013 スプリンター…能勢豊の場合
駅伝部ができて二日目。。
三人目になりそうなのは…スプリンターです。
「おう、赤阪に天保山じゃないか…お前らも走りに来たのか??」
「…というか能勢…。お前は何しに??」
「練習だよ。たまには走らないと体がなまって仕方ねぇ。。」
…陸上部スプリンター。能勢豊。
今年度は400mで全国大会にまで進んだ男。。
…有り余る才能がありながらもめんどくさがり屋の彼は、
陸上部解散とともにあっさりと引退を決めた。。
<陸上部がないなら、一人で気ままに走ればいい。>
…そういう考え方の男なんや。。
「それよりお前らも練習か??…なら一緒にやろうぜ。」
「それは助かる。スピード練習に付き合ってくれ。。」
「…いいけど…お前ら俺について来れるか??」
…それはそうやけど…
少しずつ距離を伸ばしながら走ってみると…
100メートル走では勝負にならない。
400メートル走では…さらに勝負にならない。
トラックをたった一周するだけでこれほどの差がつく…
…ワシと赤阪は能勢のスピードに畏怖さえ感じた。。
「…なぁ能勢。。もう少し距離を伸ばしてみぃへんか??」
「おいおい。俺はスプリンターだぜ。。
…でもいいか。俺も走り足りてなかったから。。」
…それで800メートルで競争することにしたんやけど…
距離がたった二倍になっただけやのに…
…急に力関係が逆転したんや。。
なにせ800メートルからは中距離走。
短距離とは使う筋肉が異なるからやねんけど…
800メートルになると…能勢はワシと勝負にならない。
1500メートルになると…赤阪についてもいけない。
3000メートルになると…完走さえできない??
「…ふう。くたびれたぁ。。
やっぱ俺は長い距離には向いてないなぁ…」
「能勢…今の全力やよな??」
「…あぁ。。手を抜くような野暮はしねぇよ。。
…けど自分でもイヤになるくらいスタミナがねぇから。。
…俺は本当…スプリント以外はダメなんだよ。。」
…これは…いくら何でも極端すぎる。。
これほどスタミナのない男を誘っても戦力にならない。
だって駅伝は三キロ…3000メートルが最短区間。。
能勢では…完走さえ危うい。。
けど今のワシらに選り好みをしてる余裕は…
ワシと赤阪は顔を見合わせて…
…とりあえず話はしてみたモノの…
「ふぅん。駅伝部ね。。」
「せや。能勢お前…やってみぃへんか??」
「…おいおい。見ての通りさ。
俺に長距離はまるで向いてねぇよ。」
「…せやけど…お前は走りたいんやろ??」
「素人かよ??短距離と長距離は別の競技だぜ。。」
…その通りや。。
そんなことは陸上経験者なら誰でも知ってる。
ワシと赤阪があきらめかけていた時…
『そんなことあらへんでぇ!!』
…みなみ…いきなり何を言うんや??
ていうかお前かって陸上経験者やろう??
短距離と長距離の違いぐらい知らんはずないのに…
ホンマに…どうするつもりなんや??
短距離と長距離は全くの別競技。。
それを違うと言われても…
本当に大丈夫???




