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025 命掛けで引き出したモノ

泉とみなみの1000m競争。。

とさえ言えない極端なハンデ戦は…


予想に反して…接戦です。。


『逃げな…逃げ切らな…』


 これは…もはや1000メートル走ではない。。

 みなみは残りはまだ一周半…600mもあると言うのに…

 あと半周…200mだけを全力で逃げようとしとる。


 …一方で泉のペースは衰えない…どころか上がっとる。。


 【北摂の白兎】の異名は伊達やない。

 兎が跳ねるが如き軽快な走りは見る者をも引き付ける。


 そんな一流のアスリートが素人の挑発にムキになって…

 大人げないとはいえ…凄すぎる。。



 …けどそんな一流に計算外が起きた。。


 ラスト一周、残り400mを過ぎたあたりから…

 周回遅れが続々と出てきたんや。。


 …しかもみんな陸上経験のない女の子。

 通常、周回遅れの選手はコースを譲ってくれるんやけど、

 そんな慣習は知る由もない。。


 しかも陸上選手の半分以下というありえないスピード…

 このスピード差でぶつかれば…大事故になる。。


 陸上界ではありえない事態にさすがの泉も戸惑った。。



「くそ…このままでは…」


 目の前には周回遅れのランナーがわんさかいるんや。

 とはいえ今はバックストレート…

 なんとか直線に入ったからまだしも…


 …このまま最終コーナーに入れば相当な大回りになる。

 ラスト一周に入ってから…そのロスは計り知れない。



 一方で、前には誰もいないみなみは必死で逃げた。

 最終コーナーを回ってラスト(?)100mの直線。。


 それとほぼ同時に泉が800mを通過。。

 さすがに1分59秒と落ちてきた。


 …とはいえこの悪条件で2分を切ってくるの??

 …800mを1分台。。

 …それだけで高校では相当なレベルやのに…


 これは1000m走…ラップタイムやぞ!!



 けど…泉の真骨頂はここから。。

 そこからさらにロングスパートに入ったんや。

 最終コーナーで大回りをする以上ここから上げないと

 ロスが大きいと踏んだんやろうけど…


 …コイツどんだけ余力が!?



 みなみも…まるでラストスパートの様相や。

 本当はまだあと一周以上あるってわかってるのか??


 ラスト50mを切ってみなみが後ろを振り返ると…


 …来とる…

 すでに最終コーナーを曲がり終えた泉が…


 兎やない…捕食者の勢いで迫って来る。。



 けど…最後の力を振り絞って…

 どうにかこうにかあえぐような表情で…


 みなみはなんとか600mを通過した。

 …ほぼ予定通りの2分26秒で…


 そしてその直後…

 泉がゴールに飛び込んできた。


 あれだけ大きなロスをしながら…

 タイムは圧巻の…2分28秒。。



『ふぅ…さすがにあかんかったか…』


 …勝負に敗れた泉。

 …だが表情は晴れやかや。。


 …っていうか、いつもの高い声に戻ってるし…

 久々に全力疾走して気分ええんやろう。

 みなみ以外は一人残らず周回遅れにしたんやし…


 対してみなみは…それ以上は走れんかった。。


 なんとそのまま完走できずにリタイヤしたんや。

 いくら心臓に持病があるとはいえ…

 …陸上経験者としては屈辱的な結果やろう。。


 まったく…勝ったのはどっちかわからん…



「おい。みなみ…大丈夫か!??」

『…大丈夫や…。ちょっと…ムリして…もうたな…』

「アホ!!こんなどうでもエエ勝負に無理しよって…」


『はは。確かにアホや…けど…ウチは引き出したで。。』

「…えっ??」


『…佐野泉の…北摂の白兎の全力をな。。

 あいつ…ホンマは走りとぅて堪らんみたいやから。。』

「……」



 …そういうこと…なんか??


 …みなみのヤツたったそれだけのために…

 …文字通り命懸けで。。。

 


 …別に泉が悪いわけやない…

 …勝負に負けたわけでもないんやけど…


 なんや…落とし前をつけたい気分やな。。



…誰が悪いわけでもない。けど。。


男としてはこのままでは終われないよな。。

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