066 駅伝部の主将は??
駅伝部に大物が加わりました。
けどそうなると部としてはちゃんとすべきで。。
…それからしばらく沈黙が続いた。
時間にすれば数分やろうけど…
…随分と長い時間がたったような気がするけど…
…まぁその…冷静になるとこっぱずかしいけど…
…とにかく我が駅伝部には、あの放出京喬が加わる。
播州工業でエースやった超大物ランナーが…
これでうちには<北摂の白兎>と<泉北の黒豹>…
地元同世代の…
中距離最強と長距離最強が揃ったことになる。。
…こんな場末の頭数も足らん駅伝部に…
奇跡としか言いようがない。
もっともそのかわり…
それ相応の重荷を背負うことにはなるんやけど。。
「とりあえず…あらためて自己紹介するよ。。
放出京喬です。
その…これから世話をかけるけど…ヨロシクな。。」
「…こちらこそよろしく…大歓迎です。。」
『…よがっだ。…ごれでいいんでずよね…放出主将…』
「おいおい阿倍野。いつまで泣いてんだ??」
『だって…主将の居場所が…見つがったがら……』
「…わかったよ阿倍野。…でも鼻水はつけるな。。
あと主将はよせ。ここの主将の天保山くんに悪いぞ。」
「いや…ワシは主将やないですけど…」
「あれ??じゃぁ誰がこの駅伝部の主将なの??」
…あれれ??そう言えば主将っておったっけ??
決めてなかったような気がするけど??
っていうかそもそもが寄せ集めの集団やから…
リーダーなんて必要なかったのかも。。
…けどもうそろそろ決めなあかんよな。
じゃあ…誰が適任なんや??
『そんなん…言い出しっぺに決まっとるやろうが。。』
「なんやみなみ。お前、主将をやりたいんか??」
『…何を言うとる。ウチはコーチやで。
主将は選手がなるって決まっとるやろう。。』
…ってことはもしかして…
まさか!?…冗談やないで!!?
「ま…待てやみなみ。…ワシはその…」
『昇が主将でえぇと思う人。手ぇ上げて。。』
「(一同)はぁい。(^O^)/」
…全員一致って…信じられへん。。
何で放出くんまで一緒になって手ぇ上げてんの??
…だってワシは人付き合いが苦手で人望もなくて…
実力だってワシより格上が二人もおるのに…
…けどみんなワシを乞うように見とる…
ワシみたいなモンを本気で信頼してくれとる。
さっきまで放出くんの重荷ばかり気にしてたけど…
…ホンマの一蓮托生はワシかもしれん。
なら…ここは一つ…<(`^´)>
「よし…それやったら主将就任のあいさつを…」
「…それより腹減らんか??」
「そう言えばメシ食わんままに昼休みが終わって…」
「でももう学食は閉まってるかも…」
「そうだな。じゃぁみんなで外にメシ行くか。」
「賛成。(^v^)/」
…ちょ…ちょっと待て。。
みんなでメシに行くんはええけど…
…主将就任のあいさつはどうなった??
それにワシは…昼は弁当やのに。。
(オカン…毎日ありがとう。。)
「…せやけど高い店は勘弁やで。。」
「けどこの辺で安い言うたら吉乃家しかないぞ。
女の子もおるのに牛丼屋はちょっと…」
『いいですよ。ぜひ連れてってください。
私、吉乃屋って一度行ってみたかったんです。』
「…ワシは…主将としてその…(´・ω・`)」
「そうか…じゃぁ今日は俺がおごってやるよ。」
『えっ??でもこれは放出主将の入部祝いですよ??』
「おいおい…なんで入部祝いなんだよ!?
あと主将はよせ。ここではお前の方が先輩だろ??」
『じゃぁ…京喬ちゃんのお祝いってことで…』
「阿倍野お前…調子に乗りすぎだぞ。」
『てへ…割り勘でいいですって。』
「…ワシは…(´・ω;`)」
『おいあんたら…ウチらは無視か…』
「だって泉。お前は吉乃家の常連とちゃうん??」
『能勢!!何でアンタが知っとるんや!?』
「あれ?言うたらマズかった??
それに難波はそんなん気にするタイプか??」
『べつに。とっとと行こうや。。』
「……ワシって……(´;ω;`)」
…というわけでみんな吉乃家に行ってしもぅた。
残された弁当組はワシと赤阪だけ。。
新主将は…完全に無視されてもうたかも…
「なぁ赤阪…ホンマにワシが主将でエエんかな??」
「…天保山は何を気にしてるの??」
「だってワシは不器用やし…人望もないし…
今かて完全に無視されてしもぅたし…」
「けど…それぐらいの方がいいんじゃないかな??」
「おい赤阪。それ…どういう意味や??」
「…だって天保山は主将なんだよ。
いや…これまでもずっとボクらの中心だったんだ。
ならば平部員は…開放するぐらいの方がいいと思うよ。」
「おいおい。平部員って…」
「…むしろ今はボクが緊張してるぐらいさ。。
主将と二人きりで昼飯なんてさ…」
「おいおい赤阪…お前、ウソやろ??」
「はは。緊張なんてウソだよ。
けどそんな天保山だからいいんじゃない??
主将だからって…今さら特に変わる必要はないよ。。
足りない分はボクらもカバーするから。(^v^」
…なんかな……
本人は意識してないんやろうけど…
ここしばらくの赤阪の成長ぶりが目に見えて分かる。
いや…赤阪だけやない。。
走りだけやなく…みんなすごく成長してると思う。
目標を持って本気で何かに取り組むこと。
わずか数か月やけど…みんなそれができてるから。。
じゃぁ…ワシも成長してるんやろうか??
成長した仲間たちに主将を任されるくらいに。。
それやったら不器用でも…人望がなくても…
皆に支えてもらいながらでも…
駅伝部の主将を務める。
覚悟を決めるしかないんやろうな。。
けど…何をしたらええんやろう??
リーダーなんてワシ…やったことないから。。
天保山主将。。
本人は自覚がないようだけど…大丈夫??




