006 駅伝は好きか??
駅伝大阪府地方大会…
天下茶屋高校は昇の快走も実らず…
惜しくも入賞を逃しました。。
『…そっか。惜しかったんやな。。』
「…ああ。あと一人抜けてたらなぁ…」
『あと一人って、前とはどれくらいの差やったん??』
「……わからん。」
『…わからんって…なんやねんそれ??』
「いや…実は最後の方の記憶があんまりないんや。。」
『…???』
…家に帰って…ワシはみなみに説明した。。
自分が感じた不思議な感覚。
体から疲れが消えて…重さが消えて…景色も消えて…
いつまででも走っていられそうな心地よい感覚。
5年近くも走ってきて…初めてや。
『それって…ランナーズハイとちゃうか??』
「…ランナーズハイ??それ…聞いたことあるで。。」
『ああ。知り合いのオッサンも何回か経験したそうや。
けどオッサンは怖くなって途中で止まったらしいけど…』
「誰や?そのオッサンって??」
『…それはともかく…ホンマに怖いらしいで。。』
「…せやから誰やねん??」
ランナーズハイ…
いつまでも走っていられるような不思議な感覚…
気持ちよくて心地よくて…羽が生えたようにさえ感じる。
けど…同時に怖くなる。
自分が壊れるような焦燥感…未知なる感覚への畏怖…
…だからそこで足を止める者も少なくない。
冷静な感覚が残っていれば…その恐怖は耐え難い。。
『それはそうと、それ…なんや??』
「これか?表彰状や。区間賞の…」
『マジかいな??あんた…表彰なんてはじめてやろ!?』
「せやな。…最後の最後でええ締め括りや。。」
『って…15分13秒!?ウソやろ!?凄い記録やんか。。』
「せや。自分でもビックリしとるんや。」
『みんな褒めてくれたやろ!?』
「いや。ワシは…陸上部を潰してしもうたから…」
『…そうか…』
…みなみは震えた。。
…もしかして…もしかすると…
…ランナーズハイを体感しただけでこの記録…
これまでのベストタイムを1分近くも…
昇には…信じがたい伸び白があるのかもしれない。
いや、河川敷の悪路でこの記録なら今すぐでも…
だけど…昇は気づいていない。。
それどころか自分を責め…
認められることを拒絶しているかのよう。。
『なぁ昇…二つだけ聞いてええか??』
「べつにええけど。。」
『あんた…怖くなかったか?今日の感覚…』
「そりゃ怖かったけど…また味わいたいかな。」
『じゃあまだ走りたいんか??』
「そりゃ…できれば走りたいけど…」
…けど無理や。
陸上部はもうないんや。
グラウンドも来年度早々に壊される。
もうワシに…走る場所はない。。
「わかっとるよ。どうせ今も仲間はおらんも同然や。
これからも今までと同じ。一人で走るだけ……」
『じゃあ…もう一つだけ聞いてええか?』
「…なんや??」
『昇あんた…駅伝は好きか??』
もしかしたら次回…
話が動き出すかもしれません。。
なお今は、駅伝にちなんで42時間毎の定期掲載です。。
次回はえーっと。。10月10日10時の予定です。