021 性同一性障害…佐野泉の場合。。
駅伝部期待の人財は見つかったものの…
問題はありそうです。。
『…なぁあんたら…なんでその…異名を知ってるん??』
「異名って≪北摂の白兎≫のこと??
そりゃ佐野くんは有名な選手やから…」
『…そうか。こんなとこまで知れとったんやな。。
高槻の自宅から離れた学校に来たつもりやったけど…』
「それより…佐野くんはなんでそんな服装を??」
『天保山やっけ。…その…佐野くん言うのはやめてんか…
この格好を見りゃ事情はだいたい分かるやろう??』
「…じゃぁなんて呼んだら??」
『泉でええよ。。…みんなそう呼んでるから…』
…佐野泉曰く。。
彼…いや彼女はいわゆる性同一性障害。。
昔で言うところのオカマ。。最近でのMtF。
つまり…≪体は男で心は女≫っ人物らしい。。
…陸上選手と活躍してた中学の頃には既に自覚していて…
家から離れた学校なら過去を知る者もいないと思って…
この天下茶屋高校を選んだらしい。。
…というのも学校とは入学前に話がついていて…
制服も出席簿もその他諸々も…
女子生徒として扱かってもらえることになったから。。
目立つことはせず普通に女生徒として過ごしたせいか
クラスメート以外には…
その存在はほとんど知られていない。。
そして卒業後は本格的に…治療とかして…
女性として生きていくと決心しているらしい。。
「じゃあクラスメートは…キミを本当の女だと??」
『いや…さすがにそれは公表しとるよ。。
…隠すのは卑怯やからな。。
でもみんな…知った上で普通に接してくれとるよ。。』
「…じゃぁ陸上の選手だったことは??」
『…それは…言ってない。。』
「…けどなんでキミほどの有望選手が陸上から??」
『そりゃ…こう見えて体は完全に男やから。。
まだ医学的には何もしてないから…
本気で走ったら…違和感ありまくりやろう??』
…そういうことか。。
いくら見た目は女らしくてもこれだけの実力者。
本気で走れば…男とまるわかりやろうな。。
だから学校では体力測定でさえ本気は見せない。
その正体を隠すために…
だけど…
「泉はその…身長と体重は??」
『おいおい天保山…あんた女の子に体重を聞く??』
「いや…そういうつもりやないけど…」
『…まぁええけど。。154センチの41キロや。。』
…ちっちゃ。。(;'∀')
しかもどう見ても男とは思えない体つき…
さらに陸上から離れて丸二年…
いくら中学ではトップ選手やったとはいえ…
今の実力はどんなもんやの??
本当にエースになるの??
まぁ不安はつきんけど…
少なくとも校内では最速やろうから…
『それで…ウチに何か用があるんやないんか??』
「ああ。その…ワシらは駅伝部なんやけど…」
『…だからウチのこと知ってたんやな。それで??』
「スカウトに来たんや。駅伝部に…。」
…泉は少し嬉しそうな表情をしたけど…
…徐々に厳しい顔に代わっていった。。
駅伝部からのスカウト…
才能ある陸上経験者なら嬉しいはず…
…でも。。
『…残念やけど…それは無理な相談やな。。』
「ムリって…なんでや??
今でも充分に走れるって言ってたのに。。」
『…せやかてウチは…女子生徒やで。。
苦労して…ようやくなんとか女子高生しとるのに…
それが男子駅伝部に入ったらどうなる??』
「そ…それは…」
…たしかに泉は…男子駅伝部には入れない…
…女子生徒であるには…そこは居られない場所。。
けど泉は…女子陸上にも出られない。
体が男である以上…それは望むべくもない。。
これが泉が陸上をできなかった本当の理由。。
つまりMtfとして生きるなら…
出られる競技はこの世には存在しない。。
事実…その答えは涙声にも聞こえた。。
…なんてことや。
本当に方法はないんか??
これほどの人財が…
こんな理由で埋もれてしまうやなんて…
本当に方法はないのか??
その答えは作者の別の小説で探して下さい。
とはいえ高校生のうちは…
現実的には「ない」というのが答えでしょうね。。




