017 帰宅部…浜寺高師の場合。。
駅伝部がプールで出会ったのは…
泳げる帰宅部員。浜寺高師。
「あれ??…天保山やないか。隣のクラスの。。」
「浜寺…お前ここで何しとるんや??」
「何って、俺はスイマーやで。
ここで泳ぐんは…まぁ日課みたいなもんや。。」
「…それにしても凄い身体やな。」
「おいおい天保山。あえて言わんかったけど…
お前に体のことは言われたないで。。」
…浜寺高師。帰宅部。
普通の目立たないヤツやと思てたけど…
…このマッチョな肉体には驚いた。
これが≪脱いだら凄いんです≫ってヤツか??
まぁある意味ワシも…脱いだら凄いんやけど…
『…なぁ昇。たしかコイツうちの学校の…』
「そうや。隣のクラスの浜寺や。。」
『…こいつを誘わんかったんか??』
「誘うたかな??でも目立たんヤツやから。。」
…誘うには誘った。。
とはいえ帰宅部を相手に熱心には誘わんかった。
だけどこいつ…ホンマに凄い身体をしとる。
それに水泳を知らんワシにでもわかる。
さっきまでの泳ぎ…尋常でなく速かったんや。。
「それより天保山。お前らこそ何をしとるんや??
ここはレジャー施設やないんやけどな。」
「ああ…練習や。駅伝部のな。。」
「駅伝部??そんなんあったっけ??」
「ああできたんや。…というか作りかけや。。」
…そう。作りかけの駅伝部。
勧誘するなら今をおいて他にない。
うちの学校にこんな人材はおそらくもういない。
…けど、どう誘えばいいのやら??
…とりあえず浜寺はもうしばらくいるらしいんで、
ワシらはワシらで練習することにした。
みなみの指導でトレーニングは始まったけど…
…赤阪はフォームがバラバラでかなりキツそう。。
…能勢はスタミナがないので…溺れそう。。
…ワシは泳げない…ひたすら水中を歩くだけ。。
「あぁ…見てられんな。酷すぎやろう。。」
…というわけで急遽…
浜寺コーチによるスイミングスクールが開校した。。
すると赤阪のフォームは見る間に改善され…
能勢も省エネ泳法をマスターして…
ワシも…とりあえずやってみたら…
「ほら…あと5mや!!」
「…ガボ…ゴボ…」
…ワシは生まれて初めて浮き輪なしで泳いだ。
溺れてるのと大して変わらんけど…とにかく泳いだ。
…そしたら。。
『凄いやないか!!昇!!』
「やるなぁ天保山。。たった30分教えただけなのに…
25メートル泳ぎきるとは大したもんや。。」
「…ワシ…泳げたんか??」
…嬉しかった。
笑顔を作れないワシやけど…久々に心は笑ってた。
…やればできる。
こんな当たり前のことが…ほんまに久々に。。
…せやけど肝心なことを忘れてはならない。
次にやるべきはそう…
浜寺を駅伝部に勧誘すること。
これかて…やればできるかもしれない。。
ワシは思い切って…
そのままストレートに切り出してみた。
「…なぁ浜寺。駅伝部に入ってもらえんか??」
「入るって…お前らホンマに駅伝部なんか??
選手は三人しかおらんみたいやけど…」
「ああ。今は作りかけやから。。」
「…悪いけど断るよ。
たしか高校駅伝って七人でやるんやろ??」
「あかんか??」
「それに俺は…スイマーやからな。」
…そう。浜寺はスイマー。
ランナーとは違う生き物やから。。
やはり陸の上には…来てもらえんのやろうか。。
やればできる。。けど…
勧誘は相手があることだから…




