062 駅伝選手としての恥辱
転校生の放出京喬。。
実はとんでもない過去を抱えているようで…
「ば…播州工業を途中棄権させたぁ!??」
『そうや。…コイツ…放出京喬はその張本人なんや。』
「…そ…それは本当なんですか??放出くん…」
「……隠しても仕方ないだろうな。。
陸上関係者には知れわたってることだから…」
…どうも…思ってる以上に有名な事件らしい。。
放出くんが言い終わる前に赤阪がスマホを出して…
その辺の記事をいっぱい見つけてくれた。。
…それにしても泉のヤツ…キツすぎるやろう。
女の姿してる理由を根掘り葉掘り聞かれたらしく、
倍にして返すってのは分かるけど…
他にも理由があるんかな??
…とはいえ本人は答えにくそうなので
ネットで関連記事を集めた結果をまとめてみると…
…放出京喬はWikiで調べられるほどの有名人で…
播州工業のエースランナーとして期待されてたけど…
去年11月に行われた兵庫県予選三区の7キロ地点で…
膝の棚落ちを起こして…
そのまま棄権をしてしまって…
その後…自主退学したと書いてある。。
…たしかに駅伝の途中棄権は物凄く重い。
…これに匹敵する懺悔は…
…少なくともスポーツではそうあるもんやない。
…サヨナラエラー??
…PKを外した??
……比較にさえならんやろう。。
…襷を託された以上、次の区間に繋ぐのは…
…駅伝選手の最大にして最低限の責任。
…そして一度走りだせば選手はたった一人。
…仲間にできるのは声援だけ…
…親兄弟でもその身に触れることさえ許されない。
…だからこそ選手は全てを賭してその責任は果たす。
…責任を放棄するは駅伝選手として最大の恥辱。
…なのに…棄権なんて…
…それに…なんで退学なんかしたんや??
だって駅伝では誰かのせえにもせんのが約束なんや。
襷をつなぐのが選手の最低限の責任なら…
選手を責めないのは送り出した者の最低限の責任。
それでもなお許されんかったんか??
それとも…
「たしかに俺は…許されなかったわけではない。。
それでも…播工には残れなかった…」
「…自責の念というわけ??」
「……俺は…許されないことをしてしまったのに…
そんな俺を励まそうとする仲間の顔を見るのが辛くて…
逃げるように実家に一時帰宅したら…
どうしても学校には…戻れなくなっていた。。」
「それって…もしかしてメンタルの問題??」
「赤阪くんだったな。…その通りさ。。
しばらく精神科にも通院したけど思うようにいかず…
…それで…播工を退学したというわけさ。。」
「…じゃぁもしかしてもう……」
「ああ。それで陸上部のない学校を探したんだ。。
なのにまさか…駅伝部があるとはな…」
…壮絶やな。相当に自分を責めたんやろう。。
でも同じ立場ならワシも…自分を許せんやろう。。
それに…そりゃそうやよな。
普通ならば播工に残って責任を果たそうとなるはず。
となるともう…
『なぁ放出…ホンマにもうあかんのか??』
「…ああ。今の膝の状態では…とてもダメだな……」
『…それに…なんで棄権なんかしたんや??
残りたった1キロで…歩くくらいはできてたのに…』
「…でも…膝は落ちてたから。。
ムリをしてたら選手生命は完全にアウトだったし…
下手したら一生まともに歩けないってことも…」
『……言うてることは分かるけどな…
放出よ。。ワレにはそれを言う資格があるか??』
「…たしかに…あれは悪かったと思ってる。。
だからこそ反省して故障には人一倍気を使ってた。。
自分にも周囲にも…ムリはさせないように…」
『はっ??笑わせんなや!?
そんでその結果、自分の選手生命も危ういまま…
チームも…自分の気持ちさえも救えんかったんか??』
「……」
「おい泉…それはさすがに言いすぎやど。。」
『…そうやな。。けどな放出よ。。
ワレさっきのセリフ…あいつの前でも言えるか??』
「あのなぁ佐野…ええ加減にせぇよ。あれはもう…」
『…そうもいかんよ。ご本人さんが来てしもたから。。』
「えっ…まさか…」
『は…放出主将???』
…遅れて部室に入ってきた遥…
部室の入口でメチャクチャ驚いとる。。
…けど放出くんも同じくらい驚いとるし…
この二人…何があったというの??
と言うか放出主将ってまさか…
…遥の選手生命を潰した…あの主将さん??
駅伝選手として最大の恥辱を味わい
最強のチームを潰してしまった経緯には…
色々と絡んでいるようです。。




