002 ワシには何も言えん。。
新連載二回目です。。
話が軌道に乗るまでしばらくは週に3~4回くらい掲載して、
その後はペースを決めたいと思います。。
なお今回からは主役(昇)目線で描きます。。
…難波家の仏前…
静かに手を合わせる男がいる。。
天保山昇。17歳。天下茶屋高校二年生。
拝んでるのは8年前に亡くなった…
彼の義叔母でみなみの母…
難波みさき。。
『…昇。お母ちゃんに何を話したん??』
「何もないよ。。ワシには…何も言われへん。。」
『…気にしすぎやって。あんたのせいでもないのに。。』
「…けど…気にせんなんてでけへんよ。。
みなみにとってはたった一人の肉親やったのに…」
『そやけどもう8年やで。…さすがに…ええやろ。。』
「もうええやなんて…一生言われへんと思う。。」
…あれはもう…8年前か。。
30過ぎて独身やったオッちゃんに…
ある日突然…嫁がきた。。
嫁さんこと…みさき叔母ちゃんは優しくて…
ワシを息子同然に可愛がってくれた。。
せやからワシは…叔母ちゃんが大好きやった。。
そんなみさき叔母ちゃんの連れ子が…
…みなみや。。
…当時のみなみは明るく気さくな9歳の少女。
ワシだって同い年の笑顔のたえない少年。
義理の従兄妹になったばかりとはいえ…
二人が仲良くなるのに時間はかからんかった。
当時のワシは…
少年野球に打ち込み…友達もいて…
やさしい家族が増えて…笑顔がたえなくて…
もしかしたらワシの人生の中で…
一番の時期やったのかもな。。
けどこの平穏を…
危険ドラッグ…いわゆる脱法ハーブの常習者…
一台の暴走車が一変させたんや。。
はねられたワシは…凄惨なまでの重傷を負った。。
右腕には後遺症が残り、少年野球を続けられなくなった。
他に友達のいなかったワシは…急速に孤立した。。
さらには顔と上半身には深い傷跡が残った。
顔面神経損傷の後遺症で表情を…笑顔を作れなくなった。
周囲から気味悪がられ…新たな友達はできなかった。。
…平穏やった日常は根底から覆され…
ワシの日常は…孤独と哀しみと…
…走ることだけにになった。。
けど…愚痴を言うことは許されない。。
…だってワシは…こうしてここにいるから…
…でもみさき叔母ちゃんは…
…身を挺してワシを庇ってくれたから。。
…だからワシはいまだに不遇を抱えたまま…
特に母親を失ったみなみには…
いまだに申し訳ない気持ちで一杯なんや。。
『…それより早いとこ帰りや。。
近所や言うても夜道はいろんな意味で危ないで。
それに駅伝の地方予選は三日後やろう??』
「…せやな。今はとにかく…
今度の駅伝で6位入賞は果たさなあかんから。。
そして府大会に行くんやからな。。」
『せやな。これを最後に陸上部は解散らしいやん。』
「…は??何のことや??」
『えっまさか…知らんかったん??』
「解散??陸上部が??」
『ちょっと今頃になって何を言うとるんや??
あんた…人づきあいを避けるのも大概にしときや。』
…ウソやろう??
そういえば最近みんなの様子がおかしかったけど…
…そういうことやったんか??
つまりこの地方大会で6位に入れなければ…
府大会に進めなければ…
陸上部は…あと三日で解散??
…ウソやろう??
人生は一つの切欠で変わる。。
悪い切欠を他人に与えるのは絶対に避けないと…
もちろんドラッグなんて以ての外なのですが…
いまだに刑罰は甘いんですよね。。