表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/240

047 怖がるワケにはいかんから

駅伝部の目標決め。。


次は赤阪の番です。。


『えーと、昇と能勢と浜寺の目標が決まったから…

 次は五区か六区担当の赤阪やな。』

「…そうだね。でもなかなか伸び悩んでて…」


『能勢と同じ練習をしてるけど、1000mのタイムは??』

「それが…やっと3分をきったところで…」



 …1000m…一キロを3分。


 これは長距離競技の基本ともいえるペースや。

 ワシはそのペースで10キロを走る目標を立てた。

 ちなみに世界レベルではフルマラソンのペースらしい。


 …逆に言えば、これが全力ではダメなんや。


 このペースでどれだけの距離を走れるかが問題やのに…

 一キロで終わりでは話にさえならない。

 能勢と同じ理屈さえ通用せんねや。


 …けど赤阪には能勢とは異なる特長がある。

 同じスピードで走り続けることはできるんや。

 事実、3000mでは10分を確実に切れる。


 1キロでは能勢より劣るけど3キロでは勝る。

 この長所を生かすとすれば…



『3キロを10分なら1キロ当たりは??』

「…3分20秒のペースだね。」

『そういうことなら…毎日1秒ずつ上げようか。』

「1秒??」


『ああ。1キロあたり1秒ずつなら怖さはないはずや。

 明日は3分19平均…明後日は3分18平均や。

 同じペースで走り続けられるのなら可能やろう。』

「それなら何とか…」


『その調子で一か月…30日続けたら能勢と同じや。

 一キロ平均2分50秒。三キロを8分半やで。』

「ア…あ…アホかぁぁぁ!!」

 


 …相変わらずアホなこと言いやがる。

 ここまで4人続けて…アホかぁばっかりや。


 そんなに毎日、速くなれるわけがないやろが。。

 いつの間にか一キロ3分を切っとるし…


 今まででも一番ムチャな理屈とちゃうんか??



『なぁ…泉はどう思う??』

『それはさすがに無茶苦茶やと思う…けど…』

「…けど??」


『…赤阪が怖がってるってのは事実なんよな。。』

「怖がってる??ボクが??」


『ああ。普通の中高生レベルのランナーやったら

 前半より後半のペースが落ちるもんや。

 せやのに赤阪にはそれがない。常に一定や。。』


「…それは良いことでは??」

『…試合ならな。けど練習ではアカン。

 …強くなるにはもっと自分を壊さなあかんよ。』


「自分を…壊す??」

『そう。筋トレと同じ理屈や。。』



 …それは…筋肉の超回復のことやな。。


 筋組織は壊れると元通りに回復するんやけど、

 その際に元より大きく復元されるんや。

 その性質を利用して、運動で筋繊維を壊して、

 回復させて大きくする…それが筋トレ。。


 つまり赤阪には限界以上の速さで走らせることで、

 壁を壊して今より少し速くなるよう超回復させる

 …ってわけやけど…



「とはいえさすがにその目標はムリやぞ。

 筋トレかって、ホンマに壊れたら回復せんのに…」

『けど壊れるまでやらな、超回復もないで。』


「それで…ホンマに壊れたらどうする!?」

『…確かに今の目標なら…壊れてまうやろうな…』

「じゃぁ…どうするんや!??」


『とりあえず目標は下げよ。。

 来年の府大会…10か月後に達成すればええんや。

 …10日で1秒なら壊れへんやろう??』

「それでええか、赤阪??」



 …赤阪は考えてる。。


 10日で1秒でも相当にキツイ目標や。

 壊れる可能性を承知でやると言うのか??

 …けど… 



「あんまり…バカにすんなよ…」

「へっ??」

「みんなに無茶な目標をさせといて…

 ボクだけ目標下げるって…あかんやろう!!」


「あのな赤阪…そういうわけや…」

『…そう。そもそも誰かて毎日は成長でけへんし…

 筋肉でも回復には3日はかかるんやで。。』


「…やったら3日で1秒ずつ…それで三か月で…

 三か月後には3キロ8分半を実現したる!!」

「アホかぁぁ!??」



 …赤阪こいつ…みなみよりアホかも…


 およそ陸上を知ってるヤツの発言とは思えん。。

 こんな妄言…なんで真顔で言える???



「だって…ボクは怖がるわけにはいかないんだ!!

 自分のできる範囲で走ってたらあかん!!」

『なぁ赤阪…まさかウチが言うたこと気にして…』


「いや、ボクみたいな弱者は無理を承知でやらな…

 ボクだってそれぐらいの勇気はあるんだ!!」

『…でもそれは蛮勇や。豪勇は臆病で味付けせな…』


「知らんわ!!なんやそれ!?」

『…(´゜д゜`)』



 <武士は豪勇だけではいけない。

  臆病で味付けする必要がある。>


 これは戦国武将・馬場信房の名言。

 文系の連中は日本史の授業で習ったらしいけど…

 今度は理系の連中が理解できていないみたい。


 …ってなんで理系のワシが知ってるの??



 …とにかくも蛮勇はアカンってことで…

 目標を下げようとしたけど赤阪は納得せず…

 結局…3日に1秒ずつってことになってしもた。。


 …滅茶苦茶にもほどがある…



 …とはいえ成長速度は落ちていくもの。


 最初はそれぐらいの目標でやった方がええのかもしれん。

 だって赤阪は納得してるから。

 納得いく理屈なら…怖がることを拒絶した赤阪なら…



 …もしかしたらやり遂げるかもしれん。


 …けどその前に…壊れてしまうかもしれん。。



恐れは必要。。

強気だけが能ではない。。


けど無謀な挑戦のためには…

前のめりもまた必要なんです。。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ