001 笑顔を失くした男…天保山昇の場合。。
一年間半ぶりの新連載です。
駅伝が好きな方、成長物語が好きな方、スポ根が好きな方、コメディが好きな方。
そして…走ることが好きな方。。
長期連載になる見込みですのでヨロシクです。。
RRRRR…
「もしもし難波です。…えっ、警察でっか??
…天保山昇はたしかにウチの身内でっけど…
はいはい。すぐに迎えに行きますよって…」
…これで何回目??
夜9時すぎ…この時間になるとなぜか警察から電話がかかる。。
「おぉい。みなみぃ。
昇を迎えに行ったってや。今度は天王寺署やそうやで。。」
『ええっ!??またあいつ捕まったん??』
「…はは。まぁあんじょうやってや。店はやっとくから。」
『お義父ちゃん…笑ぅてる場合か!?』
…まったく…なんで笑うんやろ??
自分の甥っ子が無実の罪で逮捕されてるいうのに。
…捕まったのは…義従兄の天保山昇。
ウチと同じ高校二年生なのに…とてもそうは見えない。
180を超える長身。痩せ型とはいえ骨太。かなりの強面。
おまけに顔に深い傷跡があり…訳あって笑顔を作れない。
…そんなわけで昇が夜間に一人で出歩こうものなら、
無闇にポリの仕事を増やすことになる。
まったく…税金の無駄遣いっちゅうもんや。。
…今夜かって一人でランニングをしてただけやのに…
その途中でナンパ男とバカっぽい女を遠目で見ていたら…
…昇を見るなりナンパ男は逃げ出しバカ女は騒ぎ出し…
…誤認逮捕の一丁上がり。ということらしいんや。。
…そしてホルモン屋を営む昇の両親と、鉄板焼き屋を営む
ウチのお義父ちゃんに代わって迎えに行くのは…
義従妹であるウチ…難波みなみの仕事。。
…ちなみに勘違いせんといてや。。
ウチと昇は似てへんで。
血の繋がりはないからな。。
「…すまんな、みなみ。。もうせぇへんからな…」
『なぁ昇。前もそう言うてへんかった??
夜に一人でランニングせんって…約束したよな。。』
「…しょうがないやろ。駅伝の本番が近いんやから。」
『わかるけどな。これで何回目やねん??』
「…まだ…四回目やろ??」
『どアホ!!普通は一回やったら懲りるワィ!!』
…昇はその…かなり社会性が乏しい不器用な男や。
まぁ不器用なのはウチも同じなんやけど…
…そして昇がそうなのは…
…ウチにも責任があるんやけど…
「…けど…なんでワシは逮捕されるんやろ??」
『その見た目やろ。デカいしゴツいし顔に傷あるし。
愛想笑いでもできればマシやけどな。』
「そんなんしゃぁないやろ!!だってこれは…」
『ちょっと…その先を言う気か!?』
「…言わへんよ。けど笑われへんのはホンマに…」
『…ゴメン。。あんたの苦労はウチも知っとるのにな…』
…その後は家につくまで互いに何も言わんかった。
もともと不器用で話下手な二人。。
気まずくなれば会話なんて続けられない。。
けど家にはお調子者の昇の叔父…
つまりウチのお義父ちゃんがおるわけで…
「はは昇。今日は何をやらかしたんや??
お前はそんな顔やねんからもっと気をつけんとな。」
「オッちゃん。わかっとるやろ!笑わんとってや…」
「…わかっとるよ。お前が悪いことをせんのは。。
それより早よ帰りや。姉ちゃんが心配してたぞ。。」
「…そうかぁ??オカンは心配なんかせんよ。。」
「はは。けど親なんかそんなもんやろ。。」
「…わかっとるよ…
けど…ちょとだけ拝んでいくわ。。」
「…せやな。…あいつも喜ぶやろ。。」
顔に刻まれたヤクザも真っ青な深い傷跡…
作り笑顔さえもできないこわばった強面の顔…
そんな見た目のせいで…いつも損をしている。
昇かって愚痴の一つも言いたいと思う。。
けど…昇は言ったことないんや。
同情されることを頑なに拒むかのように…
特にこの仏前でだけは…言えんみたいなんや。。
いかがでしたでしょうか??
久々の長期連載ですので緊張しています。
なお主人公が本格的に走り始めるのは5話目くらいからになる見込みですので、しばらくお待ちください。。
あと、作者は【空を飛ぶ鳥のように】というバレー小説も連載してます。
火曜日午前11時掲載ですのでこちらもヨロシクです。。