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都大路の風になれ - 不器用な出来たて駅伝部の全力疾走。。  作者: ふみた
勝てば都大路…大阪府予選スタート。
171/240

170 最高の笑顔

残りあと1キロ。。


何もないところから始まった

昇たち天下茶屋駅伝部の

都大路の夢が叶うまで…


あと一キロ。。



「最後の折り返しを抜けた!

 残り一キロ!!」

「先頭の二人が離れてる。。

 どっちが前だ!??」


小豆色あずきのユニフォームは…

 天下茶屋だ!!(゜C゜)

 あの西風を天下茶屋が…」

「2秒差…10メートル!?

 これってもしかすると…」



 高校駅伝大阪府予選も

 ついに大詰め。


 最終七区も残り1キロ。


 あとゴール地点までは

 ほぼ真っ直ぐな直線。。


 レース展開は視界良好。


 である一方、、



「……難波、(;´・n・`)

 本当に大丈夫なのか??」

『…はい千林さん。(;'∀';)

 ちょっと目眩がしただけ…

 一人で歩けますから。。』


「…とはいえ何だ??

 大きな声を出したくらいで

 精根尽き果てるって。。」

『…スイマセン…(;´;v;)

 ただ今は見届けるだけ、、

 昇を…ゴール地点で…』


「…言いたくないなら言うな。。

 とりあえず肩は貸す。。

 お前は…天保山を出迎える

 義務があるはずだ。。」

『……ですね。(*;ω;*)

 一緒に見届けましょう。。』



 ワシには届いてた。


 バイクから半ば落ちながら

 本当に精一杯、、


 その後しばらく呼吸が乱れ

 目眩を起こす程の、

 みなみの精一杯の叫び。。


 魂の咆哮。。


 それを受けてワシは、

 あらん限りの力を受けて

 ワシはこれまでには

 ないくらいに前へ…


 その視線が前に向いて

 いるように思う。。



 後ろから…気配はある。


 西風の扇町天馬との差は

 せいぜい2~3秒。

 

 今すぐにでも追いつかれる

 恐怖は抱えている。。


 …けど…(・n・;)

 ことここに至ってワシは

 心に決めたことがある。。



 絶対に振り返らない。



 だって振り返ったら

 0コンマ数秒をロスする。


 追ってくる相手に元気を

 与えるかもしれん。。



 ならば…覚悟を決めろ。


 恐怖で不利益を受容するな。



 だってワシは必死で…

 誰より苦しんで哀しんで…

 挫けては立ち上がって…


 都大路に行くために

 あらん限りの苦労と努力を

 重ねてきたはず。。


 自分を信じる??


 そんな傲慢を言えるほど

 気楽な半生やなかった。。


 けど…それでも


 言葉にすれば安っぽい程を

 その身に課しただけの

 自負は持ち合わせるはず。


 今ここで出し尽くせれば

 それこそが天保山昇である

 と言い切ることができる。。


 だからこそワシは、、


 いや…天下茶屋駅伝部は

 勝つべきであるはず。。


 勝ちたい気持ちで誰にも

 負けてはいないはず。。

 


 けど…勝負は時の運、、

 まして相手のあること。。


 もし天馬がワシよりも

 苦しんで努力して、、


 西風の気持ちがウチを

 上回っているのなら

 やはり勝つべきは…



 つまり…ここから先は

 勝利の女神の天秤。。


 勝つべき努力の高を…

 勝ちたい気持ちの重さ…


 これに勝る方が勝つ。


 ならば…前だけを向け。

 何も焦るな恐れるな。。


 あらん限りの推力で

 ただ全速力で前に進む。


 勝利の女神に後ろ髪はない。


 なら…追うな。

 正面から前髪を掴みとれ。。


 きっとそれだけなんや。



 そう決めた瞬間…

 目の前に光が差した。


 後から思えば雲の間から

 西日が差しただけ。

 たまたまゴール方向が

 西側だっただけ。。


 けどワシにはそれが…

 目指すべき光に思えた。


 朦朧とした意識…


 そしてそれ以上になぜか

 滲んで見える視界。。


 光を目指し進め…

 すべてを掴むために、、


 けど…すでに限界。。


 今のワシは残りの距離も

 二位との差も正確には把握

 できてないと思う。。


 不細工な走りかもしれん。

 フォームはバラバラやった

 かもしれん。。。


 けど…それでも…



「…くっ!?<`~´>

 全く落ちてこない、、

 しかも一度も振り向かない

 ってアイツどれだけ…」


 …落ちない。

 油断も隙もない。。


 だってあれから一度だって

 ワシは振り向かんから。

 

 光だけを見てるから。。



 前だけを向いて全速前進

 するランナーを相手に

 一切の仕掛けは利かない。


 日本一の中距離走者…

 扇町天馬をしてももう

 差を詰めることはできない。


 開かせないのが精一杯。


 最後にまで残しておいた

 ラストのスプリントを

 発揮しようにも…



 もう再逆転するだけの

 距離は残されてない。。



 そう…(;'∀')


 目の前の光が少し収まり、

 意識の朦朧が少しだけ

 晴れてきたと同時に、、


 …大歓声が聞こえた。。



 気付けばもう目の前に…


 ワシの目指してきた場所が

 もう目の前に。。。



 はっきりと見えてきた。


 みんなが笑って泣いて…

 喜んでくれてる、、


 大柄な浜寺が両手を広げて

 ゴールの先で待ってる。


 ここに飛び込んで来いと

 言わんばかりに、、


 つまりアイツらも…

 間に合ったんや。


 全員でその瞬間を

 見届けんとしてるんや。。



 不思議なくらいに…


 余韻はなかった。。

 迷いもなかった。


 ゴールテープは見えて

 はいたけれど…


 ガッツポーズの一つも

 なかったと思う。。


 ただワシの気持ちは

 一瞬でも一歩でも速く

 駆け込みたくて、、


 ただ浜寺の胸へ…


 仲間の歓喜の輪の中に

 飛び込んでいった。。



 歓声…称賛…安堵…


 幸福…涙…抱擁…


 今ワシの周りにはその

 全てがある。。


 大勢の仲間たちの

 笑顔…笑顔。。


 これほど弾ける喜びを

 ワシは知らんかった。


 これがワシらの…



 あの二枚目の放出が

 顔をくしゃくしゃにして

 泣き笑い、、

 遥に抱えられる始末。。


 クールな能勢が柄になく

 子供のように飛び跳ね…


 冷静な泉がただ空を仰ぎ

 声を上げて涙し…

 宿敵であるはずの放出と

 強く抱き合った。


 泉の女友達や放出のファンは

 騒いでるけどこれはその、、

 ε-(´∀`; )



 キックスは僥倖の表情で

 祈りを捧げている。。


 ってなぜ隣で赤阪妹まで

 一緒になって??(・c・?)


 その赤阪は…皆と抱擁。

 これが我等の副主将。

 喜びをチームで共有する

 責任ある人間の姿。。


 浜寺…少しは離れろ。。

 ワシは英雄なんかやない。

 ホント…

 これは皆の勝利やから。。



 けど…それでも…


 ワシは笑えない。。

 皆と一緒に笑顔に

 なれてはいない。。

 (/ω;\)


 

 顔面は引きつって…

 きっとこの上なく不気味で

 意味不明な表情。。


 鏡で見たら哀しくなる

 ほどの不細工やろう。。



 けど…みなみは、、


 そんなワシを見つめて…

 醜男から一切目を逸らす

 こともなく、、



 極限の喜びを表せず、

 顔面神経痛と極度の疲労で

 ひどく歪んだ顔を見て…


 汗に涙にヨダレに鼻水さえ

 垂れ流したこの上もなく

 汚らしいワシを見つめ…


 言うてくれたんや。




 最高の笑顔やと。。 





最高の笑顔…


勝ち取った漢は泥臭くても

誰よりも美しいもの。。


天保山昇の手に入れた

それはきっと…



…でここで一旦締めます。


ご愛読ありがとう…

ではなく近いうちにまた

再開予定です。。


暫くはもう一本の連載を

進めるつもりです。。



こっちが都大路なら向こうは

描きたかった春高の決勝。。


それが終わったことにまた

お会いしましょうです。。


きっと最後まで書き切ります。


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