´・n・`)」

「おぅ。久しぶりだな千林。('ω')

 今日は記者としての取材か??」


「って…スケベって何です??( ゜Д゜)」

「…千林お前なぁ。。(*´ω`*)

 俺にすべて言わせるのってのか??」


「いや…あの…その。。(;'∀';)」

 ははは。(*^ω^*)別に怒ってるわけじゃない。

 だがたまにはウチにも取材に来いよ。」



 みなみ…全て話してたらしい。。


 …けどそのおかげやろうか。。

 千林旭という共通の話題を得たせいか

 二人は意気投合して…


 …こんな関係を築いたらしい。。


 ということは当然…

 天下茶屋駅伝部の全てを知ってるわけで…



「…ということだよな、佐野くん。。」

「…なんで…( ゜n゜)

 先生はワシやってわかったんですか??」 


「…そりゃろうだろう。。

 島本も三島も俺の教え子だぞ。

 女子では並んで走ることさえ無理だろう??」

「…そりゃそうでしょうな。(´・ω・`)」


「だが…こんな事情があったとはな。

 キミを獲れなかったのもやむを得ないか。。」

「…スンマセン。。(´・ω・`)

 あんなに熱心に誘っていただいたのに

 不義理してしまいまして…」



 あとで聞いた話やけど泉は…

 ホンマは報緑に進学する予定やったんやて。


 それがこんな事情やから…

 入学直前に理由も言わずに電話一本で

 断りを入れたらしいんや。。

 

 でも…男子校での寮生活はムリやから。。


 …泉にとっては陸上よりも…

 大きな選択をしてしもうたんやから。。


 それだけの不義理をしてでも選んだ道。。

 今さら放り出せんわな。。



 とはいえ…名谷監督にバレたんや。

 他に気付く人がいないなんてありえへん。。


 早いとこユニフォームに着替えた方がええぞ。

 競技場でその服装は目立ちすぎる。。



「…わかりました。(´・ω・`)

 とりあえず着替えてきますから。。」

「…そうしてくれ。

 さすがにその格好には言いづらいからな。」

「…何をですか??」


「1500では不細工なレースをしたがな。。

 午後からはそうはいかん。(`・ω・´)

 5000には主力を揃えてきたからな。。」

「…どういうことですか??」


「…佐野くんにはウチの主力をぶつける。

 本来なら同僚となっていたはずの男たちと…

 その身を以て対峙してほしい。(`・ω・´)」

「……買い被りですわ。。(・.・;)

 ワシは…復帰してまだ半年でっせ。。」


「…そう言わないでくれ。。

 逃がした魚は大きい方がむしろ喜ばしい。」

「…ふん。さすがは名谷先生や。。

 そこまで言わはるんでしたらやむを得ません。

 ワシと我が校の主将が…

 報緑を迎え撃ったりますわ。(; ・`v・´)」


「…さすがは言ってくれるな。。

 ピンクのワンピには似つかわん男前が…」

「…それはこっちのセリフですわ。。

 ワシごときに負ける雑魚は育ててまへんわな。。」



 …おいおい…ちょっと待て。。(´゜д゜`)

 報緑の監督相手に喧嘩を売ってどうすんねん。


 しかもワシも共々って…

 平和を愛する男を巻き込まんでほしい。。



 とりあえず…落ち着かんとアカン。。


 まずは泉を目立たんように着替えさせること…

 そして…5000mでベストを尽くすこと。。


 それ以外にすることはない。。



「…じゃぁ着替えてくるわ。( ・`v・´)

 みんなもあと三時間ほどでスタートやで。」

「まぁ…気合が入ったんはええけどな。。

 …地声は違和感あるなぁ…(´-ω-`)

 それより泉はどこで着替えるんや??」


「ああ。この競技場には用具置き場があるんや。

 誰も寄り付かんから鍵さえ閉めれば…」

「まぁ…そういうことなら。。

 それよりワシらも着替えなあかんな。。」


「…それとも一緒に気着替えよか??(#'ω'#)」

「なんか…イヤや。。(´-ω-`;)」



 …その通りや。。

 なんやかんやであと三時間。。

 ワシら駅伝部の本番の5000mやけど…



「…それより忘れてやるなよ。

 そろそろ招集だぞ。(; ・`v・´)」

『…そうですよね、千林さん。(´^v^`)

 名谷先生が帰ってから妙に饒舌ですけど…

 私ならもう準備万端ですよ。』



 そう。。

 能勢に続く第二陣はワシらではない。。


 女子3000m…最終組。。


 いくら女子の出場者の少ない大会とはいえ

 最高水準の最終組を戦う…



 阿倍野遥の出番は…あと一時間後。。




性同一性障害であるがゆえに

男子校には行けなかった佐野泉。。


けど性同一性障害の人のすべてが

女々しいわけではありません。。


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