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054 同じことをしていては…

正月気分もあけて…

いつも間にか三学期が始まってます。。


「ようし!!今日も頑張っていくでぇ!!」

「…ところで天保山。今日の練習メニューは??」

「…おとといと同じや…」


「じゃあ明日の練習は??」

「…昨日と同じや…」

「テンドンか!?なんや飽きてきたな…」


 …年明けから練習メニューがワンパターンになってる。

 正確には、三つしかない練習メニューの繰り返し。

 ただでさえ飽きっぽい関西の高校生やのに…


 テンドンもええ加減にせんと飽きるっちゅうねん!!



 …その原因はみなみコーチが不在やから。


 これまでは一応は毎日練習メニューを作ってたのに…

 最近は練習にも出てこぅへんようになった。


 …あいつ何しとるんや??

 家に帰ったら説教せなあかん…



『ただいまぁ。あれ昇…来てたん??』

「遅いぞみなみ!!ここしばらくずっと…

 練習にも来んとどこほっつき歩いたるんや!?」


『ああ…ちょっと…』

「まさかお前…不良になったんか??」

『ちやうちゃう。…もう少しで言うつもりやったけど…』


 …みなみがとり出したノート書かれてたのは…

 練習メニュー??こんなんどこで作ったんや??



『実は…他校を回って練習メニューを教わってたんや。』

「…他校ってどこや??」

『大阪の西風にしかぜ・奈良の聟辨せいべん・京都の略南りゃくなん・兵庫の報緑ほうりょく…』


「な…全部去年の代表校やないか??」

『そりゃそうやろう。都大路を目指すんなら…

 都大路に行った学校に習わんでどうするんや??』


「それで…ちゃんと教えてもらえたんか??」

『どこも気前よう教えてくれたよ。特に西風とか…』

「西風が??敵になるかもしれんのに??」



『今日行った報緑なんかメチャクチャ歓迎してくれたで。

 茶菓子まで出たんや。また行こかな??』

「…みなみお前…それで口に餡子がついとるんか??」


『地元名物のササエのオハギやって。昇も食べぇや。』

「…手土産まで…ってこれ…美味いがな。。」



 …というわけでオハギに騙されたみたいやけど…


 遊びに行ってたわけやないのは確かやった。

 実際…翌日から強豪校と同じ練習をすることになった。


 けどこれまでの練習メニューとは明らかに…異質や。



『よし…まずはウオームアップからや!!』

「名門のアップって何するんや??」

『とりあえず3キロ…9分ジャストで走って来い!!』

「はぁ??アホかぁ!!」


 …いきなりメチャクチャや…


 ワシは充分に体を温めなそんなタイムでは走れん。

 泉はなんとかこなしたけどもうヘトヘト…

 他の面々は…言うまでもあるまい。



『ようし…次は400mダッシュ…10本や!!』

「えっ??いきなり??」


『終わったらインターバルトレーニングやで!!』

「ムリや…ワシら絶対に…壊れる…」

『はよせぇや!!』

「…はい…」


『終わったらビルドアップ!!行くで!!』

「…待てやみなみ。…ペースは?距離は?本数は?」

『ところで…ビルドアップって何??(;'∀')』

「お前…そんなんも知らんと指導してたん???」



 …なんやグダグダになってしもぅた。。


 みなみのヤツ…各校のメニューを組み合わせて、

 一番キツイ内容を選んだらしいけど…

 回復力とかなんも考えてないんやろうな。。


 …もう誰も声もでない。。


 ワシは…名門の練習にはついていけんみたい。

 あの泉でさえメニューを最後まではこなせない。

 他の面々は…やはり語るまでもない。。


 …あとみなみや。


 せっかく練習メニューを教えてもらったのに

 あまり理解できてないみたい。

 練習後にワシと泉で解説を求める始末や。


 こんなんでホンマに…ワシらは勝てるんか??



『…スマンな…遅ぅまで教えてもろうて…』

「ええよ。それより練習メニューは練り直しやな。」

『せやな…いきなりはムリやったな…って…』

「おい…あれって??」


 …さっき目の前を走りぬけたのって…やっぱり…


「あ…赤阪!??」

「あれ??天保山に難波。今まで残ってたの??」

「お前こそ…練習でヘトヘトのはずやぞ…」

「…でも結局は練習メニューをこなせなかったからね。

 せめて残った分だけでもやっておこうと思って…」


「もしかしてお前…これまでも??」

「…そうだよ。駅伝部になってからはほぼ毎日…

 部活での練習とは別に走りこんでるよ。」

「けど…なんでそこまで…」


「…だって僕はみんなより遅いから。。

 同じことをしてるだけでは追いつけないから。。」



 …そう…やったんやな…


 才能がないと思われた赤阪がここまでこれたんは…

 他人と同じ努力ではなかったからやったんか。

 しかも…誰にも言わずに。。


 だとすれば…ワシは恥ずかしい。

 名門と同じ練習をすればいいと思っていた自分が…


 だって弱者が同じことをしていては…

 絶対に追いつくことはでけんから。


 …名門と同じで音を上げててはあかん。

 勝ちたいなら…それ以上をやらんとあかん!!



「ようし赤阪!ワシも付き合うで!!」

『おい昇…付き合うって赤阪と一緒に走る気ぃか??』

「…せやかてワシも練習メニューが残ってるからな。

 悪いけどみなみ、ワシの鞄と上着を持って帰ってくれ。」


『…って待てや。あんたウチを一人で帰らす気ぃか??』

「別にええやろう。みなみなら警察ポリパクられへんて。」

『アホか!!ウチがもし襲われたら…っておいぃ!!』



 …みなみが止める間もなくワシは赤阪と走り出した。

 だって他校と同じことしていてはアカンから…


 だってワシらは…都大路に行くんやから!!




前を走る者に追いつき追い抜くには

同じペースで走っていてはいけません。


同じことだけしていては挑戦者は…

…必敗です。


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