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都大路の風になれ - 不器用な出来たて駅伝部の全力疾走。。  作者: ふみた
勝てば都大路…大阪府予選スタート。
167/240

166 声なき咆哮

高校駅伝大阪府予選も

第六区の3キロ地点を通過。


残りあと7キロ弱…


あと20分ほどで全ては

決着します。。


『3キロ地点で…(;・n・;)

 先頭の西風と18秒差。。』

「どうなの難波??( ゜Д゜)

 それってマズイの??」


『…距離はおよそ100m。。

 まだまだ射程圏ですが…』

「…大丈夫なの??」


『けど中津先生、(`;C:)

 この一キロだけで6秒も

 先頭と開きました、、

 このまま行けば多分…』

「…マズイの??( ゜c゜)

 けど浜寺が無理でも次に

 天保山がいるから…」


『…けど西風は…(;C;)

 次に天馬がいるんです。』

「あの…扇町天馬!?(・c・;)

 じゃぁここで追いついて

 おかないとこれは。。」


『…けど…( ;`C;´)

 まだ終わってません!!

 まだ2キロ残ってるから!

 浜寺はきっと追いつく…』

「お…落ちつけ難波、、

 まだレースは終わって

 ないんだぞ!!」



 中津先生…(-_-;)


 一応は顧問やのに状況を

 分かってなさ過ぎです。


 けどそんな中津先生でさえ

 知ってる有名選手が…


 高校日本ランク一位の

 中距離走者こそが西風のな

 アンカーを務める…


 扇町天馬おおぎまちてんま。(・_・;)



 彼に先頭で繋がれたら

 逆転はほぼ不可能。。


 せやからとにかく後続は

 速いとこ逆転したい。。


 悪くても六区で追いついて

 アンカーに繋ぎたい。


 なのに…18秒差。。


 徐々にその差を開かれて

 いるのが現実やから、、



「…決まりかな。(・v・)

 色々あったが今年も何とか

 西風(うち)が逃げ切れそうだ。」

「…天馬…(・n・;)

 その挑発には乗らんぞ、、

 勝負はまだこれからやと

 ワシは思とるから…」


「…同感やよ昇。(-v-;)

 けど俺もちょっと複雑な

 心境と言うかやな。。」

「…どういうこと??」


「ここまで来たんや…(^-^)

 こんな舞台でお前と勝負

 できたらええなぁとは

 俺は思ってたけど、、」

「……同感や。(; ・`n・´)

 ワシもそれ望んどる!!」


「けど…100m差や。。

 それは勝負とは言わん。

 俺はただ粛々と逃げ切る

 ことになるやろう。。」

「…くっ、(´゜n゜`)」


「……悪いな…(;´・v・)

 今さら個人戦は望まん。。

 ただ1秒でもタスキを繋ぐ

 ことを望むだけや。。」

「と…当然や!(; ・`д・´)

 だたこれは都大路を賭けた

 真剣勝負やど!!

 たとえ何秒差あっても…

 ワシは追うからな!!」



「……安心した。(^ー^)」

「…えっ?(・.・;)」


「…お前ならそう言うと

 思ったよ。(;´・v・)

 どんな展開になっても

 追ってきてくれると、、」

「…ワシは…(;´・n・)

 最後まで諦めへんから。。

 それは約束するから…」


「なら…勝負でえぇ。。

 一度でええから昇とは…

 ガチで戦いたかった。。」

「……やな。(・∀・)

 たとえどんな展開でも

 勝っても負けても…

 恨みっこなしでいこ。。」



 その…気持ちは同じ。

 

 恨みっこなしは勝負の掟。

 それがスポーツマン。

 (`・ω・´)



 とはいえ…展開は気になる。


 浜寺たち六区はどうなって

 いるかと言いますと、、



「…はぁ…ぜぇ…(*O*;」

「…くっ!(; -`O-´;)

 俺ももう限界だ、、」


「…くっ…でも…(*c*;」

「…15秒差、(; ・`O・´)

 僅かだが詰まってる、、」



 実際に声は出ていない。


 けど通じ合う。

 競り合う二人だけにできる

 心の会話かもしれん。。


 4キロ地点を通過。

 (; ・`n・´)

 先頭の西風と二位集団、

 逢坂・天下茶屋は15秒差。



 先頭の西風が振り返る。

 (;´・ω・)

 表情に余裕は…ない。

 ロングスパートに賭けた

 彼に余力はないやろう。


 けど…計算はある。

 残り一キロの纏め方の

 青写真はあるはず、、


 もう大崩はないやろう。



 そして二位の逢坂、

 (;´・ω・;)

 その顎は上がりかけ。。


 玉砕覚悟の追い上げで

 既にギリギリ状態…

 気力と根性で何ができる

 競技レベルやない。。


 それでも一秒でも…

 ここで一歩を粘るのが

 駅伝の真骨頂。


 けどもうそれ以上は…

 


 その逢坂のすぐ後ろは

 三位・天下茶屋の浜寺。


 連れてってもらった

 展開は大きかった。。

 (`・ω・´)


 本人とてもう限界は

 自覚している。


 けど一方で…


 この中では一番マシな

 ことも自覚してる。。


 せやから、、



「いっ…けぇ!(; `c´)」


 並走する逢坂にチラと

 目を向けた刹那…


 浜寺が勝負に出た!!


 もちろん余裕はない。

 残り一キロ弱…

 気合だけで乗り切れる

 などあり得ない。。



 けど浜寺は…英雄。

 (`・∀・´)


 ヒーローになるべく

 ここまで身を潜め、

 耐え忍んできた大尽。


 ど素人が仲間を求め、

 仲間を想い勝利に拘り…


 12キロの大減量に耐え、

 時に力不足に嘆き、

 時に絶望しながらも…


 これほど走りを見せる

 までに努力し研鑽し

 その身を興した大英傑。



 もし彼がヒーローなら…

 きっと追えるはず。

 (`・ω・´)



 地味に泥臭く、汗と涙を

 撒く散らしてもきっと

 最後の一滴まで絞り出し…


 チームの勝利に貢献する

 全力を貫けるはず。。


 せやから… 



「う…うわぁ!!(; `д´)」


 実際に咆えたわけやない。

 (・_・;)

 けどこの心の咆哮は

 競り合う強敵の耳には

 届いていたらしい。


 全力を振り絞る苦しみ…

 限界をも超えて走る恐怖…


 その全てを背負う覚悟、、



 西風は…振り向いた。

 その気迫を感じたんや。


 必死の逃げに転じた。

 余力はない…けど絶対に

 追い付かせはしない。


 だって七区は扇町。。

 六区を先頭で繋ぎさえ

 すれば勝てるはず。


 その責任だけは絶対に

 果たす覚悟はある。



 逢坂は…涙した。。


 最後の力を振り絞って

 追い縋ろうとした

 その思いさえ虚しく…


 …脱落。(;n;)


 その僅かの遅れは

 体力と気力を根こそぎ

 持ち去ってしまう。


 ここまで頑張ってきた

 男の最後の粘りさえ

 奪い去ったらしい。。



 駅伝の決着は…残酷。


 勝負事における英雄は

 凡そ残忍な存在。。


 勝利の女神は敗者には

 それ以上に…無慈悲。



 哀しみは振り払った。


 あとは歓喜だけ。

 見据える標的の西風の

 ペースは上がらない。


 残りはおよそ500m。


 その差は…10秒を切り

 さらにぐんぐん迫る。。


 そしてついに…



「6番!用意して。。」

「はい…(; ・`n・´)

 西風の扇町です。」


 ついに…アンカーが

 コールされた。。


 やはり先頭は西風。

 逃げ切りは濃厚。


 でもその直後、、



「続いて22番!!

 すぐ用意して。。」

「は…はい。。(゜Д゜)

 天下茶屋の天保山…」


 …来た。(; ゜n゜)


 ついに決着の時…

 審判の時まであと少し。


 緊張の時、、

 けどライバルは。。



「…楽しもうぜ…昇。」

「…えっ…(・_・;)」


「決して望んだ結果では

 ないけどな…

 最高だと思ってる…

 この大舞台で俺とお前が

 競い合えるんだから。」

「あ…ああ。( ゜c ゜)」


「…ガチで行くぞ。。」

「ああ…セメントや。。」


「…俺は負けねぇ。。

 都大路の忘れモンは…

 必ず取り戻すから。。」

「…ワシも。。(; ・`v・´)

 絶対に負けへんから、、」



 ワシは…少し笑えた

 ように思えた。。


 相手は扇町天馬。


 昨年度の都大路で

 五区区間賞の実力者。


 そして昨年度の…


 最後で逆転されて涙した

 あの西風メンバーの

 たった一人の生き残り。。

 【043話参照】



 この漢がワシの…

 唯一といえる旧友。。


 この場で戦うに最も

 相応しい強敵。。


 その舞台は…



「ラストだぁ!(; ・`д・´)」


 先に右手を上げたのは

 西風の扇町天馬。


 先を越された。


 大逃げを成功できず

 崩れても尚その責任を

 果たすこと忘れず…


 西風が先頭で繋いだ。


 けど続いて…

 


「…やはり…(;-∀-)

 俺には届かなかった…」

「…(・c・;)」


「…癪には障るが…

 精一杯に追い上げた。。

 悔いはねぇ、、」

「…(・_・;)」


「…託すぞ…( ;`v;´)

 天保山にならば俺の…

 すべてを託せる。。」



 声なき声、、


 浜寺の心の声は…

 ワシには聞こえたと思う。


 そして投げ出すように

 タスキを渡すと一言、


 <…なれ!>とだけ叫んで

 その場に倒れ込んだ。。


 詳細は聞き取れなかった。


 けど心の咆哮はワシには

 聞こえたように思えた。。



 <お前がヒーローになれ!>


 浜寺はそう言うてくれた。。



 戦うべき相手…

 戦うべきシチエ―ション。


 舞台は…整った。。



 天下茶屋が第二位で

 タスキリレー。。


 先頭・西風との差は



 僅か…2秒。。



恐怖に堪えもがき続け、

愚直に全力を尽くた漢は

逆点こそできなくても…


英雄だと私は思います。

(; ・`v・´)


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